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永遠の思い出


「何心配してるか知らねえけど、似合ってるし、かわいいぜ。」


彼が笑いながら、まっすぐに褒めてくる。






う、うわー。うわー。うわああああ!


こんな風に他人から褒めてもらうのは、どうにもむずがゆい。


というか恥ずかしい。皆こんなにストレートに褒めるの?この子だけ?え、前世ではどうだったっけ?私が耐性なさすぎ?わからん!


うがーっ!と私が一人で悶えていると、


(なんか花冠つけてると、女神さまみたいだよなぁ)


彼の心の声が追い打ちをかけてくる。

「お、おう。ありがとう」

「え?」

「あ、なんでもない」

普段心の声はスル―するのに、思わず返事してしまった。


お世辞かな?と思っていたけれど、心の声を聞く限り、本心でそう思ってくれているらしい。


だから、

「いや、やっぱなんでもある。褒めてくれてありがとう。すごくうれしい」


少し混乱してしまったけど、お礼が言いたくなって、そう口に出す。


「おう、ならよかった。かわいい顔してんだから自信持てよ」

「う、うん。そうする。」



・・・なんだか、なぁ。


どんだけ素直に褒めるんだよ、とか。恥ずかしくないの、とか。


そう言ってやりたい。



かわいいとか馬鹿なんじゃないの?本当に恥ずかしい。


これも。


・・・まぁ、でも、恥ずかしいとか思うけど、それ以上に








「ほんとに、嬉しい」


少し、泣きそうになる。





この世界に生まれてから、褒めてもらったことなんてなかったから。


だから、


「ありがとう」


褒めてくれて。


「ありが、とう、っ」


私に気付いてくれて。


私を認めてくれて。




少しでも動いたら泣いてしまいそうだった。

だから、口には出さなかったけれど、落ち着くまで心の中で「ありがとう」と言い続けた。



彼も、私を見て何か察することがあっただろう。


しばらくの間声はかけてこなかった。






















「じゃあ、出口までいこっか」

すこしして落ち着くと、服についた泥とかを払いながら言う。

「あ、まって、ちょっといいか?」

「ん?なに?」

ようやく森から出られるのにどうしたんだろう。


「俺にもさ、あれ作ってくんねぇ?」

「花冠?」

「あぁ」

「作るのはいいよ。うん。作るのはいいんだけどね?・・・」

彼を頭から足まで眺める。


うーん。どう贔屓目に見ても似合わない。


「なんか問題があるのか?」

(作るの面倒なんだろうか)


心配そうな彼の声が聞こえる。

いや、そうじゃないんだけど、なんて言おうかなぁ。


顔はいい顔してる、というかかっこいいと思うんだけど、花冠とはちょっと合わないというか。

笑顔はかわいいけど、かわいいの方向が違うというか。


うーん、こういう男の子にも似合う物、うーん。


「あ!えっとねー。花冠じゃなくて花束はどう?」

「なんでだ?」

「花冠だとちょっと時間かかっちゃうし、もうそろそろ帰らないとでしょ?」

こう言えばあきらめてくれるのでは?


「まぁな」

「だから花束とかどうかなって」

「うーん。わかった。じゃあ、それで頼むわ」

「はーい。」

良かったー、傷つけずに済んだー。

似合わないから。だなんて理由で断るのはかわいそうだし、納得してくれて良かった。


「よし、じゃあ、作るかぁ。」

せっかくなので、彼の花束も何か花言葉を考えながらにしよう。

そう考えていたけど、


(花の編まれている感じがきれいだったから、ちょっとほしかったんだけどなぁ)


そんな声が聞こえてしまった。


・・・あー、あれ、そんなに気に入ったのか。

・・・・・・・。




・・・。

・・・・わかったよ。作る。作れば喜ぶんでしょ。



彼の方に一度戻って、質問をする。

「ねぇ。将来何になりたいかって、もう決まってる?」

「ん?うん。いちおうな」

「どういうの?」

「王都で、騎士になることだな」

「え、すごいね!かっこいいよ!」

「うん。俺も思う」


騎士かー。かっこいいなぁ。

この子が将来騎士になったら、どんな人でも分け隔てなく、あの笑顔で救っていそう。

そんで、女の子にもモテモテそう。


「でも、どうして騎士に?」

「理由はかっこよくねぇんだよなぁ」

「そうなの?」

「まぁな」

あんまり言いたくないようだ。


「ふーむ。そっかー騎士ね。わかった。まってて」

「?うん」



じゃあ、と、花束の設計図をかんがえる。

花束は彼の騎士の夢を応援する花言葉にしようかな。

欲しいのは。えーとホタルブクロ、ナスタチウム、ポインセチア、それとカスミソウこのあたり。


彼からは見えないように、少し離れた位置に移動して、目的の花を探しながら、徐々に形にしていく。

そして、花の配置を気にしつつ、花を加える。

最後に下のあたりで一つにまとめて、


「よし。こんなものかな」

完成した花束と、もう一つを手に持って、彼に渡しに戻る。





「はい。完成!」

「おおー!きれいだなぁ」

そういって、ホタルブクロと、ナスタチウムを一番内側に、ポインセチアを中間に入れて、カスミソウで全体を囲んだ花束を渡した。


「さっきの話は何だったんだ?」

「この花束に入れる花を考えてた」

「あの話で、なんでこの4つなんだ?」

「えーっとね。花には花言葉っていうのがあってね。ホタルブクロは忠実と正義を、ナスタチウムは勝利と困難に打ち勝つ力を、ポインセチアは祝福と幸運を祈る、ということを表してて。これって騎士になるにはどれも必要でしょ?」


そして、一番外側の花を指さす。


「それでカスミソウは、清らかな心を表してるの。なんか、あなたににぴったりでしょ?」


そういって自分でも気づかないうちに、無意識に笑った。



「それでね、・・・よいしょ、じゃーん。」

「え?」

ひそかに作って、隠していた花のブレスレットも取り出す。


「これもどうぞ。なんか編まれた花、欲しがってたから。」

そういいながら、ポカーンとしている彼の腕に花を通した。


「花冠は似合わないけど、ブレスレットなら似合うかな、と思って」


「え」

「ん?」


「・・・」

「・・・」


え?・・・あ。


あああああああ!花冠似合わないって言ってしまった!


