ただの卑屈少年の日記。
俺は……人というものを信じていた。
人というものが好きだった。
だからこそ、俺は人のために尽くそうとした。人を守るために武術を習った。少年時代の大災害の影響で傷ついた人を助ける医者になりたいと願った。日常の中でさえも、困った人の助けになるべきだと、そう思い、行動してきた。
俺は……正義の味方になりたかったのだ。ほかの人のヒーローになりたかったのだ。
この思いは間違ってないと、自分が信じる人というものは間違ってはいないと思っていた。
そして高校時代、彼女ができた。この胸に抱き続けてきた思いを、彼女1人に捧ごうと決意した。常に優しい自分でいると、彼女の笑顔を守るのだと、そう決意していた。
しかし数日後、俺は裏切られた。自らの手ではなく、彼女の手でもなく、他人の手によって。だが裏切ったのは間違いなく、ほかの誰でもない彼女自身だ。彼女は泣いていたのだろう、ずっと想っていてくれたのだろう、だがそれでも……俺には裏切りとしか感じられなかった。……それからというもの、自分の気持ちも理解すらできずにただ後悔に苛まれる日々を送っていた。
そしてある時、彼女はもう俺のことを想っていないことを知った。たった数日、それだけで人の思いは変わってしまうのかと、たった数日だけであの想いは消えてしまうのかと、ただひたすらに問い続けた。自分にいくら問おうとも応えなど出るはずもなかった。
そして……俺は人を見限った。
俺はただの理想を描いていただけなのかもしれない。その理想を、人に押し付けていただけなのかもしれない。エゴだったのだろか……。否、たとえそうだとしても自分には人というものは到底理解しえないだろう。
人は何か辛い経験をした上で成長するという。何かを失うことで強くなるという。だが、それは違う。理想を捨て、現実というものに逃げるだけだ。そんな奴に、理想を抱く資格はない。
その中で理想を抱き続けるというのはごくごく一部の者たちだけだ。現実に抗おうとするには、周囲の人間だったり赤の他人であったり、ほかの人の理想を打ち砕いていくということだ。だか、これでは俺の理想は成し得ない。矛盾、というものだ。
だから……俺は理想を捨てた。
過去の自分に問おう。
お前は、それでもその理想を抱き続けるのかと。
何も生まないとわかってその理想にすがっていくのならば、その理想と、後悔と、矛盾を抱え続けながら死んでいけ。
灰色の青春と言いますが、人によって色の見え方は違うと思うんですよね。