表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/46

パイパティローマ-7

光り輝く太陽が 大きな青空が好きだ

海の上を渡る潮風が好き午後の気だるい時間が好き

七色に光る海が好きだ満点の星空が

満月の月明かりが好きだ

そして島の人の優しく温かい笑顔がすきだった

そこは捜し求める楽園ではなかった

どこにも無くどこにでも在った

愛する人がいて 愛してくれる人がいる

2人がいつも笑顔ならそこがパイパティローマなんだ


どの位、時間が過ぎたのだろう。

浮かんでいるでも沈んでいるでもなく。

死んでいるのか生きているのかさえ判らない。

目を開くとそこは真っ暗だった。

黒い違うそれは深い青い色。

とても小さな白い物が浮遊しているマリンスノーなのか。

よく見ると一つ一つが光り輝いているあれは星か

水色のとても綺麗な光が輝きだし少しずつその光は大きくなっていく。

あれは地球? ここは宇宙なのか。

とても綺麗だ。まるでアクアマリン色の瞳のようだ。

地球はあんなに優しさに満ち溢れた光に抱かれて守られていたんだ。

その光はやがて大きく膨らみ隆羅を優しくそしてとても温かく包み込んだ。

あの時の様に。


電子音がリズム良く鳴っているのが聞える。

今まで何度となく聞いた覚えがある音だった。

ここは病院それともラボなのか?

そっと目を開けると白い天井が見える。何処かの病院の病室なのだろうか。

ゆっくりと体を起こすと軽い目眩がするが直ぐに治るだろう。

壁に向かい作業をしているナース姿の女性が立っていた。

とても綺麗なストレートの髪の毛で黒と言うか濃紺と言った方が近いだろうか。

声を掛けようとしたがあの言葉が躊躇わせた。

『記憶から俺を消して下さい』

そして彼女が振り返り俺に気付いた。

「あら、お目覚めですか? 名無しの患者さん」

彼女の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。

「海、ただいま」

「隆羅のばか!」

軽い衝撃を受け優しくそして力強く抱しめた。

「海、迎えに来てくれたね」

「うん」

「ゴメンな、いつも心配ばかりかけて」

「うん」

「もう何処にも決して行かないから」

「うん」

「海、大好きだ。愛している」

「私も、隆羅が大好き。愛してる」

海の顔を引き寄せ…… しばらくすると病室に誰かが入ってきた。


「寝起きでそこまで出来たら、ラブラブカップルと言うよりバカップルね」

「バカップルは止めて下さい。探究魔人の潮さん」

「失礼ね。覚えてらっしゃい」

潮さんが来たのに海は抱きついたまま離れようとしなかった。

海はナース姿で潮さんは白衣を着ている。ここはラボなのだろうか?

すると潮さんが書類の様な物を差し出した。

「何ですか、これ?」

「もちろん治療費と入院代の請求書よ」

「その前に、ここはいったいここは何処なんですか?」

「九重山病院よ、石垣島の」

ラボではなかったらしい。でも、ナース姿に白衣ってコスプレか?

