表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/26

ラスト

後日談:プロジェクト・リメイク:第二の聖域

 第四基地の通信室は、もはや戦地のそれとは思えないほどに作り変えられていた。

壁には最新の魔導モニターが並び、その中心には、白金色の障壁の中で睦み合うリアネとコウタが映し出されている。


「……よし、第四基地の数字は『安定期』に入ったな。もはや、ここは放っておいても自動で金を生む貯金箱だ」


通信兵のリーダーは、机の上に積み上がった札束を乱暴に掻き分け、一枚の書類を部下に投げ渡した。

そこには、リアネたちの幸せそうな中継映像とは対照的な、血の通わない「次なる商品」の候補が記されている。


「……次はこいつらだ。没落した名門家、アルベルト家の兄妹。兄は清廉潔白な若き騎士、妹は盲目の病弱ときている」


部下がその写真を覗き込み、ニヤリと下卑た笑みを浮かべた。


「いいっすね……。この兄貴が、病気の妹を守るためにどれだけ汚れていくか。視聴者(神様)どもが泣いて喜びそうなネタだ」


兵士たちは、もはや「防衛」という言葉を忘れていた。

彼らの頭にあるのは、第四基地で確立された「絶望のマネタイズ」を、いかに効率よく量産するか。

第二、第三の「聖域」を作り出し、世界中の欲望からさらに金を絞り出すための、組織的なプロデューサーへの変貌だ。

場面は変わり、王都の門。

何も知らない没落兄妹が、ボロボロの馬車に揺られていた。


「……兄様、私たちはこれから、最前線へ行くのですね? そこで功績を挙げれば、また家は再興できるのでしょうか」



「ああ、約束する。……俺が、命に代えてもお前を、家を守ってみせる」


兄の力強い誓い。

だが、その馬車の底には、既に一つ目の「レンズ」が仕込まれていた。

その真っ直ぐな正義感が、いつ折れ、いつ妹への歪な執着へと変わるのか。

通信室のモニター越しに、兵士たちは品定めするようにその光景を眺めている。

リーダーが、d-tubeの新しいチャンネル開設ボタンに指を置いた。

タイトルは――『【新作】没落兄妹の「心中」最前線ライブ:COMING SOON』。


「……さあ、次の神話コンテンツを始めようか。こいつらがいつ自覚するのか、今から楽しみだよ」


画面の向こうでは、リアネがコウタの腕の中で、自分たちが救われたのだと信じて眠っている。

その安らかな眠りさえも、次なる生贄を引き寄せるための「最高の宣伝(プロモーション動画)」に過ぎなかった。

世界は彼らを救わなかった。

そして今、世界は新たな二人を、喰らうために招き寄せている。

(完)


今作は、初めて感想をいただけた思い入れの深い作品となりました。

たった一つの言葉を何度も読み返し、それを心の支えにして、なんとか完結まで辿り着くことができました。本当にありがとうございます(なろうではなく、カクヨムの方なのですが)。

今作の結末をもって、二人は新たな犠牲者を生み出しながらも、二人だけの閉じた世界で生きていくことになります。これが私なりの「タイトル回収」です。

現代は消費社会であり、あらゆるコンテンツが次々と消費されていきます。しかし、皮肉にもその「消費」こそが、二人を外界から守る盾となりました。

ラストは胸糞が悪いと感じられるかもしれませんが、これは二人を守るために必要な儀式として執筆いたしました。もし気分を害された方がいらしたら、申し訳ありません。


また新しい「コウタ」の物語を紡いでいきたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

暗黒の儀式、これにて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