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凪とデート-2

原宿からいったん渋谷に戻り埼京線に乗る。

戸田公園駅で降りそこから歩いて15分位の所に昔住んでいた家はあった。

「ねえ、兄貴はいつもこの辺で遊んだりしたの?」

「ああ、そうだなこの辺かな」

「ねえ、あれは何」

「ああ、あれは団地だ」

凪の質問に生返事しか出来ない。

「兄貴、兄貴ってば。さっきから少し変だよ」

「えっ、何が?」

「なんか、素っ気ないし」

「そんな事ないぞ、別に」

凪の言うとおりなのだろう。何故ならここで遊んだ記憶なんて無いのだから。

海は『凪が主役』と言われたせいか何もしゃべらずについてくる。

そんな海の顔を見るとなんだか嬉しそうに辺りを見回していた。


幼い頃住んでいた家に着くと洗濯が干してあり庭の感じも変わっていた。今は誰かが住んでいるのだろう。

「兄貴、あれって学校だよね」

「あれは、中学校だ」

「行ってみよう」

近所にある学校を見つけて凪が歩き出した。

少し歩くと直ぐに正門に着き凪が隣の建物に興味を示した。

「あっちも学校なの?」

「あそこは小学校だよ」

「じゃ、あっちも」

凪がスキップをしている何が楽しいのだろう。

小学校の正門は開いていてまだ学童の子が残っているようだ。

「中に入っても怒られないかなぁ」

「大丈夫だろう、仮にも俺はここの卒業生だからな」

凪は校庭に入ると遊具や鉄棒などをしながら走り回っている。

俺は海と遊んでいる凪を見ていた。

ひと通り遊ぶと凪が満面の笑顔で俺達の方へ走って戻ってきた。

「あ~楽しかった」

「そんなに何が嬉しいんだ?」

「だって、兄貴が遊んだ校庭だよ」

何が楽しいのかも凪の言葉の意味分からなかった。

「じゃ、そろそろ行くか」

「兄貴、駅こっちじゃないよ」

「ここからだと向こうのの駅の方が近いんだ」

正直言うと戸田公園は誰かに会いそうで嫌だった。

それに俺が向かおうとしている蕨駅も戸田公園駅と大差ない距離だった。

「少し歩くぞ」

「兄貴、お願いがあるんだけど」

「なんだ、今日は何でも聞いてやるぞ。凪が主役だからな」

「私も手繋ぎたいなぁ」

海に目配せをして手を離し凪の手を取る。

「これで、良いのか」

「うん。ほら、お姉ちゃんも」

嬉しそうに言って凪が海の手を取った。

3人で並んで歩くと凪がとても楽しそうに手を振っている。


しばらく歩き蕨駅前に着くと凪が何かを見つけたのか手を振り解いて走り出した。

「凪、危ないぞ」

「うわぁ!」

注意した途端、角で男の人とぶつかってしまった。

「だから、危ないと言ったのに。どうもすいませんでした」

「あれ、もしかして如月じゃねえか?」

驚いて顔を上げると三バカトリオのスギこと杉田だった。

「久しぶりだな。まだ時間大丈夫だよな。ちょっと黒崎呼ぶから待っていろ」

いきなり杉田が携帯を取り出し電話し始めた。

こいつらは昔から全てにおいてこんな感じで人の事情など一切眼中にない。

しかし決して悪い奴らじゃない事は確かだ。理由はこんな俺が3年間も振り回されたのだから。

「悪いなこんな事になって。少し俺に付き合ってくれ」

「別に構わないよ。ね、お姉ちゃん」

「サンキューな」

携帯を取り出し潮さんに電話する。

知り合いに会い少し遅れる事。屋敷まできちんと送り届ける事を告げる。

「いいわよ。ターちゃんとなら安心だから、あまり遅くならないようにね」

「判りました」

OKをもらい携帯を切ると凪が不思議そうな顔をして俺を見上げた。

「潮お姉ちゃんに電話してたの? それなら凪が説明したのに」

「いや、これは俺の都合だ。俺がきちんと言わなきゃいけない事なんだよ」

「そう言うもんなのかなぁ」

凪が首を傾げている。

「じゃ行くか。あれ? こちらの女の子達は」

杉田が携帯を切り気付いたらしい。

どう紹介するべきか考えたが答えは出てこなかった。野にも山にもなってしまえそんな気分だ。

「えっと、こっちが彼女の海。こっちが彼女の妹の凪だ」

「はじめまして。水無月 凪です。ほら、お姉ちゃんも」

「はじめまして、海です宜しくです」

海が真っ赤になって俺のシャツの裾を掴み、凪が驚いた顔をして俺の顔を見上げていたが直ぐ自己紹介をして。

凪に促されて海も消えそうな声で自己紹介をした。

「ねえ、お義兄さん、こちらは」

「ああ、こいつは高校の時の友達の杉田だ」

「はじめまして。私、杉田と申します。スギと呼んで下さい」

凪の『お兄さん』に別のニュアンスが含まれていそうだがスルーする。

スギが直立不動でしゃべっている相変わらず変な奴だ。

「で、何処に行くんだ。スギ」

「ああ、すまん。クロとの行きつけの居酒屋でいいな」

「ああ、構わないけど」


スギに案内されて駅前の居酒屋に入ると飲み物も来ないうちに黒崎が走りこんできた。

「ハァ、ハァ、ハァ。如月が帰ってきたって言うから飛んできたんだ。あっ、居やがった。この野郎連絡もしねえで。このバカが」

「痛たたた。クロ、痛いよ?」

いきなりヘッドロックしてきたクロが海と凪に気付いて固まっている。

「スギ。こ、こちらのお2人は」

「ああ、キサの彼女と彼女の妹だ」

「か、彼女だとお」

「クロ。痛いって言っているだろ」

クロが頭を掴んだまま振り回し。力任せにクロの腕から頭を引き抜くとクロが自己紹介を始めた。

「は、はじめまして。ぼ、僕は如月君と高校時代の友達の黒崎といいます。クロと気軽に呼んで貰って構いませんので」

緊張しているクロを見てスギと大笑いした。

クロの飲み物が来て乾杯して飲み会が始まった。

もちろん凪はジュースで海はウーロン茶を飲んでいる。

「お口に合うか判りませんが食べたいものを頼んでください。今日は俺と黒崎が奢りますので」

「ありがとう。お姉ちゃん、何が食べたい?」

凪と海がメニューを楽しそうに見ながら店員に注文をしている。

「キサ、お前今まで何処にいたんだ」

「沖縄に居たんだ。沖縄って言ってもさらに南にある小さな島だけどな」

「そんな島で何の仕事していたんだ?」

「そうだな。ホテルのウエイター・カクテルバー・パン屋・色々だ。最後の方は居酒屋を任されていたけどな」

スギとクロが顔を見合わせて驚いている。

「お前、変わったな」

「そうか?」

「クロが言うとおり変わったよ。驚くくらいな」

クロとスギが話しに夢中になっているのを見てと凪と海に声を掛ける。

「ゴメンな、大丈夫か?」

「平気だよ。楽しいし面白いし。ね、お姉ちゃん」

「うん」

それにしても今日の海は口数がとても少なかったが。

笑顔を絶やさないと言う事は機嫌が悪いわけじゃなさそうだ。



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