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~アーバンジプシー~  作者: 石田 幸
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出逢ってしまった二人

あの日。1996年12月25日。クリスマスの夜。

ひとりぼっちで居ることに耐えられなかった私は、半ば自棄(やけ)気味で、闇夜の中を暴走していた。毎晩、深夜の徘徊を繰り返してきたけれど、その日は何故か来たことのない道に車を走らせ、行ったことのないゲームセンターに入り込んだ。


広い駐車場の割には何かさびれたようなたたずまいで、看板には大きなピエロが描かれ「ピーカブー」という電飾が施されていて、そのおどけたピエロの表情が今の自分を見ているみたいで、思わず苦笑してしまった。

車を止めて中に入った。ほの暗い店内をゆっくりと一周する。

クリスマスだけにカップルが多かった。だからと言って自分がみじめな気はさらさらなく、むしろ独りで居ることが誇らしくさえあった。


「行けっ!」

鋭い叫び声に続いて、一斉に矯声が挙がった。

5、6人の若者がカーレースのゲーム機に群れていた。

そこだけがひそやかな店内の中で唯一熱を帯びて輝いていた。


"大学生?20(はたち)くらいかな?"

と思いながらふと眼をやった時、(たまき)と初めて目が合った。


その一瞬、私達はお互いのアンテナに同じ波長をキャッチした。


他の少年に囲まれた形で、(たまき)はゲーム機に向かっていた。


さらさらのロン毛をサングラスで無造作にかきあげ、耳にはじゃらじゃらと幾つもの輪のシルバーピアス。グレーのピーコートを着た(たまき)は周りの少年の中でも一際(ひときわ)大人びて見えた。


一瞬、()ねたような眼差(まなざ)しでチラリと私を見たその眼は冷徹とも言えるほど冷めた眼であったのに、奥底に秘めたその強い輝きに私はどうしようもなく惹かれて行くのを感じた。

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