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~アーバンジプシー~  作者: 石田 幸
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告白ごっこ②

真夜中のファミレスでお互いの身の上を打ち明ける孤独を抱える女性、由貴(ゆき)と少年、(たまき)。二人の運命の糸が交錯する。

(たまき)は、ずっとこの京都府下のK町に住み、兄が二人居ること。地元の高校をすれすれのラインで合格し、校内では教師も苦笑いして見逃す「やんちゃ」であること。バンドを組んでいること。両親は(たまき)が幼い頃に離婚し、母親と二人暮らし。二人の兄は、何故か警察官で東京で暮らしていて、三兄弟の中で、自分だけが出来が悪いのだ、と淡々と話した。


(たまき)が自分のことを話してくれるのは、その後も私にとって安らぎの時間となっていく。


(たまき)と私は、天と地ほどかけ離れていながら、お互い淋しさを抱え込んでいて、この日、二人が出逢えたのは、きっと二人の淋しさのチャンネルがぴったりと重なり合ったとしか言い様がなかった。


私も(たまき)につられるようにして、身の上をある程度吐露した。


最近、七年間付き合った彼氏と別れたこと。K町のすぐ近くのJ市に住んでいること。両親の不和により、この四月に父親が家を出ていったこと。

家に居ると息が詰まって吐きそうになること。

極めて夜は、一人で家に居ると発狂しそうになるため、毎夜一人で夜の街を徘徊暴走していること。


(たまき)はゆっくりマルボロの煙を吸い込みながら私の話に耳を傾けてくれた。


やがて夜が白みはじめた。


私は、夜毎(よごと)徘徊を繰り返してはいたが、家族の者、とりわけ祖母には心配をかけたくないのと、当時、早朝はファーストフード店でバイトしていたので、朝には家に帰らねばならない。


私のソワソワした態度が伝わったのか、(たまき)は、つとペーパーナプキンを取り、何か走り書きして私に渡すと

「俺、帰らなきゃ。バイク置いたままだし。あのゲーセンまで送ってくれる?」

()げた。

「あ、うん。」

私はいそいそと立ち上がり、会計を済ませて外に出た。


白みはじめた空にまだ星が冷たく光っていた。


ゲーセンで(たまき)を降ろすと

「じゃ、また今夜。」

と言って、にっこり笑った(たまき)はバイクにまたがり、まだほの暗い闇に赤いテイルランプを残して消えていった。


私の手元に(たまき)がくれたペーパーナプキンだけが確たる証拠のように残っていた。


TAMAKI MATUOKA

-PHS-

050-501-2003

毎日ひまなんでいつでもOK!


(たまき)の人をはぐらかしたような笑みと真摯な眼差しが私の頭の中でスパークした。



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