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第五話 レベル0の魔物狩り

第五話 レベル0の魔物狩り



 村の外には海につながる川と山、森が広がっている。舗装された道など3割ほど。つまりは7割は手の入っていない自然となり動植物や魔物が暮らす生態系が形作られている。ちなみに俺がスイムのおっさんに拾われたのは川から海の中間にある湖であり、普段はあそこに立ち入るものなどそれこそ漁師かそこの生態系に立ち入る必要のある物だけだ。

 俺がいたというだけですなわち、怪しい。


 何者だと問い詰めたくもなる。なのにあのおっさんはそうはせず俺の話を聞き介抱してくれた。本当は何者だろうな。あのスイムという漁師は。槍さばきといい、魔物の扱いがえらく長けていた。


 まぁ、それはいつの日かわかることだろう。


 今日はギルドカードを発行してもらって初めての戦闘に赴く。どうなるのか正直わからない。手元にいくらかの物資と知恵は持たされたが、単純な戦闘だけならまだしも狩などやったことはないのだから。


 そう言っているうちに舗装路を外れ比較的戦いやすいと思われる、草原地帯にやってきた。


 右手は常に腰のスレッヂブレードの柄におき、左手を太ももに括りつけられたポーチに這わせた。


 ギルドのお姉さんたち…マーネ、ミーネ、メーネ、が三姉妹で豊満なお胸をお持ちの勘違いさんだ。シルバがカードの発行をしてくれた一番年長で心配性の女性である。


 彼女たちが、俺にこのアイテム類を押し付け、先行投資だといって譲ってくれた。中身はポーションと携帯食料(この辺の知識、ポーションの効果や名前はヘルパーの町で見知ったものと同じだった)いらないとは言っては見たが、あわれ、ジョブにもつけない金もない身元の保証ものない自称外国人には優しくしたいのだろう。俺でもそうする。


 俺はまた一つ携帯食料の封を切って口に含む。


 実際はすごく助かった。腹も減っててやばかったし。


 魔法は最悪使わない方法で何とかするかと思っていたので魔力回復のポーションは助かった。そして使ったことはないが治癒ポーション必要だろう。下手したくはないからな。


 いつか、お姉さんたちに恩返しをしよう、そうしよう。


 そうしているうちにようやく魔物の群れを発見する。マーモラットだ。いわゆる巨大ネズミ。


 俺はクラッグで戦ったこともあるし、師匠からの訓練で魔物の知識も十分にあるつもりだったが、やはり実際目にするとそれが正しいかとか、情報通りなのかなど心配事は尽きない。だが、戦わなければ俺が死ぬ。主に餓死で。


 異世界に来て死因が餓死とか、笑い話にもならんわ!


 マーモラットは俺の存在に気付いたようだ。三匹が俺を囲んで警戒音を発し、襲い掛かる準備を始めている。だが残念だ、俺はすでに詠唱を終えている。


「【クイック】【パワーウェーブ】」


 自身の強化魔法、俊敏性と筋力の上昇をする。


 スレッヂブレードを引き抜いたところでマーモラットはこちらへとびかかってきた。




 マーモラットというのは所謂害獣としての側面が強い。強靭な前歯でなんでもかじり取ってしまう。また脚力も強力で一転逃げに徹すれば小回りを活かして追いつくのは困難な魔物とされている。


 だから、こうして面と向かってしまっては一撃で沈める必要があった。しかも徒党を組んでいる魔物というのは厄介でいつ逃げに転ずるか攻勢に出るかはわからない。


 よって、おれは自分からの突撃すような真似はせず、マーモラットの攻撃を誘った。カウンターで剣での一閃をうまく与えれば一撃で屠れる自信があった。


 囲まれた状態で俺が攻撃に出れないと見たのか一匹のマーモラットが俺の脚元を狙い低く草をかき分けながら走りこんでくる。


 それを見て、ようやく俺は動き出した。【クイック】によって初動が早くなった俺の動きは魔物の先行を後攻から奪い取る形で、つまり後の先を取り、突撃した魔物の背後を素早く取って、背中に一撃を与える。一撃で仕留める。背中から腹側までを貫くとそれで絶命したことは感触でわかった。


 しかしここで手を抜くとことはしない、マーモラットが危険性を感知して逃げに徹する前に素早く残り二匹の処理にかかる。スレッヂブレードを大きくふるった遠心力でマーモラットの死体を剣から引きはがす。またその死体が残りの魔物の所に飛ぶようにした。


 一匹は飛んできた死体をよけられず体を転がされる。もう一匹のほうは位置取りが悪かったので、距離があり、その分避けるという思考を選ばせた。そう選ばせた。


 よけた先にはすでに俺が剣を振りかぶった状態で待ち構えている。そこへ知らずに飛び込んだマーモラットは斬首され、一撃死を食らった。これで残りは死体の体当たりを食ってもがく三匹目だけ、逃げられる前にと、俺は一息にとびかかり、滑り込みながら一閃、もう一閃太刀を浴びせ無事三匹目を処理し、草原には三匹のマーモラットの死体が転がった。


 


