表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/46

魔のバレンタイン-4

食事も終わりレストランの外へ出る、今夜はとても冷え込んでいた。

「そこの公園に綺麗な噴水があるのよ。ちょっと散歩がてら見に行きましょう」

潮さんの提案でレストランの向かいにある大きな公園に向う。

やけに人が少なく感じたが寒さのせいだろうと思った。

「でも、今日はターちゃんが居てくれたお陰で助かったわ。ありがとう、このお礼はきちんとするから」

「お礼なんていいですよ、別に。色々とお世話になっているし。みんなの綺麗なドレス姿も見れましたし」

「誰が、一番綺麗だったのかしら」

「そんな事聞かないで下さい。答えに困りますから」

段々潮さんの弄りが嫌じゃなくなっている事に気付いた。

「ターちゃんに聞くだけ野暮だったわね。それにしても神風BOYにカクテル神風ね。本当にターちゃんは神風なのかもね」

「潮さん。そんな事言っている場合じゃないみたいですよ」

ちょうど噴水の在る広場に出てきた時だった。

強い殺気を感じ潮さんの顔を見るとそこにあの微笑は無い。

「そうみたいね。よりによって海と凪が一緒の時に。噴水まで走るわよ」

「了解です」

「凪、海。噴水まで走るわよ」

海と凪は何が起こっているのか判らずに潮さんの言葉に従い走り出した。


噴水を背に立つと海も殺気を感じたのか震えている。

ジャケットを脱いで海に掛けてやり一歩踏み出し3人の前にでる。

「2人とも良く見ておきなさい。これが力を持つ私達の世界なのだから」

海と凪は震えていた。

凪はこんな恐ろしい体験初めてなのだろう。

使い魔の気配を感じる。その数は河川敷の比じゃない。

公園に人が居なかったのはその為だったのだろう。待ち伏せされ罠にはまってしまった。

深呼吸をして心を落ち着かせる。

袖のボタンを外し袖を捲り上げると影が動いた。

右手に意識を集中して掴み取と炸裂音がして影が消し飛んだ。

次の瞬間、今度は右から使い魔が再び消し飛ばす。

この間の河川敷の経験で波状攻撃にも体が対応できていた。

ジワジワとかなりの数が近づいてくる。

その時、後ろから凪の悲鳴が聞え。

噴水の影から使い魔が飛び出し襲い掛かった。

潮さんが何かを叫ぶと噴水の水が3人を包み込んで影が水に飲み込まれる。

「隆羅、こっちは何とかするから集中しなさい」

潮さんの檄が飛んでくる。それを合図の様に使い魔が一斉に飛び掛って来た。

数匹は消し飛んだが全ては消せなかった。攻撃を受けて体に痛みが走る。

片膝を着き呼吸を整える出来るのか? そうじゃないやるしかない。

目を閉じて意識を集中する。

ジリジリと河川敷の時の様に使い魔の気配が近づき一気に飛び掛ってきた。

「燃え尽きろ。炎、爆!」

クリアーオレンジの炎が噴出し体の周りを包み込んで気配が一気に消し飛んだ。

力を放出し続け途切れそうな意識を繋ぎとめる。

何処からか声がした。


「あれも防いだか。これは楽しそうな玩具だ。それなら、これはどうかな」

地の底から聞こえる様な声と共に潮さん達の頭上に炎が落ち3人の悲鳴と共に包んでいた水が弾き飛ばされた。

そこに使い魔が走り込む。間に合わない。

「くそぉ!」

噴水に向かって走りだすとまた頭の中で声がしてイメージが浮かぶ。

右手を地面に着けイメージ通り叫んだ。

「地、陣!」

手のひらから同心円を描くように光が走り。

もの凄い炸裂音と共に使い魔が消し飛んだ。

荒い呼吸音だけが聞こえ背中に悪寒が走る。

「お遊びが過ぎましたか」

背後ろから声がして振り返ると10メートルくらいの所に歳は10~12歳位の少年が立っていた。

黒いキャップを深く被り口元しか見えない。

黒いダウンジャケットを着て青いズボンにスニーカーを履いている。

あれが逢魔の闇なのかこちらを見てニヤニヤしていた。


「面白い余興だ」

次の瞬間、目の前に闇が。

蹴りが飛んで来て左手で受けたが吹き飛ばされる。

まるでフルスイングした鉄パイプが脇腹に叩き込まれたような衝撃だった。

そして鈍い音が体に響き闇の蹴りが振り下ろされ腹に炸裂した。

「あっ、うっ……」

まったく早さについて行けなかった。

「へぇ、急所は咄嗟に外すんだ。面白い奴だ」

完全に弄ばれている。

