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第七話 レベル0と召喚士

第七話 レベル0と召喚士



「えっと、まずは助けてくれてありがとうございます。一人になっちゃったから危ないところ、本当に助かりました」


「一人になった?仲間とはぐれたのか?」


「えへへ、たぶんそんな感じかな。気が付いたら森で一人になっちゃったから」


 おいおい、危ないなこの嬢ちゃん。俺がこなけりゃ本当に死んでたかもしれないのに。


 ローブについた枯れ葉や土を落としてまた俺の顔を見て彼女ははにかんだ。


「じゃ、危ないところ助けてもらってありがとうございました。お礼は、ごめんなさい手持ちがなくてできませんが精一杯の感謝を込めてお祈りさせてもらえますか?そしたら、私も行きますね」


「お、おい、別にお礼なんていいが…」


 彼女が目を閉じると静かに周りの空気が軽くなった。何か言葉を口ずさんでいるようだが…。これが祈り、か?


 本当にわずかな時間だったが、俺の体を纏う空気が変わった気がした。軽く、すがすがしい感じに。


「ありがとうございました。それじゃあ…」


 彼女は歩き出す。よたよたと。そこで初めて気が付いた。


 ローブの下の方膝のあたりが赤黒く、明らかに土埃の汚れではないものが付着していた。けがをしている。きっとそうだ。この子はけがをしていて逃げられなかったんだ。


「おい、あんた、ここからどこまで行くんだよ」


「海の祭殿というところです。冒険者さんは知らないですよね、この先の海のもうちょっと先にあるんです」


「あんたは冒険者じゃないのか?」


「ええ、違います」


 彼女は歩みを止めない、決して俺を見ようとしない。引きずる足を隠しながら、決して良くわない足元を、たぶん、今できる精一杯の速さで立ち去ろうとしている。


「ちょっと、待ちなよ、それ。足を怪我しているだろう手当していかなきゃ危険だ」


「あはは、お気遣いありがとうございます。でもこれ以上冒険者さんに迷惑はかけられませんからほんとにだいじょうぶですか、ら!!!!」


 彼女は直前まで気づいていない様子だったが、またしてもアーミービーが頭上から一匹迫っていた。彼女が気が付いた時にはもう回避の取れる状態ではなかった。フードを下ろしていたのでその顔色はよくわかる。疲れ切った顔に写る絶望感、またかという倦怠感、ここまでかという諦めの表情。


 だが、俺がそれを阻止する。


 スレッヂブレードを肩に担ぎ跳躍からの一閃。もうわかり切った魔石の位置に的確な一撃。それで魔物は消滅した。


 彼女はへたり込んでしまった。体全体で息をする。


 誰がどう見ても、この少女が、ここから一人で生きて帰るのは不可能に見える。


「ま、また助けていただいて、申し訳ありません。お、お祈りを…「そんなことはいい!!」」


「お前、こっちにこい」


「は、はい、え?いやえっと…」


「いいから来い!」


「はい!」


「座れ。そこの切り株でいい。そしたら傷口を見せろ」


「ぼ、冒険者様、何をなさるおつもりですか?申し訳ありませんが、お金になるような荷物も持ち合わせてはなく…」


「いいから!!」


 何度も渋ったが、彼女はようやくローブをめくり傷だらけの足を俺に見せた。どこかで魔物に噛まれたものだろう、か。肉がえぐり取られていた。


 こんな状態で森を歩いていたのか。こんな少女が。


 俺はポーチから小瓶を一つ取り出すそして一息に傷口へと振りかけた。


 少女の様子は激変する。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああぁぁぁぁぁ!」


 彼女のひどい叫び声が耳元で弾ける。そして暴れようとする彼女の体を押さえつけて残りのポーションも傷口にかけた。


 治癒ポーションによる傷口の治療は痛みがある。怪我を負った時と同様の痛みが欠損部位から全身に駆け上る、つまり彼女はこれだけの痛みを負う怪我を受けてなお歩き続けていたということだ。


「ふうぅ!ふうううう!ぐううん!」


「痛いな、痛い。大丈夫だ。よく我慢したな。もう治るぞもう少しだ」


 もう暴れることはなかったので、彼女を優しく抱きしめ落ち着くまで声をかけ続けた。


 泣いていた。そりゃ泣くほどつらいだろうよ。









「君さ、名前は?」


「私は、召喚士のイロハ、です。冒険者様は?」


「俺は、スピーノ。ただのスピーノだ」


「スピーノ様。わ、私には、差し上げるものはありません。先ほどのポーションもお返しすることはできません」


「わかっている。お礼なんで求めてない」


「ではなぜ!!なぜ御助けになるのですか!」


 少女が苦しんでいたそれで、俺には十分だった。そして、そうだな、多分。


「あの子は俺をヒーローのように慕っていた。だから俺はその子に恥じないヒーローでありたい。目の前で苦しんでいる女の子がいるんなら。差し伸べられる手を持っているなら…。俺が手を差し出すのに理由はいらないんだ」


 少女は泣いた顔のまま俺の顔を見つめ、ようやくあきれたように。


「なんかちょっと、かっこいいですね」


 笑った。


召喚士イロハちゃん登場


ちゃん付けで呼ぶような子ではない設定なんですが。


というかぶっちゃけますと設定なんてありません、行き当たりばったりで書いてますので。手のひらクルクルー並みにブレブレの設定です。もはや最初に書きたいと思ったところに着地できるのか…。


ポーションについて


基本は飲み物です。かけるものではありませんが、より怪我の部位がえぐい場合そこにかけることによって効果が上がるということはあります。

つまり体力を回復させたければ飲む、怪我を直したければかける。ちなみに魔力ポーションは飲むだけです。決してかけることで魔法の効果が上がるとかないですから。

一瞬、魔法陣とか考えたけどめんどすぎてすぐ破棄しました。

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