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迷い込む怪談  作者: HAL姉
2/3

ヨダソウ

他者様の企画、怪談Night2020に参加させて頂いた時のお話です。

宜しければ朗読でどうぞ〜!

利用規約はありませんので、お好きにお使い下さい。

【注】漢字にルビは振っていません。


(朗読時間7分)

これは、友達から聞いた話なんだけどね。

まず、この話を聞く前にある事だけして欲しいんだけど。

あ、難しい事じゃないよ。

両手を出してくれる?

それで、親指を中に入れて握りしめる。

そうそう、ジャンケンのグーみたいにね。

それから目を閉じて、これから話す事を頭の中で思い描いてね。

あ、話が終わるまでそのままだよ。

じゃあ話すね。


ー手を打ち鳴らすー


あなたはくらぁいトンネルの入り口にいます。

辺りはふかぁい森の中。

時刻は夕暮れ、しんと静まり返っていて、聞こえるのは夏の虫の声と、そろそろ活動し始めた夜行性の鳥の鳴き声。

ゆっくりとトンネルの中に入っていくよ。

頼れるのは首から下げた懐中電灯の光だけ。

あぁ、両手は親指を中にしてグーになってるから持てないんだ。

足元しか見えないから慎重にね。

少しずつ進んでいくと、虫の声も鳥の鳴き声も次第に小さくなっていく。

でも足を止めちゃ駄目、振り向くのも禁止。

暫く進むと、トンネルが右と左に分かれてる。

どちらへ進む?

ふぅん、右を選ぶんだね。

ううん、何でもないよ。

えっ、左にするの?

ホントにそれで大丈夫?

あはは、そんなに怯えなくていいよ、まだここは序盤だから。

じゃあ左に曲がるよ。

そのままゆっくり進むと…あれ、今度は道が3つに分かれているね。

どうしよっか。

真ん中?

いいね、じゃあ真ん中の道を進んで…

ふふ、ドキドキしてる?

懐中電灯が歩みと合わさってゆらゆら揺れてる。

照らされているのはほんの1メートル先まで。

このトンネルはもう何年も使われていない、閉鎖された場所だから何があるか分からないよ。

まぁでも大丈夫、そんなに傷んでないと思うし。

もしかしたら崩れてる所があるかもしれないけどね。

真ん中の道を進んでいくと…あれ、どんどんトンネルの幅が狭くなってきた。

ちょっと待って、何だか上もせばまってきてるかも。

でも後戻りは出来ないから、腰をかがめて進もう。

頭をぶつけない様に気を付けて。

そうそう、上手だよ。

あれっ、行き止まりかな?

違うね、木製の扉がある。

じゃあこの扉を開けてーー…あっ、待って待って、手はそのまま!

あー危なかった。

言ったでしょ?

親指を中に、グーのままでいなくちゃ。

そう、そのまま扉を開けるんだよ。

大丈夫、押せば開くはずだから。

ゆっくり開いてみよう。

うん、いいね。

扉を開くと…あ、トンネルはここでおしまい。

でもここはどこだろう?

トンネルの入り口にいた時は夕暮れだったのに、いつの間にか夜になってるみたい、よく見えないね。

でも森の中じゃない。

舗装はされてないけど道が続いてるみたいだし…少しずつ進んでみよう。

ほら、だんだん目が慣れてきた。

月明かりもいい感じで、うっすら見えてきたね。

建物があるみたい。

何だろう…集落跡、かなぁ。

あっ、今後ろで物音がしなかった!?

あーダメダメ!

振り返っちゃ駄目だってば、目も開けちゃ駄目!

まだ話が終わってないからね。

うーん、多分、さっき開けた扉が閉まった音だったみたい。

引き返せないんだし、前に進むしかないんだから扉が閉まっても問題ないよね。

じゃあ進もう。

左右に家らしき建物が並んでるね。

でもどの家も人は住んでないみたい。

かろうじて瓦屋根が見えるけど、かなり崩れてるし…ガラスとかは使っていないみたいだから、大分古い事は確かだね。

少し風が吹いてきたかな、あちこちでカタカタ音がするね。

そういえば、虫の声が聞こえなくなったかも。

さぁ、どんどん進もう。

あ、木が倒れてる。

大きい木だねぇ、これは迂回するのも無理だから、またいでいこう。

かなり大きな木だからまたげるかなぁ…ゆっくり…慎重に…

うん、上手に行けた。

あぁ、木の向こうにちゃんと足がついた、良かったねぇ。

ううん、こっちの話だよ。

さて、木の向こうには何があるかな…

うわぁ、これは大きな家だねぇ。

ほら、昔話とかに出てくる庄屋ってこんなイメージじゃない?

え、分かりにくい?

そう…まぁ、大きな家が目の前にあるんだよ、ちゃんと想像して。

入り口は引き戸になってるみたい。

ガタガタしてるね、立て付けが悪いんだ。

何年も放置されてるだろうしね、しょうがない、頑張って!

ようし、開いた!

あっ、懐中電灯がチカチカしてる!

そんな、このタイミングで電池切れ!?

あぁでも、屋根が所々落ちてるから月明かりが入ってきてる。

これなら何とかなりそう。

ここは土間、かなぁ?

ねぇ、あの板間、真ん中に穴が空いてるみたい。

囲炉裏があったのかな?

ちょっと覗いてみよう。

どれ…うーん、囲炉裏って、こんなに深かったっけ…?

底が見えないなぁ…

あ、懐中電灯、まだ大丈夫みたいだね。

一緒に覗き込んで、ここを照らしてくれる?

そうそう、そのままーー…


どんっ!


ー間ー


はい、おかえり。

じゃあ、今のお話をそっくりそのまま、次の人に繋げてね。

覚えてないって?

そこはまぁ、頑張って!

目は開けていいよ、でも両手はそのままで。

もし次の人に繋げる前に手を開いたら、呪いが掛かっちゃうんだ。

ごめんね、こうしないと、自分も呪われる所だったから…

じゃあ何で両手を開いていられたかって?

あぁ、気付いちゃったのかぁ…

実は、両手を開くだけなら特別な呪文を唱えればいいって教えられたからね。

教えろって?

でも、これを教えるとまた呪いが掛かっちゃうかもしれないらしくて…

あぁ、分かったよ…じゃあ、特別だよ。

絶対、次の人には教えちゃ駄目だからね?

その呪文は…

「ヨダソウ」

はい、お話はおしまい!

有難うございました!

感想お待ちしています。


ヨダソウ、逆から読んだら…?

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