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リアネは、自分の魔法を見つめている。


「これが、私の本質」


他者を愛したことがない。

他者を慈しんだことがない。

すべて、自分のため。


「私は、人を愛する資格がない」


だから、コウタの「愛」も、私は受け取れない。

あいつがどんなに私を信じても、私はあいつを「道具」としか見られなかった。


「なのに、なんで……」



「なんで、こんなに苦しいの……」


リアネは泣いている。

でも、理由が分からない。

コウタが恋しいのか?

コウタを利用していた罪悪感か?

それとも、自分が「何者でもない」絶望か?

言葉にできない。

ただ、涙が止まらない。


「わからない……私、何を……」


リアネは独房で、壁を見つめている。

そこに、幻覚が浮かぶ。

コウタの笑顔。


「リアネ様は、温かい」


嘘だ。

私は、腐ってる。


「私の魔法で、君を騙してた」



「君の信仰で、私は聖女のふりをしてた」


幻覚のコウタが、消える。

リアネは、自分の手を見る。

黒い霧が、止まらない。


「これが、私」


聖女の法衣は、腐食でボロボロ。

白い肌が、所々覗いている。


「……汚い」


彼女は、自分の腕に触れる。

かつてコウタが、血を吸った腕。


「あいつ、こんな汚いものを……」


ふと、胸が熱くなる。

涙なのか、別の何かなのか。

自分の身体が、何を求めているのか分からない。

リアネは、暗闇の中で、自分の指を見る。

コウタの頬を掴んだ、この指。

コウタの傷を治した、この手のひら。

ふと、無意識に、自分の唇に手を当てる。

(あいつの血の味が、まだ残ってる気がする)


「……っ」


リアネは慌てて手を離す。


「何考えてるの、私……」


しかし、胸の奥がざわつく。

言葉にしたくない。

認めたくない。


「リアネ様」


再び、幻覚のコウタが、リアネの手を取る。

その手は、凍えるような独房の中で、そこだけが異常に熱い。


「君の魔法は、温かい」


リアネは、その幻覚の手を振り払おうとする。

しかし、身体が動かない。

幻覚のコウタが、リアネを抱きしめる。


「離して……」


しかし、声が震えている。

この腕の中が、なんで……こんなに、落ち着くのか。

幻覚が消える。

リアネは、独房の冷たい床に崩れ落ちた。


「……最低」


リアネは、独房の床に座り込み、自分の右手を見つめた。

あいつの頬を掴み、あいつの傷を治した、あの時の感触が、指先に焼き付いて離れない。

無意識に、その手を自分の頬に当てる。

(あいつの体温が、まだ残ってる気がする)

胸が、締め付けられる。

喉の奥が、熱い。


「……やだ」


リアネは、慌てて手を離すが、涙はもう止まらなかった。

理由は、分からない。

でも、確かに苦しくて、逃げ出したくて。


「コウタ……」


その名前を呼んだ瞬間、自分の身体が、何を求めているのか。

言葉にしたくない「何か」が、ドロドロとした生理的な熱となって、喉の奥から込み上げてくる。


「……気持ち悪い」


リアネは、自分の身体を、壊すように強く抱きしめた。


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