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第4話 生徒手帳の空白は

「どうも、1年生担任『ヨチマユコ』だよん。

 まあ君たちとはもう顔見知りなわけだけど、一応僕サンはこれから君たちのメンドーを見ていくセンセーだからな。

 こら!誰だチビとか呟こうとしたやつ!殴るぞ!…

 まあ、これから入学式だから、席順で並んで。あれ出席番号順になってるから。

 体育館に入場するんだからな、静かにやれよ!」


 やっぱり小学生にしか見えない身長にかなりの童顔。

 そして甲高い声。


 茶色の髪を2つに結んでいるその姿は見た目の幼さをさらに増長していた。


 わたしの誕生日は9月21日なのに、列の順番は前から数えて3番目。

 まあ女子が6人しかいないからだけど…


 女子の列はサキが1番先頭で、2番目がミユ。3番目がわたしで、4番目がマイで、5番目がセイカ。6番目がユミ。


 これが本当にクラス全員か?と思うほどの人数のクラス。

 もう何度も何度も思ってるけど、わたし異世界に来たっていう感じだよ。本当。


 体育館までの道のりはすぐだった。

 体育館に入ると、おそらく先輩になるであろう人たちが椅子に座ってこちらを眺めている。


 先輩も人数が少ないのに、無駄に緊張して仕方ない。

 早く終わってくれ…






 緊張した入学式も終わり、これから着任式だと思ったその瞬間、校長先生から驚きの言葉が出た。


「着任式はやりませーん。だってみんな誰がどの教科とか最初の授業でわかる方が面白くない?キャハハ!」


 あれ…あの人校長先生だよね?

 教頭先生も頷いてるし…

 教頭先生はお堅い感じだけど、校長先生はギャルっぽい…


 あの人も「カワリモノ」なんだよね…

 能力が全く予想できないんだけど。


 校長先生だけじゃなくて、他のみんなも全然予想できない。


 サキは物にスピードをかけることができて、アキヒロのシャーペンを踏み潰していたリョウは、たぶん物を頑丈にするとか?だけど…


 セイカとか、おとしやかで清楚系な感じをガンガン醸し出しているのに能力持ちなのが全然想像できない。


「ということで、入学式は終わりです!教室帰って生徒手帳受け取ってねー☆」



 教室への帰り道、男子列の3番目、つまりわたしの隣の席のリョウがわたしに話しかけた。


「お前さぁー、能力なんなの?なんか物にかけられる系?それとも人にかけられる系?」


「それがまだわからないんだよ…」


「わかんねぇの?!お前やば!なんかの間違いでここ来たんじゃないの?」


 それ、さっきも言われた。

 わたしの不安を余計抉るようなこと言うな!と心の中で叫んで、適当に苦笑いを返す。


 別にリョウはなんにも悪くないんだけどさ…


 教室に戻ると、生徒手帳が机の上に並べられていた。

 そこには自分の能力と、名前と、出席番号、生年月日…とか色々書いてある。


 全部埋まっているはず。わたし以外は。


 わたしの能力の欄は空白だった。


「そこに能力載ってるだろ?…げ!空白じゃねぇか!」


 勝手にわたしの生徒手帳を覗き込んだリョウが隣で大声で叫んだせいで、クラス全員がわたしの机に集まってしまった。


「ほんとだ、アヤぴー空白。やっぱりアヤぴーは普通の人なの?」


「ほら、これ俺の。ちゃんと書いてあるだろ?」


「俺もー」


「オレもオレもー」


「ほら、ウチの」


 アキヒロの能力は

「対象の身体能力を強化する」


 サツキの能力は

「対象を完璧に覚える」


 リョウの能力は

「対象を壊れないようにする」


 サキの能力は

「対象にスピードをかける」


 みんなそれぞれ能力がちゃんと書かれてる…


 みんな、それぞれ能力を持っていて、その能力を生かすためにこの学校に来た。


 でも、わたしは能力がわからなくて、でも、この学校に招待されて…


 わたしは普通でもなくて、カワリモノでもない半端者なの?


 頭の中で不安と焦りがぐるぐる回ってわたしを苛む。


 わたしはどこへ行けばいいの?

 やっぱり間違いでした、って先生から告げられてまた普通の世界に戻るのかな?


「なんだ君ら、そんなにアヤの周りに(たか)って」


 ヨチ先生が平然とした顔で教室に入ると、アキヒロが先生に尋ねた。


「ガキんちょセンセー、アヤの生徒手帳の能力の欄が空欄なんですが、理由でもあるんですかー?」


 ヨチ先生は顔をニヤつかせて、わたしの目を見て笑った。


「大丈夫だヨ、君にはちゃんと能力があるから。君がそれに気付くまで生徒手帳は空欄だけど。てか、ガキんちょセンセーってなんだよ、もっと僕サンを敬えや!」


 気付く…?能力に…?

 いくらなんでもめちゃくちゃだ。だって普通もう気付いてるはずだもん。


 この学校では能力を生かすための勉強をするっていうのに、これじゃあ勉強できないじゃん。


「今、君、これじゃあ勉強できませんって言おうとしたでしょ。

 大丈夫。この学校は能力を強化するっていう目的もあるけど、もちろん普通の勉強もするし、むしろそっちがメインだし。

 だって君ら中学生だよ?学業優先に決まっとるでしょ。

 まあまあ、席つけ。今から自己紹介するゾー。」


 適当に流すな!

 こっちは割と、というよりめちゃくちゃ困ってるのに…

 やばい、やっぱり不安しかない…

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