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~アーバンジプシー~  作者: 石田 幸
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密会

深夜の密会を繰り返す高校時代の由貴(ゆき)だったが…。

1つ年上の彼と付き合い出したのはそんな時だった。

高2の私と高3の彼。

図書室に頻繁に出入りしている内に、幼い恋が生まれた。

けれど、それは果たして純粋な恋と呼べただろうか?

確かに私達は幼いが上に激しくお互いを求め合い、お互いを欲し、片時も離れてなど居られないぐらいに燃え上がったけれど、その実、互いが互いの傷を舐めあっていたに過ぎない。


少なくとも私は彼に夢中になることで、陰惨な家庭から抜け出そうと目論(もくろ)んだのだ。

今までは、一生懸命、優等生になることで、暗い家庭から抜け出せると思っていた。

でも、私は、見つけてしまった。

安楽な道を。

彼なら、私をあの忌まわしい家庭から救ってくれる、きっと連れ出してくれる、と。

全く馬鹿げた、おめでたい人間だ、私は。


そうして、私は高2の夏、夜毎、日毎、陰惨な館の秘密の回廊をくぐり抜けて、いそいそと、高校の近くに住む彼の家へと通いつめた。

彼の家も又、父親が浮気をしているとかで、少し心を病んだ気の優しい母親と二人暮らしなものだから、私達は二人して堂々と密会を繰り返した。


毎夜、口うるさい田舎町の住人に目撃されることを避けるため、帽子を目深にかぶり、伊達眼鏡をかけ、なるべくボーイッシュなアイテムを身にまとい、街灯もまばらな夜の町を足早に最寄り駅へ向かった。

いつも終電に近い近鉄に乗り、車内から荒涼とした田園風景を眺めていた。

この列車の行き着く先が、私にとってはパラダイスだと信じて。

所詮、高校生だから車に乗れる筈もなく、駅に着くと、いつも彼が自転車で物陰にひっそりと待って居てくれた。そうして、朝が来れば、又、始発で家に戻った。


いくら若いとは言え、そんな乱れた生活を続ければ、やがて、身体にガタがくる。

元来、健康とは言い難い私だから、寝不足が続いて、次第に、目の下にはどす黒い(くま)が浮き、学校に行くのも辛い状態となった。


一番に私の異変に気付いたのはやはり祖母だった。

祖母は私のことを心底慈しんでくれていたから、最初は、やんわりと、「いつも、何処に行ってるのか?」と尋ねた。

私は、「友人と早朝ジョギングをしている」とあからさまな嘘をついたが、祖母は信頼している私の言葉を(いぶか)りながらも鵜呑みにし、しばらくは黙って様子をみていた。

祖母は早寝だったから、私が深夜から外出しているとは夢にも思わず、てっきり早朝にひっそりと外に出てジョギングしているのだと信じたようだった。


しかし、寝不足で食が落ち、四六時中、幽霊の如く青白い顔でふらふらしているものだから、さすがの祖母もおかしいと思ったのか、夜中に私の部屋を覗いて、真相は呆気なく発覚した。


祖母も悩んだのだろう。早急に父に告げることはせず、一先(ひとま)ず私に注意を喚起した。

が、一向に事態は収まらず、私の深夜の出奔は激しさを増すばかり。


通路の途中にある物置にバリケードなどして、実力行使にまで及んだ祖母も、ついに業を煮やして、父に密告するに至ったのだった。

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