「あー!ええと、あのね似合わないっていうか、えーと、えと、ブレスレットの方が似合うっていうか」


うわー、何のために花束を作ったんだよ!

似合わないって言わないようにするためだったのに!


「えーと。怒ってる?」

何の反応もないのが心配で、まだ固まっている彼の顔の前で、おーいと手を振る。


「・・・っふ、っくふふふ、あははは!」


すると彼は、徐々に肩を震わせて、最終的に大笑いし始めた。


(っはははなんか、かわいげあるなぁこの子)


「え、か、かわ」

「いや、俺、別に、ふふっ、最初からつけようだなんてっ、っふ、考えてなかったぞ、あはは!」


(あんな女の子っぽいもの、俺に似合うわけないしなぁ、っふふ、あはは)


「え!そ、そうなの?」

なんかさらっと気になることを言われた気がしたけれど、今はどうでもいい。


そんなことより重大な事実が発覚してしまった。


えー!じゃあ、花冠作ってあげても問題なかったってこと?

どうしよう、完全にありがた迷惑というやつだった!

うわー!だったら作ってあげればよかった!


「ご、ごめんね。勝手に勘違いして断っちゃった。もう一個作るよ」

「いやまてまて、いいよ」

そういいながら、また花を採りに行こうとした私を彼が引き止める。


「花冠をつけようとは思ってなかったけど、こうやってつけれるようにしてくれたのはありがてぇしさ」


そういって彼は、先ほど私につけられたブレスレットを揺らしながら、





「ありがと。すげぇうれしい」




あのまぶしい笑顔じゃなくて、はにかんだような、それはそれはきれいな顔で笑った。





「・・・う、ん」


あまりにもきれいに笑うもんだから、



「・・・いいよ、どういたしまして」





私は不覚にも、見惚れてしまった。















「じゃあ、この辺でいい?」

「おう、道案内さんきゅー」

「うん。どういたしまして。」

森の出口まで来るとわかる道に出たらしく、私たちは一旦立ち止まった。

「あ、最後にさ、一つ聞いていいかな」

「ん?うん。なに?」

すると彼が質問をしてくる。


「このブレスレットの花言葉は何なんだ?」

急いで一種類だけで作ったブレスレットを見せながら彼が聞く。


「あ、あーそれね。」

まさか聞かれるとは。

「えー、えーとね。まぁ身に着けるってことは、お守りみたいなものだなぁ、と思って・・・」


一瞬、止まる。


「・・・お守りと言えば幸運でしょ?だから、「ずっと幸せが続きますように」って願いを込めて「いつまでも続く喜び」って意味を持つ、ヘリクリサムにしてみた」


でもまた、何事もなかったかのように話を続けた。


「へー、そんな意味なのか。」

そういうと彼は、もらった時も散々見たくせに、また花を観察し始めた。そして、


「そっか」

しばらくすると、なにやら満足したらしい。


「今日はいろいろありがとな。これ両方とも大事にするよ」

「うん。そうしてくれたら、とてもうれしい」

「ばいばい。」

「うん。ばいばい」

「じゃあな」

「うん、じゃあね」

「えっと、じゃあな。」

「っふふ、何回挨拶するつもりなの?」


そう言って、お互い笑いあう。


「そうだな。じゃ、こんどこそ」

「うん」


「「ばいばい」」


そういうと彼は、私には決して行けない森の向こう側へと、歩いて行った。







「じゃあなー」


彼が途中一度だけ振り返って、遠くで手を振った。


「じゃあねー」


私もそれに返事をして、





彼の姿が見えなくなるまで、手を振り続けた。


















「ふーん。ふんふーん、ふんふーふふんふーん」


帰り道に、彼に「優しい歌だな」と言われた子守唄を口ずさみながら、歩く。

彼が花言葉を知らないようで良かった。


「ふん、ふーんふん、ふーんふん、ふーんふんふーん」


ヘリクリサムの花言葉は、いつまでも続く喜び。

まぁ、それもあるけれど、私が送りたかった言葉はもう一つの方だった。




「ふーん、ふんふーん」


まぁ、相手に伝わってなくたっていい。


あの時に言えなかった時点で、きっと伝わらないものだった。




けれどもし伝わるなら、


「ふーん、ふんふーん、ふふーん、ふふん。ふーん」


私が今日あなたと過ごせてどれだけ嬉しかったか。


どれだけ幸せだったか。



「ふんふーん、ふんふーん、ふんふーん」


それで伝わればいいなぁと思って。



「ふーん、ふんふーん」


この先ずっと、何年も今日のことを振り返るだろうけど、もし今日という日にタイトルをつけるならこんな感じかな、と、思った花言葉にした。




「ふんふーん、ふんふーん、ふふーん、ふんふん」





願わくば、彼の幸せが続きますように。そう祈りながら、屋敷に戻った。





ヘリクリサムの花言葉が気になる方は、タイトルをどうぞ。

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