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パイパティローマ-6

隆羅が海に消えて数日が経ち。

海は自分の部屋で出掛ける準備をしていた。

「ショコラ。駄目よバッグに入っちゃ」

「ミャァー ミャァー」

黒い子猫が海を見上げて鳴いた。

「もう、駄目だってば。めっ」

「ミャァ?」

子猫を抱き上げ海が睨みつける。

「うふふ、可愛い」

「海、準備できたの? 行くわよ」

潮が呼ぶ声がする。

「はーい。もうちょっと待って。もう、ショコラ。何度、言ったら分かるの? しょうがねえな」

海が腰に両手をあてて笑いショコラをバックに入れる。

「出て来たら駄目だからね。お姉ちゃんに見つかったら、私が怒られるんだから。いい」

「ミャー」

「お姉ちゃん、お待たせ」

潮と海は沙羅の元へと向かっていた。

あの日、沙羅に一報を入れたのだが沙羅の方から。

「今は、海ちゃんが話せる状態じゃ無いでしょ。落ち着いてから家へいらっしゃい。判ったわね」

と言われ後日説明することを約束していた。


海達が隆羅の自宅に着くと玄関で凪と茉弥が待っていた。

「潮お姉ちゃんいらっしゃい。って私が言うのも変だよね、あれ兄貴は?」

「ええ、ちょっと出掛けているわ」

「やっぱりそうだよね。お姉ちゃんに会いに行ってからパイパティローマを探しに行くって、きっと帰って来るからって言っていたもんね」

凪と茉弥が顔を見合わせて無邪気に笑っている。

「凪、2階で茉弥ちゃんと大人しく遊んでいてくれないかしら。これから如月ママと大事なお話があるの。お願いよ」

「うん、分かった。マーちゃん行こう」

「うん、ナーちゃん」

2人が手を繋いで2階に上がっていく。

「こちらへどうぞ」

「詳しい話を聞かせてちょうだい」

沙羅はいつもと変わらない笑顔だった。

あの日、ニュースを見て海が隆羅を探しに岬に行き逢魔の闇に襲われ。

羅閃で海が隆羅を呼び。そして隆羅が現れて圧倒的な力で皆を守り海に鍵を返し。

闇が二度と表れられない様に凄まじい力で消滅させ力尽きて海に消えた事を話す。

「あの子らしいわね。不器用で真っ直ぐで力の加減を知らないで全力投球してしまう。潮さん、あれから何か判った事は」

「まだ、何も連絡はありません」

潮の指示で水神コンツェルンが総力を挙げて隆羅を捜索していた。

「そう、でもねタカちゃんが死んでしまった気が全くしないの。気配は感じないけれど今もどこかで生きている気がして」

潮はあの時の隆羅の言葉を言うべきか迷っていた。

『潮さん。海の記憶から俺を消してください』

隆羅が岬に現れ潮に耳元で囁いた自分の今後を予見していた言葉を。

潮が重い口を開こうとすると海のバッグがモゾモゾと動き子猫が顔を出した。

「ミャー」

「海、あなた」

「あら、猫ちゃんが居るの?」

バッグから出てきて沙羅に近寄ってきた。

「ショコラ、駄目。お姉ちゃんゴメンなさいショコラがどうしても連れて行って欲しそうだったから」

「あらあら、ショコラちゃんって名前なの。うふふ、海ちゃんはケーキが大好きなのね」

ショコラと言う名前は隆羅が島で作ってくれたガトーショコラから取ったものだった。

沙羅がショコラを鼻先に抱き上げた。

「ショコラちゃん。いらっしゃい。あら、この子。隆羅の匂いがするわ」

「その子猫はあの日、岬に向かう途中でバイクで轢きそうになったのを隆羅が助け。岬で私に託したんです」

「そうなの。いつも自分の事は後回しなのね。そして、鉄砲玉みたいに何処かへ飛んで行っちゃうの。あなたのご主人様は何処に居るの?」

「ミャー」

「そうなの判らないんだ。しょうがないご主人様ね」

潮と海が驚いて顔を見合わせると沙羅の目から涙が零れた。

「沙羅さん。ご主人様っていったい」

「この子は隆羅の使い魔よ。まだ小さく力も弱くって。そして元々真っ黒だったから分からなかったのね。でも、私には判るのこの子が隆羅の使い魔だって。この子が消えないと言う事は隆羅は必ずどこかで生きていると言う証なの」

「た、隆羅が生きている」

海の声が震え泣き出した。

「海ちゃん、泣くのは後からよ。隆羅を探しましょう」

「は、はい」

「海ちゃんは羅閃で呼べたのでしょう。それならば今も必ず繋がっているわ」

「でも、私にはどうすれば良いのか何も……」

潮が海に向き合い真っ直ぐに見た。

「海、聞いてちょうだい。あなたと隆羅は幼い頃から繋がっているの。そしてあなたの強い想いが龍の中で隆羅の波動を感じ覚醒して鍵と一緒に隆羅の元に落ちたの」

「幼い頃から?」

「そうよ、あなたが幼い頃に私のイヤリングを失くして叱られ家を飛び出して。池のほとりで出会いイヤリングを探してくれて自分の秘密の力を見せた男の子。憶えているでしょう。その男の子は隆羅よ」

「でも隆羅は何も」

海の瞳が揺れている。

「それは、私が隆羅に口止めをしていたからなの。海の覚悟を確認するまで黙っていて欲しいと。いろいろな事が重なって今まで言い出せなかったの。ゴメンなさいね」

「あの優しい男の子が、隆羅なの? 逢いたくて、また逢えますようにって毎日願ってた。出会っていたの? 私、知らなかった。隆羅に会いたい。今すぐに会いたい」

「海ちゃん、言っていたわよね。海ちゃんが迷っている時は隆羅が迎えに行くから隆羅が迷っている時は海ちゃんが迎えに来てくれって隆羅に言われたって。今がその時なんじゃないかしら」

「でも私には」

海が目を伏せてしまう。

「あなたの胸の羅閃は私達の力と同じようにまだ判らない事ばかりなの。そして今その羅閃は海ちゃんと隆羅を繋いでいる。願って御覧なさい隆羅に会いたいと。隆羅が言っていたのでしょ。誰かを愛しく思い、強く願う愛の力は無限の力なんだって。さぁ早く」

「はい、やってみます」

海が両手で羅閃を握りしめ心から願う。

『隆羅。隆羅、何処に居るの。隆羅、愛している。愛しい隆羅に会いたいの。隆羅お願いよ答えて』

手の中の羅閃が青白い光を放ち海の頬を涙が伝う。

「生きている。隆羅が生きている。何処かの病院で眠っているみたい。でも何処なのかは判らない。生きていてくれた。隆羅に会いたい」

「隆羅はパイパティローマを探しに行くと言っていた。なら2人が再会した島に必ずいるはずよ。あの石垣島に」


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