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3 さようなら、平和な生活


「そう…。半分、ね。朔弥に忍ばせていた小型カメラで見る限り、再生能力かしら?」

「うーん、どうだろう。それもある意味正解なのかも」


エーベルがコーヒーを一口飲む。

ローザは彼から一切目を離すことなく見つめ、白鷺は形の良い顎に手を当て、少し考える素振りをした。

この調子では、エーベルは全て「ある意味正解」を出すのではなかろうか。


「えっと…白鷺、だっけ?答え、教えてほしい?」

「あら、自らそれを提案するのね?」

「ふふ、僕はあまり待つことが得意ではなくてね。君たちはさっさと僕を殺したいだろうし、こうして考え込むのは時間の無駄だと思うんだけど」


コーヒーが入ったコップを置いて、エーベルは微笑んだ。

その無邪気な笑顔の裏に、いくつの策略が隠されているのだろうか。俺は先程と似たような悪寒を感じた。


「…そうね、それが合理的だわ。お願いしようかしら」

「うん。いい判断だ」


俺はエーベルからはテーブルに隠れて見えないであろう、ナイフホルダーに手を伸ばす。

コイツの能力が血液操作なら、あまり意味は成さないだろうが、やらないよりかはマシだろう。


「僕の能力は主に二つ。一つは君達も知っているよね?」

「血液操作」

「そう、正解だよ朔弥君。僕の能力の一つは血液操作。そして二つ目、それは…不老不死さ」


不老不死。老いることも死ぬこともない事。

俺が眉を顰め、「不老不死?」と投げ返すと、エーベルはコクリと頷いた。


「そう、不老不死。さっきの再生能力が正解に含まれているのは、コレと血液操作を掛け合わせたものなんだよ。」

「…つまり、不死だから刺されても死ぬことはない。血液も操って傷口を塞げる。それがお前の言う掛け合わせっつーことか?」

「そうだね。正確には再生じゃないんだけど、面倒だから再生ってことにしてる」


俺はナイフホルダーから手を離した。

不老不死なら攻撃は意味を持たず、それどころか流血させると、昨晩のように鎖で縛られる可能性もある。


白鷺は浅くため息を漏らす。


「困ったわね、貴方を殺す任務は成功しそうにない」


俺も頭を抱える。


任務の失敗。この組織の一番上のお偉いサン、鴉になんて言われるだろう。

クビにはされないだろうが、グチグチと文句を言われるだろうな。

仮にクビにされるようなことがあったら、アイツの首も一緒に持って行ってやる。


「んー……あ、殺せないのなら、その条件が分かるまで組織に置いておくのはどうですか?」


ローザが突然言い出した。

置いておく?組織に?コイツを?


冗談じゃない。異能持ちを組織に置いておくとか、政府に何を言われるか分からない。

俺がガタリと立ち上がり、ローザの提案を却下しようとした時、白鷺が声を被せた。


「そうね、いい提案かもしれないわ。殺せないのなら、管理するしかない」

「おい白鷺___」

「お、この組織に置いてくれるのかい?それは楽しそうだ」

「お前も乗っかるなって…」


エーベルは何故ノリ気なんだ。

俺は再び席に座り、頭を抱える。誰かこの状態を止めてくれ。

鴉に頼る事なんて一生したくなかったが、今この時はしょうがない。


「じゃあ、貴方をこの組織で管理する。そういう事でいいかしら?」

「鴉の許可は取らなくていいのかよ」

「いいじゃない、ワタシから上手く言っておくわ」

「私も一緒に説得してみますから、ご安心ください」


うふふ、そう上品に笑う二人を見たら、俺の反抗する力はもうどこかへ消え去った。

時には諦めも肝心、とはいうが、今それを実践したくなかった。


俺は大きくため息をついて、「念のため聞いておくが、他の異能者と繋がっていないだろうな」とエーベルに尋ねる。


「うん、繋がっていないよ。そもそもそんな人脈がないからね」


彼は案の定そう答える。

そんなエーベルに、白鷺は先程より幾分か穏やかな声で言う。


「かと言って、本当に誰とも繋がっていないとは限らないわ。貴方を簡単に信頼して、野放しに出来るほど、私たちは寛容でないの。だから、監視を付けさせてもらうわ」

「あぁ、構わないよ。彼みたいに小型カメラを忍ばせるのかい?」

「いいえ、朔弥に付いていてもらうわ。貴方を殺す方法が見つかるまで、二人でタッグを組んで任務に当たってもらう。それでいいわね?」

「うん、彼といたら退屈しなさそうだ」


俺は必死に首を振った。

そう、それは必死に。ねじ切れるんじゃないかというくらいに。

でも、彼女の笑みは有無を言わさぬ迫力で。


「いいわよね?」

「ハイ………」


俺は日常の平穏がどこかに消え去ることが確定した。

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