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クリスマス-2

水無月邸では再び問題が……

「潮お姉ちゃん。お姉ちゃんの機嫌が直ったのは良いけれど。毎日、気持ち悪いくらいにご機嫌なんだけど。そんなに仕事楽しいのかなぁ?」

「それは、だって凪。朝から晩まで大好きな大好きなターちゃんと一緒に居られるのよ。楽しくない訳ないじゃない」

「でもさぁ、初出勤の翌日は怒っている様にしか見えなかったけど『お姉ちゃんの仕事の話しちゃ駄目、隆羅にさわっちゃ駄目。あれもこれも駄目って隆羅のバカ』てぶつぶつ言ってたよ」

「そうね、海の仕事振りも一度見てみたいし。今度、覗きに行って見ましょうか。ターちゃんの仕事している姿もついでにね」

そして、別の所でも……


この看板娘の噂は瞬く間に広がって多忙を極めていたが。

スギの仕事の手伝いもやっと終わり体力的にも余裕があり海もだいぶ仕事に慣れてきているようだった。

しかし、その日はいつに無く暇で。

カウンターで海と先輩と3人で雑談をしていると入り口の自動ドアが開いた。

「いらっしゃいませ」

3人の声が合った。

入り口に立っていたのはニコニコ顔の茉弥とお袋がこちらを見て手を振っていた。

「いらっしゃい。茉弥、良く来たな」

「兄さま。兄さま」

出迎えて茉弥の頭をなでると茉弥が満面の笑顔で抱きついてきた。

お袋と茉弥を席に案内する。

「先輩、紹介します。うちの母と妹の茉弥です。お袋、こちらが島でお世話になった五月先輩だ」

「隆羅の母です。隆羅の事をヨロシクお願いします」

お袋が立って挨拶をした。

海も茉弥の所に言ってはしゃいでいて俺の視線に気付き海が俺の顔を伺うので笑顔で頷いた。

オーダーを受け料理を作る。

茉弥がこちらを嬉しそうに見ていて海が料理を出すと美味しそうに食べ始めた。


「いらっしゃいま……」

自動ドアが開き大きいツインテールと小さいツインテールが立っていて固まってしまう。

「お姉ちゃん、凪、どうしたの?」

小さなツインテールの凪でと大きなツインテールの潮さんに海が嬉しそうに駆け寄っていく。

潮さんは眼鏡なんかかけて変装のつもりなのだろうか。

お袋と茉弥の方を見た時にお袋と目が合い俺は人差し指を口に当てて合図するとお袋が軽く頷いた。

天然でボケボケのお袋だがTPOを弁えているらしい。

「潮さん、お久しぶりです」

「如月さん、ご無沙汰しております」

お袋が潮さんと会うのはあの委任状の件以来だったはずだ。

「凪ちゃん、こっちこっち」

凪は照れながら茉弥の隣に座って楽しそうにおしゃべりを始めた。

「オーナー。私の姉の潮と妹の凪です。お姉ちゃん、こちらがオーナーの五月さんよ」

海が先輩の事を紹介すると潮さんは微笑みながら軽く会釈するだけだった。

俺は何の厄日だと思ったが潮さんが余所行きの顔で取りあえず胸を撫でおろす。

潮さんもお袋の隣に座り何かを楽しそうに話始め海がオーダーを取ってきた。

「オーダー入ります」

「はいょ」

俺が返事をすると先輩が寄ってきた。

「如月。あの海ちゃんのお姉さんって何処かで見た事がある気がするのだが」

「先輩、気のせいですよ。気のせい。それより邪魔です、仕事。仕事」

時間の問題だと思うがとりあえず今は誤魔化した。

普段通りに料理を作り始めると今度は4人の視線が突き刺さった。

「料理あがったよ。ヨロシク」

「はーい」

潮さんたちと話していた海に声を掛けると返事をして嬉しそうにテーブルに運んでいた。

身内に仕事場を見られる事が今まで無かったので照れ臭くてしょうがなかった。

カウンターの中で片付けをする事に集中する。


凪がいつにもまして輝いた目で隆羅を見てる。

それは嬉しさじゃなく憧れの眼差しだった。

「あらあら、困ったものね。ターちゃんは、また旗立てちゃって」

凪の顔を見た潮さんが独り言のように呟いていた。


しばらく話をしていたが他のお客が入りだしたのでお袋達が席をたった。

「ご馳走様でした。ターちゃん、あんまり旗立てちゃ駄目よ。このヘ・タ・レ君」

潮さんがカウンターまで来て訳の判らない事を言っている。

「旗ってナンの事ですか?」

「もう、ターちゃんはニブチンなんだから」

先輩と同じような事を言い出て行った。

「ありがとうございました」

そしてこの4人の出合いが俺をとんでもない事に巻き込む事など知るはずも無かった。


看板娘の客寄せ効果は絶大だった。

恋人が言うのもおかしいが百人の男がいれば百人ともが振り返るであろう綺麗で可愛い海の事だから当然と言えば当然なのかも知れない。

