黒い影
赤い夕日に、焼けた空。
誰もいない校庭に、ぽつりと私一人だけ。
くるりと回る。スカート、ひらり。
手には焼きたて、手作りクッキー。
初めて作った、おいしいクッキー。
も一度、くるり。影も、くるり。
ふと足元に、のびる影。私よりも、ながーい影。
ずうーっとたどると、日野センパイ。手を振ってから、寄って来る。
「センパイ、食べて」
「ああ、有難う」
沈む日バックに、仲良くのびる黒い影。
顔がほてるの、自分で分かる。
「うん、おいしい!」
真っ赤になるの、とっても感じる。
その時突風、スカートふわり。
きゃあ、としゃがんで気付いたの。地面の私も、まっかっか。
おしまい
ふらっと、瀬川です。
他サイトに深夜真世名義で発表した、同タイトル企画の旧作品です。
縛りはタイトルの「黒い影」なので何とか赤い影を描こうとか当時は思っていたはずです。あとは多くの人が最初に抱くであろう不吉なイメージを逆手にとろう、とかも。
そうそう。このころはキャンディのような、軽く口に含んでころりと楽しいような作品を意識していたはず。このあたりは今も短い作品を書くときに意識していることですが、当時は特に。




