クリスマス-ss
翌日、俺と海は拉致された。
海は凪と朝食を食堂で食べていた。
その頃、潮さんは書斎で調べ物をしていたらしい。
凪が目聡く海の左手首に光る物を見つけた。
「お姉ちゃん、これはなにかな」
「駄目。それだけは絶対に駄目。凪! 返しなさい」
「やだもん」
海の左手からブレスレットを外して凪が食堂から飛び出した。
凪を追いかけると凪が潮の書斎に逃げ込んで海も後を追う。
「お願い。返して。凪」
「朝から騒がしいわね。いったい何の騒ぎなの? 海、説明しなさい」
「凪が私の大切な物を取ったの」
「凪、見せなさい」
潮に言われ凪がブレスレットをつまむ様に見せた。
「あら素敵なブレスじゃない。ネーム入りでラブラブね。凪。返してあげなさい」
「ええ、だって」
「だってじゃありません。ターちゃんから貰ったものを誰かに取られたら凪は嬉しいの。違うでしょ」
「判った。その代わりこれを着けてお姉ちゃんはここに居てね」
海が凪からブレスレットを受け取ると右手に玩具の手錠を嵌められてしまう。
手錠にはロープが着いていて書斎のソファーの足に縛り付けて凪は書斎から飛び出して行った。
「お姉ちゃん、お願い外して」
「あらあら、鍵はたぶん凪しか持っていないわよ」
「仕事に遅れちゃうよ」
俺はまだ夢の中で左手首にブレスが光っていた。
しばらくするとガチャリと音がした。
「ガチャリってなんだ?」
右手首を持ち上げて見ると厳つい手錠の様な物が。それにはロープが付いていてその先にツインテールが居た。
「確保成功。これより連行いたします。来い」
「あのう、凪さん。引っ張るのはいいんですけど。俺、Tシャツにパンツ一枚なんですけれど」
徐に立ち上がると凪の顔が真っ赤になった。
「ば、バカ兄貴。早く何か着てよ」
言われたとおりイスに掛けてあったGパンを穿こうとすると引っ張られている手錠が邪魔でバランスを崩し凪に覆いかぶさった。
「ど、どいて、早くバカ、バカ、バカ」
「おっ悪りい悪りい」
立ち上がりGパンをきちんと穿きシャツを羽織る。
「バカ兄貴、こっちに来い」
思い切り引っ張られ何かの変なプレイみたいだ。
連れて行かれたのは潮さんの書斎だった。
書斎に入ると海が手錠をされ繋がれていてしょげていた。
「海、何してるんだ。お前」
「凪に嵌められた」
「兄貴もここに座れ」
凪の指示通り海の隣に座ると手錠を外されて海がされていた手錠に繋がれてしまう。
「潮所長、隆羅及び海を拘留いたしました」
凪が背を向けて訳の分からない事を潮さんに向かってしゃべり始めた。
俺は凪に聞えなえない様に海に話しかけた。
「海、こっちに手を出せ」
海の手錠をヘアピンで外し指を口に当てる。
そして自分の手錠を外すと潮さんが楽しそうにこちらを見ていた。
「これから、2人にはじっくりとペアのブレスレットについて尋問させてもらいます」
ガチャリと凪の足首に手錠を嵌める。
「えっ?」
凪が驚いて振り返り。
海に声を掛けて手を取り走り出す。
「仕事に行って来まーす」
「待って! ギャン」
ドアを開けて逃げ出そうとすると変な声がした。
潮さんがお腹を抑えて笑っている。
凪が追いかけようとして手錠についていたロープがピンと張り倒れて悔しそうに涙目で見上げながら地団駄を踏んでいる。
「凪、あなたの負けね。ターちゃんもやるようになったわね。うふふ」
俺は海と笑いながら走り仕事に向かった。
あのヘアピンは凪に覆いかぶさった時に1本だけ凪の頭から抜いておいた物で。
玩具の手錠など子どもの頃によく親父にされて拉致られたので外す事などお茶漬けサラサラだった。