「意外と、困ることはないな」


 それから草原で幾匹かの魔物を相手にしながら己の戦いぶりを反省する。


 倒した魔物の大体体の中心部に魔石が埋まっていたので剣で穿り出すと確かに魔物の体は消滅した。これなら病気の発生もないってことだな。やっぱりギルドのお姉さんの言う通りだね。


「よっと、これで…10かな?」


 草原では想定した通り戦いやすい魔物ばかりだった。大剣であるスレッヂブレードを振り回せる広さもあるし、試しに使った魔法【ライトニング】も直線魔法なので遮るものがないのがありがたい。


 一番弱いのでマーモラット、それから危険性は津少ないがメープルシープもいた。ちょっと強いのでアイアングリズリーがいたし、物理攻撃が効きにくいグリーンプリンもいた。腕試しのつもりで危なくなったら逃げるつもりだったが、余裕をもって戦うことができたおかげで、きっちり退治できた。


 俺的にアイアングリズリーはお金になるんじゃないかと思う。あいつの毛皮は鉄のように固い上に柔らかく受け流しもするので、厄介なことまったく。それでも手足から切り刻むつもりで細かい傷を与え続けていたら出血からか動きが鈍くなったところでおそらく急所の額に剣を突き刺しとどめをさした。


 そのころから俺は魔物退治を楽しみ始めていた。ポーションも一本使い、魔法を使って明かりを確保して、


 まずはここで、魔物を狩り続けた。




 数時間後さすがに草原で魔物を見なくなってきたので場所を変えることにした。森は木があるので俺の火魔法で燃え広がってもこわかったので海へ行こうと考えた。


 しかし、海への道を知らなかったのでまずは川へ向かう、そこから川を下って海へ行くことを選んだ。


 ポーチに手を伸ばしてまだ食料があることを確認して移動を開始した。本当にお姉さんたちに感謝しなければならない。食料があって本当によかった。まぁ、携帯食料って味はまずいんだけどな。


 そういえば草原にいたときには何人かの冒険者たちとすれ違った。まだ俺がマーモラット相手に色々と試していたことである。どれも複数人でチームを組んでいるように見えた。ちょっとや気持ち焼いて魔物に八つ当たりしてしまったことは許してほしい。みんなで戦うのいいなって思ってしまったんだから。そう思えばスイムのおっさんどうしているのかな、おっさんと一緒に蜂の魔物確かアーミービーだったと思うけど。誰かと一緒だと楽しかったな。


 思えばヘルパーの町でも結局一人で戦うばかりだったな。そもそもクラッグってシステムが一対一だからそういう発想が生まれなかったんだよな。もしヘルパーに帰られたらチーム戦とか提案してみたいな。きっと楽しいと思う。


 魔物を切り伏せながら走行しているうちに川へたどり着いて、ようやく一息つけそうだった。


 手持ちの魔石を数えてみると大小さまざまあるが、数は50は軽く超えているんじゃなかろうか。そろそろポーチやポケットに入りきらなくなってきている。やばいな、どうしようか。


「いや、大丈夫か。こうして携帯食料が減っていった場所に魔石を入れていければまだまだ拾えるか」


 俺はまず稼がなければならない。あんな低レベルな魔物を狩ったところで二束三文だろう、ならばまずは数を稼いで宿に泊まれるくらい頑張ろうか。


「いよっし、そうしたらまずは海に向かってこのまま下っていきますか」


 こうして日が暮れても俺は村を出たときと変わらずひたすら魔物を狩り続けていくこととなった。もちろん、俺はこの世界の常識は知らなかったわけだから、わからなかった。そして周りに誰もいなかったことも災いし。


 俺は自分の異常性を理解せずに我一人楽しく異世界ライフを楽しんでしまっていた。















 そのころのセントリアルス村冒険者ギルドではひと騒ぎが起こっていた。


「シルバさん!大変ですスピーノさんが戻ってません!」


「それ!確かなのね!?」


「ええ、ミーネもメーネも村を回ったけど戻った形跡はなかったの、それどころか晩に戻ってきたパーティの話で草原で戦う異国風の剣士の姿を見たった聞いたわ」


「その話、晩なのよね?」


「そうなの、もう夜なの!もしかしてジョブにつけなかったから魔物にあっても戦えずにいるんじゃないかと思うと!」


「ああ、もっとスピーノさんに注意しておけばよかった…。夜はこの村でも桁違いに強い魔物が出るって言ってなかったわ。まさか帰ってこないなんて。


 明日!早朝に捜索隊を編成しましょう。スイムさんにも連絡して彼ならレベルも高いし何より実績もある。今はただ、祈りましょう。スピーノさんが無事なことを」



ジョブシステム

ジョブについた状態でそのジョブに関する行動をとると経験が蓄積されギルドカードを通じてレベルアップが通知される。レベルが上がるとジョブごとのスキルを獲得していく。

またジョブレベルに応じてギルドで判断されギルドランクが設定される。通常冒険者はギルドを通してクエストを受注してその目標をもとに魔物狩りへと赴く。ランクはS、A、B、C、D、E、Fとなり特例を除いてギルドカード作成時はランクFで登録される。


ちなみにスピーノさんはレベル0なので関係はありません。ランクもありません。クエストは受けられません。なのでただ魔物退治して稼ぐという無茶は普通は誰も考えません。


まじスピーノさん不憫とか思わないで。縛られない自由人と思ってあげて。

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