閑話2
私には好きな人がいた。名前は神崎 海斗。
彼には才能があった。誰にも真似できない才能があった。
それは『努力』すること。
そんなの誰でもしてるだろと言う人もいるかもしれない。――けど彼は違った。
努力は努力でも、彼のやっている努力は常軌を逸していた。片っ端からできないことを見つけては、それを無理矢理にでも覚える。そしてそれを親に見せて褒めてもらう。
――彼は、親に褒めてもらう、ただそれだけのために血反吐を吐いてまで努力を続けていた......
私はそれを見て思った。
私にはそんなことが出来るのだろうか? ほかの人にはそれが出来るのだろうか?
私は少しずつ彼のことを考えている時間が増え始めた。
ある日ふと思った。彼のことをもっと知りたい。彼の力になってあげたい。そう思った......
いつもは遠くから見ているだけだった。だけど明日は話しかけてみようと思う。どんな話をしようかな?私はその夜なかなか寝付けなかった。
――その次の日から彼は学校に来なくなった。
私は、彼が引っ越したことを知った。場所はわからない。
その日から、私の心の中にポッカリと穴が空いたようだった......
――私は中学生になり少し遠くの学校を選んだ。理由は地元の学校に行っても彼はいないと思ったからだ。
――中学生3年生になり私は生徒会長になった。
――ある日の登校中、学校の噂でまだ一度も学校に来ていない生徒がいるらしいという話を誰かが話していた。
私の中に小さな希望が芽生えた。彼かもしれない。
私は話をしていた人に、その人の名前を聞いた。
「ねぇ! 今の話の人って誰!」
「うわっ! って一ノ瀬さんか。今の話の人? ああ、確か神崎っていう人らしいよ」
私は走った。一秒でも早く会いたいと思った。学校に行き、先生に話を聞いた。
「先生! この学校にいる神崎君の住所を教えてください!」
「い、一ノ瀬さん、取り敢えず落ち着いて。なぜ神崎君の住所が知りたいんですか?」
ど、どうしよう。会いたいって素直に言ったほうがいいのかな?
いや辞めておこう。確実に教えてもらえるようなことを考えよう。
「私は生徒会長として、この学校に一度も来ていない神崎君に、楽しい学校生活を棒に振って欲しくないんです。だから神崎君の家に行って、学校の楽しさを知ってもらいたいと思いました」
「......わかりました。ですが、まず私の話を聞いてください」
「わかりました」
――その後私は彼に会い、これからは彼のちからになると、心に決めた。
――だけど彼は死んだ。目の前で彼は死んでしまった。
私はその時何が起こったのかわからなかった。ただ分かるのは彼は死んだという事実だけだった。
私は今、部屋にひきこもってる。彼もこんな気持ちだったのかな。......なんて考えてしまう。
「やっほー。って暗! どうしたのそんな顔して?」
確か、神様って言ってた子だっけ? まぁなんでもいいや。
「出てってください」
「まぁそう言わずに。実は僕ね、ある人から伝言をもらってるんだ」
「伝言?」
「うん。それじゃあ伝えるよ。――茜元気にしてるか? 神崎 海斗だ」
海斗君! なんで! 確かに私の目の前で死んだのに。
「実は死んだ後神様にあってな、体は変わったけど俺は元気だぞ。今はまだ事情があって、そっちには行けないけどもし茜が悲しんでたらと思って、神様にお願いして伝えてもらったんだ。――全てが解決したら絶対会いに来るから。それまでに、もっともっと強くなって俺を驚かせてくれよな。それじゃあな、茜」
ポロポロと溢れ出てくる涙が止まらなかった。
大好きな人が生きていてくれて、すごく嬉しかった。けどその反面、自分の無力さを茜は痛感した。
「わ、私、頑張るから。もっと頑張って、私が海斗君を守ってあげるれるくらい、強くなるから!」
「うん! 僕からも応援するよ。努力を続けていけば、海斗君を守れるぐらい強くなれるはずだよ」
「うん!」
「それじゃあ僕はもう行くね」
神様はそう言って姿を消した。プレゼントを残して。
―ユニークスキル『守る者』を取得しました―
私は、次に海斗君と会うまでにもっともっと強くなる。
それがどんなに辛いことでも。
もう何も失うことが無いように。守れる力を手に入れるために、私は部屋を出て訓練場に向かった。
海斗君のお願いは茜に自分のことを伝えることでした。
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