島の道場でボコボコにされた時の事を思い出した。

『目で追うな、体で感じろ』

レースをしていた所為でどんな速い物でも目で追ってしまう癖がついていた。

それでも後ろから迫る車やバイクは感じられた。

それに目で追えるなら避けらないはずが無い。

クールだ、クールになれ。

潮さん達は噴水のそばで釘付けになっていた。

少しでも離れれば襲われ海と凪が一緒じゃ逃げるに逃げられないのだろう。

鈍い音がしていきなり足を払われ背中から倒れ闇が呆気にとられている。

「貴様ぁ!」

古武術の構えをして対峙する。今までやってきた事を全て出し切るしかない。


蹴り、突き、蹴り、蹴り連打される。

辛うじて全て受け隙を見つけ突きを繰り出す。

闇の体に当たりはするがダメージは与えられない。

「俺の体に触れるな。しつこいんだよ貴様は!」

そして連打される。

受けはするが全てが重い。

目の前でフラッシュを焚かれた様な光が走り左脇に激痛が走る。

目晦ましを食らい蹴りがもろに入った。

無意識に体が動き横に飛び脇を押さえながら立ち上がる。

「うっ……はぁ、はぁ、はぁ」

「まだ、立ち上がるか。それならこれでどうだ」

闇が3人めがけて走り出したのを見て体の奥底で何かが動いた。


3人の悲鳴が公園に響き。

闇が鬼の力を込めて蹴りを繰り出す。

凄まじい炸裂音がするが3人には蹴りは届かなかった。

「貴様が何故此処に居る」

左腕を脇にに押し当て右手で鬼の力を封じ蹴りを受け止めていた俺自身ですら理解できなかった。

闇が走り出した瞬間に浮かんできたイメージは道場でやらされたが出来る筈もない幻の移動術『瞬歩』だった。

左の肋骨が完全に逝き膝から崩れ落ち片膝をつき咳き込み少量の血を吐く。

それを見た海が動こうとして潮さんに制された。

凪は頭を抱え込むようにして潮さんの後ろででしゃがみ込んでいる。

「チェックメイトだ」

「させるか」

脇を押さえながら3人の前に立ち上がる。

周りの空気がピリピリと張り詰め。先ほどの炎の数倍はある炎が渦を巻い向かってきた。

「ゴメン、海」

為す術がなく目を閉じる事しか出来ない。

海の絶叫と声と共に海の体が青い光を放ち。

その光は立ち昇り何かの形になりながら俺達の周りをグルグルと取り囲んだかと思うと巨大な炎が音もなく消し飛んだ。

目を疑った。青い光はとぐろを巻く様に周りを取り囲んでいる龍の姿をしていた。

「クソ、水龍か」

闇が呟き。龍が消えた瞬間、海の気配までが消えた。

何かが切り替わるような音がしてラボの時の様に何かのスイッチが入った様な感覚が起こる。 

心の奥から海の名前を叫ぶ。

大気がビリビリと震え右腕の模様が曲線のフレイムから直線の模様にチェンジした。

島の時より遥かに大きく。

ラボの時より遥かに意識がしっかりしていた。

放電現象が起き体から青い電気が立ち昇り天に向けて雄叫びを上げる。

闇が動こうとすると巨大な神鳴りが闇の頭上に落ち周辺の建物の灯りが全て消えた。

真っ暗の中、目が慣れてくると神鳴りが落ちた近くにフラフラと立ち上がる影が見えた。

しかし襲ってくる気配は感じられず良く見ると片腕が吹き飛ばされた闇の体中が焼け焦げブスブスと音を立てている。

「貴様、次は必ず殺す」

捨て台詞を穿き闇が吸い込まれるように消えた。


振り返ると神鳴りの衝撃で3人とも気を失っていた。

「海、海!」

「あ、兄貴!」

海に声を掛けるが反応が無く凪が気付いてと泣きながらだ抱きついてきた。

「潮さん、潮さん」

潮さんの体を揺すると気付き周りの状況を確認している。

「海は大丈夫なの?」

「判りません、気を失ったままで」

潮さんが携帯を出し何かのボタンを押した。

「落ち着いて直ぐに助けが来るわ」

「何をしたんですか?」

「私専用のエマージェンシーコールよ。この携帯から発する電波で何処に居ても助けが来るの」

しばらくするとヘリが近づいてきて直ぐ近くに降りた。

「隆羅、海を早く」

「判りました」

海を抱き上げフラフラとヘリに乗り海をイスに座らせ横に座り体を支える。

「凪、急ぎなさい」

「う、うん」

凪の手を掴んで引っ張り込む。

「急いで出して」

潮さんが叫ぶとヘリが飛び立ち意識が途切れた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