そして俺と先輩は本当に殺されかけない忙殺に飲み込まれて行った。


街はクリスマスカラーに包まれ始める。

あちらこちらではイルミネーションが輝きクリスマスソングが流れ恋人達は楽しそうに歩き。

街全体がこうウキウキと浮かれているようで。

そんな日曜日に俺は独りで都内をブラブラしていた。

海と凪は最近暇さえあれば部屋にこもって何かをしているらしいと潮さんが話していた。

今日も誘ったのだが用事があるからといそいそと部屋に戻ってしまった。

ある意味、毎日朝から晩まで一緒に居る訳だから日曜くらいは独りでゆっくりも良いかと思い出て来た。

実家に居る時から暇さえあれば何をするでもなく都内をぶらついていたので、渋谷・原宿・池袋・秋葉原tc若者が集まる所なら大体案内できる程度には詳しい。.

1人だったので少し裏道をぶらつく事にする。

しばらく歩くとそこだけ昔のヨーロッパにタイムスリップしたかのような小さな店が目に留まる。

古木の様な看板に『Luna』 と書いてある。表から中を覗くと小物やジュエリーの店らしかった。

ショーウインドーの中を見ているとペアのブレスレットに目が留まった。

シルバーで出来ていて細身のプレートに小さなブルーダイアが埋め込まれている。

煩くないチェーンがついてネーム入れオーダー受けますの札がついていた。

海がこのブレスレットをしているイメージが浮かんでくる。


数日前、仕事が終わった後に先輩に呼ばれた。

海が来てからと言うもの毎日のようにお客が押し寄せ忙殺どころじゃない忙しさが続いていた。

「これは、ボーナスと言うか中身は寸志程度だが受け取ってくれ。それとクリスマスイヴは休んでいいぞ2人でゆっくり過ごすといい。俺からのクリスマスプレゼントだと思ってな。店の方はうちの奥さんに頼んであるから大丈夫だ。夜も常連のお客の予約だけだしな」

「ありがとうございます」

海と頭を下げて顔を見合わせると海の顔が輝いていた。

ボーナスは有り難く頂き休みも遠慮なく取らせて貰うことにした。

俺が来る前までは奥さんと2人で回していたのだから大丈夫なのだろうと勝手に解釈して。


今日の目的はクリスマスプレゼント探す事だった。

まぁ、探すと言ってもただブラブラするだけなのだが。

茉弥と凪への誕生日プレゼントと同じでインスピレーションが大切で。

ペアのブレスレットをオーダーしてネーム入れを頼んで店から出ようとして、もう一つ目に付いた物があった。

それはペンダントにもなるグラスホルダーなのだがとてもシックで落ち着いている。

これを潮さんにどうかと思った。

潮さんなら何でも持っている気はするのだがようは心なのだと自分に言い聞かせる。

綺麗にラッピングしてもらいブレスレットと一緒に取りに来る事を告げて店を後にした。

デパート巡りをしているとつばがゆるくウエーブした可愛らしい白い帽子が目に止まり、茉弥に似合いそうだと思い即決し。

その向こうには俺が長野の時に被っていた派手なオレンジ色のキャップに良く似たキャップがあったので凪のプレゼントに選んだ。

お袋には何を送るか悩んでいた。

お袋の趣味は親父以外には分からないので困ってしまう。

しばらく歩いていると暖かそうなベージュのストールが目に入ってきた。

カシミア入りでいい感じだったので購入し包んでもらう。

だいぶ財布の方は飛んで行きそうなくらい軽くなったがこの為にスギの仕事の手伝いもしたのだから。

そして残るのは海と2人だけでどう過ごすかという事だけだったのだが。

知らない所でかなり前に有無を言わせず決定されてしまっていた事だった。


浜松町の先輩の店であの4人が鉢合わせした日に……

「母様、もうすぐクリスマスだね」

「そうね茉弥、今年もタカちゃんにケーキ作ってもらってパーティーしようね」

「うん、母様。茉弥、大、大賛成!」

茉弥が大喜びで飛び跳ねた。

「沙羅さん。もし良ければ私達とみんなでクリスマスパーティーをしませんか」

「でも、うちは建売住宅で狭いから大人数は無理ですし」

「それなら、凪達の家でやればいいじゃん」

「それもそうね」

「お邪魔していいんですか。私も潮さん達のお屋敷は見てみたいですけれど」

「じゃあ、潮お姉ちゃん決定ね」

「それじゃ、ターちゃんにケーキを作ってもらって、ターちゃんに料理準備してもらって、ターちゃんに頑張ってもらう。それでいいかしら」

「大賛成!」

それを知ったのはプレゼントを買って帰った後の事だった。


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