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魔のバレンタイン-5

意識を取り戻すと目を閉じていてもここが何処なのか夜なのか昼なのかも判った。

力を解放する度に感覚が研ぎ澄まされていく。

そして側に誰が居るのかも鮮明にイメージできた。

「潮さん、何日経ったんですか?」

「5日よ」

「海はまだなんですね」

「ええ」

潮さんの声に張りがない。

「そして、もうあまり時間が残って無い」

「やはり聞いていたのね」

「鍵を取り出して良いですよ。覚悟は出来ていますから」

「そんな事……」

「じゃ、何故ここに居るんですか?」

「それは……」

「あぁ、良く寝た。寝すぎだな」

伸びをしながら起き上がると体は何処も痛くなかった。

体を解す様に肩を回し伸びをする。

「鍵を取り出すなんて出来るわけ無いでしょ。海が悲しむわ」

「海がどうなっても、同じことが言えますか?」

潮さんが悲痛な顔して拳を握りしめている。

「私にどうしろと言うの。もう何も失いたく無いの。でもその方法が見つからないのよ。鍵を取り戻す事も海を助ける事もあなたを助ける事すら出来やしない。鍵を取り出せばあなたは死んでしまうのよ、私だってあなたの事が大好きなの」

「良いんですよ。誰かに寄りかかっても。あの2人に出来ないのなら俺で良ければ何時でもいいですよ。泣きたいのなら思いっきり泣けばいいんです。辛いのなら辛いと叫べばいいんです」

「わ、私にはそんな事……」

唇を噛み締め潮さんが揺れていた。

「良いですか潮さん。何でそんなに強がるんですか? 今は水神コンツェルン総帥ではなく水無月 潮でしょ」

母親が子どもに言う様に優しく言い抱きしめると潮さんは嫌がる素振りを見せなかった。

「私が、迷えば、あの子たちが……」

「迷うのならみんなで考えましょうよ。1人で駄目なら2人でそれでも駄目なら3人で」

潮さんはしばらくの間泣き続け優しくそして力強く抱きしめる。


少しするとしゃくり上げていたが落ち着いて来たようだった。

「潮さん、落ち着きましたか?」

「ええ、ありがとう。すっきりしたわ」

顔を上げ潮さんが手で涙を拭った。

「はぁ、こんな姿を見られたのあなたが始めてだわ。それにあんなに赤くなった顔もね。誰にも見せた事なんて今まで一度も無いのに」

「じゃ、絶滅危惧種の天然記念物並みですね」

「そうね」

「俺が居なくなったら。ヘタレ目ヘタレ科ヘタレ属は絶滅ですね」

「うふふ、あなたって本当に面白くって不思議な子ね。知らない間に優しく側に居るの。私はそれが怖かったのかも知れないわ」

「それじゃ、もう平気ですね」

「ええ、これからは更にガンガン行くわよ」

「それだけは、マジ勘弁してください」

潮さんが笑顔になり瞳に力が籠っているのでこれでもかと言うくらい遠慮しておく。

「それと、この事はあの子たちに内緒よ」

「絶対に言わないですよ。海に知られたら瞬殺されますよ」

「それもそうね」

この辺で本題に入ったほうが良いだろう。

「それじゃ、あの龍の事を教えてください」

「あの龍は鍵の守り神みたいなものなの。今回は隆羅の命が危なくなった為に隆羅の中の鍵を守ろうとして発動したの。あれが表に出ているときは海の意識は龍の中に封印されて出てこないわ。そして体は龍の意識が支配してしまう。発動してしまった以上どんな事をしてでも鍵回収しようとするはずよ。海の体を使いあなたを殺してでも。とても危険な状態だわ」

「そうですか」

「龍は選ばれし者の中にしか存在しないわ」

「選ばれし者ですか?」

「そう、海の前は母だった。母が亡くなってから鍵は何処かに封印されていたの。そして、年齢に関係なく鍵を持つ資格が出来た時点で体に印が現れる。その後、龍の姿になり鍵を受け取りに行くの。でも、海の場合は鍵を取りに行った帰りにアクシデントが起きた。龍に封印されていた筈の海の意識が何かに反応して覚醒してしまい。その為に龍の体を維持出来ずに落下してしまった。鍵ごとね。それが隆羅の見た落ちてくる青い光の玉の正体よ。そして反応した何かは隆羅あなたよ。隆羅の極小さな波動に反応してしまった。たぶん、幼い頃に出逢った隆羅にもう一度会いたいと強く願っていたからだわ。あなた達はずっと昔から結ばれていたのだと思う」

「鍵を何処に取りに行くんですか?」

「誰にも判らない。知っているとすれば龍だけよ」

「どうすれば、元の海に戻るんですか?」

「封印された海の意識が覚醒すれば元に戻るのは確かだわ。でも方法までは」

「しばらく様子を見るしかなさそうですね」

「そうね、闇もあれだけの深手を負っていれば直ぐには襲ってこないでしょうしね」

潮さんの瞳が真っ直ぐ俺を見ている。

「今、言える事は隆羅の封印を完全に解かないと2人の命は無いと言うことだけだわ」

「そうですね、解く方法は俺自身でも何とかしてみます」

「私も出来るだけ調べてみるから」


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