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「……好きよ。コウタ」


リアネの唇から、ようやく呪縛が解けたように「答え」が零れ落ちた。

だが、その言葉はかつてコウタが捧げた純粋なものとは異なり、重く、どろりとした執着の色に染まっている。


「好きすぎて、あなたを全部食べてしまいたい。あなたを汚して、壊して、私の回復なしでは生きていけなくしたい。一生、私の中に閉じ込めたい……」


リアネは恍惚とした瞳で、驚きに目を見開くコウタを見つめた。

それは愛の告白というより、永遠の監禁を宣言する魔女の呪文だった。

唇は、今や彼を吸い尽くさんばかりに熱を帯びている。


「って言ったら……あなた、どうする?」


彼女から溢れ出したわずかな黒い霧が、コウタの首筋に絡みつく。

リアネは、少年の驚愕がゆっくりと深い受容へ変わっていくのを見届けながら、彼を壊したいという衝動と、愛されたいという渇望の狭間で、激しく胸を波打たせた。


リアネの告白と共に、部屋の空気は一変した。

彼女から溢れ出した黒い霧が、もはや視覚的な威嚇ではなく、実体を持った「捕食者の腕」となって部屋中をのたうち回る。


「あ、……っ!?」


驚くコウタの四肢に、黒い魔力が容赦なく絡みついた。

それは鋼の鎖よりも重く、執拗に彼の肉を締め上げる。

霧は抵抗を許さず、コウタの体を宙に浮かせると、そのままリアネが横たわるベッドの上へと乱暴に引きずり込んだ。


「……はぁ、……はぁ……っ。ごめんなさい、コウタ。もう、隠せないの……」


リアネはベッドに押し倒されたコウタの上に、のしかかるように覆い被さった。

彼女の瞳は濁り、熱に浮かされたように潤んでいる。

指先をコウタの胸元に滑らせると、そこから漏れ出すわずかな黄金の残光が、彼女の霧に触れた瞬間にバチリと弾けて飲み込まれた。


「あなたが……、あなたがあまりに『おいしい』のがいけないのよ……」


彼女の魔力は、コウタという器を完全に認識していた。

自分の「毒」を受け入れ、自分の「飢え」を満たしてくれる唯一の存在。

一度その味を知ってしまったリアネは渇望を堪えられない。


「あなたが欲しい……」


リアネはコウタの首筋に顔を埋め、獲物の鼓動を確かめる獣のように深く息を吸い込んだ。

彼女の魔力がコウタの皮膚に侵入し、再び肉を、骨を、彼女の色で塗りつぶしていく。

制御不能な「熱」が彼女の思考を真っ白に塗りつぶしていった。


「…………私だけのものに……っ」


黒い繭が、二人を包み込むようにベッドを密閉していく。

 その背徳的な繋がりに、リアネの腰がガクガクと小刻みに震え、制御不能な「熱」が彼女の思考を真っ白に塗りつぶしていった。

黒い霧の鎖はコウタの四肢をベッドに縫い付け、逃げ場を完全に奪っている。

リアネはコウタの上に跨り、彼の喉元に顔を寄せた。


「……はぁ、……っ、あ……」


自分の魔力がコウタを侵食し、彼の啜っている。

その残酷な喜びに支配されながら、リアネはふと、自分を見つめるコウタの瞳と視線がぶつかった。

その瞳は、どこまでも澄んでいる。

リアネは、ふっと自嘲気味に口角を上げた。


「……ねえ、コウタ。……これが、私よ」


彼女の声は、悦びに震えながらも、どこか壊れそうなほど脆かった。

自分を聖女だと崇めていた民衆が見れば、吐き気を催して石を投げつけるだろう。

かつての清廉なイメージなど微塵もない、ただ目の前の獲物を貪り、独占しようとする剥き出しの怪物。


「あなたの光を奪って、自由を奪って……こうして、あなたを汚すことでしか『熱』を感じられない……最低の女。……幻滅した?」


リアネの指先が、コウタの頬をなぞる。

わざと冷たく、突き放すような問い。

「嫌いだ」と言ってくれれば、自分はもっと残酷に、何の躊躇もなく彼を壊せる。

「化け物だ」と罵ってくれれば、この胸の奥で疼く、言葉にできない罪悪感から解放される。




「……幻滅、なんて。……するわけないじゃないですか」


コウタは、拘束されたまま微かに微笑んだ。

その瞳には、リアネの期待した拒絶など微塵も存在せず、ただ深く、底の見えない献身だけが揺らめいていた。

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