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たとえば、こんな神さま

作者: 佐藤楓

どうしてあなたは泣いているの?


やあやあお嬢さん、こんなところに何の御用かな


どうしてあなたは泣いているの?


やあやあお嬢さん、おかしいね、君はぼくが泣いているように見えるのかい


どうしてあなたは泣いているの?


やれやれお嬢さん、君はとってもおかしな人だ


どうしてあなたは泣いているの?


やれやれお嬢さん、しかたがないから教えてあげよう



それは、ぼくの世界が壊れてしまいそうだからさ



その少年は、手の中にある女の子のぬいぐるみにそう言った。

歌うように喋っていたのに、最後の言葉は機械になってしまったかのように平坦である。

そして、少年はまさに電源の切れた機械になってしまったかのように、動かなくなる。

こんどはあろう事か、女の子のぬいぐるみが立ち上がった。


やあやあボクちゃん、それじゃあ世界を救ってあげなくちゃ!


無邪気な声でそう言った女の子のぬいぐるみは、そう言ってからパタリと倒れた。

倒れた人形を、動かなくなっていた少年が息を吹き返したように腕を伸ばし、そっと抱き上げる。


やあやあお嬢さん、それは素敵なアイデアだ


少年はぬいぐるみを大切そうに抱えながら、瞬間に広がった真っ白な空間を歩き出した。

男の子が何か唱えるたびに、ぽんぽんとポップコーンが弾けるようにいろいろな世界が現れる。

少年はその中のひとつの前で立ち止まると、ぬいぐるみに話しかけた。


やあやあお嬢さん、この人にしてみようじゃないか


少年が、パシッと世界を指で弾くと、少年の前にあった世界から誰かが飛び出し、少年の前に倒れ込んだ。

その誰かが顔をあげた瞬間、その人が出てきた世界がバリバリと音を立てて崩れる。

少年はそれを悲しそうに見てから、誰かを振り返った。


やあやあおめでとう!君は選ばれた人間なんだよ!


さっきまでの悲しそうな顔は何処へやら。

少年は楽しそうに笑いながらそう言うと、誰かの背中の上にぬいぐるみを落とす。

するとどうだろう。女の子のぬいぐるみは、誰かの背中の中へ吸い込まれてしまったのだ。

誰かは訳がわからないまま、やって来た睡魔に身を任せてまぶたを下ろす。

少年は満足そうに笑顔を浮かべると、


やあやあ行ってらっしゃい。心から健闘を祈っているよ!


と言い、誰かの額をパシッと指で弾いた。

次の瞬間には、誰かはもういなくなっている。

少年は満足そうに笑顔を浮かべると、今までいた白い空間を帰っていき、初めに居た場所へ戻ってきた。

床に埋め込まれた水鏡の前に座り込み、サッと水面を撫でる。

すると、そこに現れたのは先ほどの誰かだった。

誰かはひとりでどこかの平原に呆然と立ちつくし、あたりを見回している。

少年は、それを可笑しそうに眺めながら呟いた。


やあやあ、ぼくの世界が退屈で壊れてしまう前に、



君の滑稽な姿で救っておくれ。

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