手元の書類に目を落とすとあり得ない数字が羅列されていて見なかったことにした。

「その九重山病院の請求書をなんで潮さんが持っているんですか?」

「あら、買ったのよ。いけないかしら」

「買ったって、また簡単に。相変わらず無茶苦茶ですね。こんなに請求されても払えないですよ」

「しょうがないわね。じゃ、ターちゃんに支払わなきゃいけないお金があるから。それから相殺しておくわね」

潮さんが訳の判らないことを言っている。これが覚えておけと言う事なのだろうか。

「何なんですか? 支払わなきゃいけないお金って。俺、何もしていませんよ」

「これよ。これ」

潮さんが白衣にプリントされている肩のマークを指差した。

そのマークは円の中に斜め上を向いて泳いでいる人魚のシルエットがある見覚えのあるロゴで。

円に沿うようにMinakami Konzernとネームの入ったロゴだった。

「そのロゴは俺が海に作ったやつじゃないですか」

「そうよ、うちのロゴにしたの。ロゴのデザイン料と使用料をターちゃんに支払うわ」

「また、そんな勝手な事して」

「あら、海にプレゼントしたのでしょ。所有権は海にあるのではないかしら」

所有権って…… 著作権などと言っても潮さんには勝ち目がないのは火を見るより明らかで。

それに水神コンツェルンのロゴって、ベッドに倒れ込みたくなる。

「勝手ついでにもう一つ言っておく事があるの。ターちゃんにはうちのグループの会社で働いてもらうわよ」

「会社って何の会社なんですか?」

「もちろんデザイン会社よロゴやその他もろもろの」

「ロゴの会社ってそんな」

「だって、水神コンツェルンのロゴをデザインした如月隆羅と言えば、今や超有名人になっちゃったんだもの」

あのクソ親父ですら知っていた水神コンツェルンの総帥がそんな事を言えば……

眩暈がして意識が飛びそうになる。

「だってじゃないでしょ。そんな事を発表したんですか?」

「ええ、あらとあらゆるメディアでね」

あり得ない事が起きている。

「潮さん。俺、壊れちゃいそうなんですけれど」

「駄目よ、壊れちゃ。こんなに発注書が来ているんだから。頑張ってね」

潮さんが満面の笑顔で発注伝票らしき束状の物を手に持ち振りかざした。

「いや、無理です」

「じゃ、ターちゃんは海と一緒に居たくないのね」

「何で、そうなるんですか」

「だって、その会社の社長は海でターちゃんがデザイナー。雑用がキルシュとショコラよ。嫌なの?」

海が抱きついたまま嬉しそうに見つめていた。

「問答無用みたいですね。キルシュは知っていますけどショコラって」

「キルシュ、ショコラを連れて来なささい」


潮さんに呼ばれキルシュが黒い猫をくわえて病室に入ってきた。

「病院に動物は不味くないですか」

「あら、私の病院なんだから誰にも文句は言わせないわ」

恐ろし過ぎて誰も潮さんに逆らおうなんて思わないだろう。世界広しと言え楯突くのは俺ぐらいだろう。

キルシュを見て思わず吹き出してしまった。

「キルシュ、赤い首輪ってクリスマスプレゼントの? 可愛いなお前」

「願掛けだから。お前が目を覚ますまで着けておけと。潮に」

「バカだな、お前。俺が目を覚ましたら外してもらえると思っているのか?」

「な、潮、お前」

キルシュが潮さんの顔を睨みつけた。

「あら、ターちゃん寝起きにしては冴えているわね」

「それとショコラってキルシュの隠し子か何かですか?」

「隆羅の使い魔だって如月ママが言っていたよ」

抱きついたままの海が不思議な事を言っている。

もしかして、あの時の子猫なのか?

「俺の使い魔?」

「ターちゃんの言う事なら何でも聞くはずよ、何か命令して御覧なさい」

「よし。ショコラ、キルシュに噛みつけ」

「ニャ?」

ショコラが首を傾げ潮さんが笑いを必死に堪えている。

「自分の使い魔も御せないなんて封印を解いてもヘタレのままなのね」

「くそ。ショコラこっちに来い」

ショコラを抱き上げようと海がベッドから降りた。

すると海の手を擦り抜けてベッドに飛び乗りペロペロと顔をなめてきた。

「くすぐったいよ、ショコラ」

「ショコラは甘えん坊さんだからね」

海がショコラに手を伸ばすと全身の毛を逆立てて海を威嚇した。

「キルシュ、ショコラってまさか」

「ああ、メス猫だがなんだ」

「うふふふ、海。ショコラにターちゃん取られちゃうわよ」

「そんなの駄目だもん。ショコラそこを退きなさい」

ベッドに海が近づくとショコラが前足を上げ爪を出し牙を剥き出しにした。

海が半べそをかいている。

「もういや。隆羅お願いだから何とかして」

「ショコラ駄目だぞ。海は俺が世界中で一番愛している女の子だ。お前も守ってやってくれ」

「ニャー」

ショコラが鼻を舐めてベッドから飛び降りると海の顔が完熟トマトみたいに真っ赤になった。

「海、どうかしたか?」

「た、隆羅が世界中で一番愛しているって、わ、私も隆羅の事がその……」

「あっ兄貴! 起きたんだ」

病室のドアの方で元気な凪の声がして凪が猛ダッシュで抱きついてきた。

「凪、帰ってきたぞ」

「うん、約束通りだね」

「ああ」

「兄貴、如月ママとマーちゃんも一緒だよ」

入り口でお袋と茉弥が嬉しそうに手を振っている。

その前で海が上目づかいで見ていた。

「おい、海。そんな怖い顔してどうしたんだ?」

「もう、隆羅のバカぁ!」

「あがぁ、何するんだよ。海、痛いな」

海のストレートがクリティカルヒットした。

「あらあら、タカちゃんは相変わらずニブチンのへタレさんなのね。パパも来ればよかったのに恥ずかしがり屋さんなんだから」

「兄さまのへタレ!」

茉弥の元気な声が病室に響きみんなで大笑いした。

みんなの笑顔の中で海の笑顔が輝いていた。


島で祭りが始まった。

「海、行くぞ。いつまで出店を覗いているんだ」

「隆羅、待って。ショコラ、隆羅が待っているから行くよ」

「ニャー」

遠くから呼ぶ声が聞える。

「先輩、早く」

「おーい。へタレ遅いぞ」

海神祭(ハーリー)』が終われば梅雨が明け。島が一番輝く暑い夏がやってくる。


             


この小説が僕にとって始まりでした。

文章がぶっ飛んでいるのはいつまでたっても治らないようです。

いつも勢いだけで書いているためでしょう。

これからも拙い物語を書きていくと思いますが温かい目で見てやってください。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