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勇者よ戦え! 魔王と、そして税金と。

初投稿です、コメント、下さい!!!!

まずは短編をバンバン上げていきたい、です!








──世界は平和だった。


誰もがそれを当然と思っていた。


しかしある日、オカネマ・キアーゲル王国が王都に響いたのは、驚きのの知らせ。


「魔王が目覚め、世界の終わりが近づいている……!」

瞬く間に広がる噂。王城では緊急会議が開かれ、名だたる騎士や学者たちが慌ただしく動き出した。


魔王、それはかつてこの世界に幾多もの魔獣や厄災をもたらした最悪の存在。そんな魔王は賢者や魔法使い、騎士たちが全力を果たして封印したのだが、その封印が解かれ復活してしまったのだ。


魔王が復活となると、世界が崩壊してしまうかもしれない。そんな事あってはならないという訳で各国で勇者を探し出すこととなったのだが、なんと勇者候補だった人物等が尽く辞退してしまった。


そして有力な勇者候補が残ったオカネマ・キアーゲル王国が最終決定権を持ち、

そして──新たなる勇者の選定が始まった。王国騎士筆頭や若い冒険者など、数々の人物が選定され、結果選ばれたのは......




第150代目勇者、【ジロー・カネーズル】




「ジロー・カネーズル、お前を第150代目勇者に任命する」

王の威厳に満ちた声が広間に響く。


ジロー・カネーズル、冒険者育成学校を首席で卒業し、剣術・魔法・戦略すべてに秀でた逸材。若干20歳ながら、その実力は誰もが認めるところであり、彼が勇者に選ばれるのは至極当然のことだった。


「はっ! ありがたき幸せ!」


ジローは堂々と答える。

胸の内に広がるのは高揚感。


((──ついにこの時が来た。))


勇者になり、魔王を討ち倒し、世界を救う。

その名は歴史に刻まれ、国中の人々から賞賛を受ける。

そしてなにより、




【【【モテる】】】




((王女や貴族の令嬢、美しい冒険者たちからモテまくるッッ!!!!!!!))




((勇者ライフ、最高じゃないかッ!))





そんな輝かしい未来を夢見た──





















この瞬間までは。



















勇者の証明、それは書類の束。




「ジロー様、こちらが勇者登録に必要な書類です」

横から現れた冒険者ギルドの案内人からすっと差し出されたのは……分厚い書類の束。


「ほい?」


ジローは戸惑いながら受け取る。そこには、見たくもないような文字が並んでいた。





【勇者特別課税制度について】

【冒険者ギルド専属契約の誓約書】

【勇者装備支給費一部自己負担について】

【王都防衛費の寄付義務について】

【クエスト成功時の報酬税引き前控除】

【勇者限定所得累進課税について】

【王都郊外への遠征費一部自己負担】

【勇者災害補償制度(ただし適用条件あり)】

【勇者資格更新費用について】

【勇者限定生命保険加入義務について】

【勇者活動支援金(返済義務あり)】......etc





「…………」



ジローは静かにページをめくる。


めくる。


めくる。


めくるたびに、HPが削られていくのを感じた。


「ちょ、ちょっと待てよ……?」

おそるおそる隣にいた案内人に尋ねる。


「えーっと……この【勇者特別課税制度】って?」


「はい、勇者様には国の財政を支える義務がございますので、通常の三倍の税率が適用されます」


「三倍!? なんで!?」


「はい、勇者様は国を代表する存在であり、一般国民の模範となるべき立場です。したがって、特別な税制の適用が求められます」


「いや、国を救うんだからむしろ免除とかないの?」


「はい、それはできかねます。むしろ勇者様の成功報酬には勇者限定所得累進課税が適用されますので、収入が増えるほど課税率も上がります」


「どこまでも搾り取る気か......」


「さらに、遠征に関する経費ですが、王都からの支給は一部のみとなっております。したがって、宿泊費や食事代、ポーション代、魔法道具の修理代などは自己負担でお願いいたします」


「なぁ、一応俺世界救うんだよな……?」


「はい、仰る通りこざいます」


「だったら国が全額負担しろよッ!!」


「それはできかねます。しかし、勇者様が国のために自ら資金を捻出する姿が、国民に勇気を与えるのですよ?」


「勇気ってなんだよ!? 俺の財布が勇気出しすぎて困っちゃうんだが!?」


「なお、勇者資格は一年ごとの更新が必要となります。更新費用は金貨300枚となっており、更新を怠った場合は勇者資格の剥奪および違約金が発生いたします」


「金貨300枚って......日本円で3万円やん。クエスト報酬金貨10枚なのに......キツ」


「ご安心ください。万が一勇者様が戦死された場合、勇者限定生命保険により遺族の方へ補償金が支払われます。ただし、魔王討伐に失敗した場合や意図せずとも国に損害を与えた場合、支払いの対象外となりますのでご了承ください」


「それって意味ある?」


「さらに、勇者様には活動資金として勇者活動支援金が貸し出されます。こちらは無利子ですが、全額返済義務ありとなっております」


「それ、ただの借金じゃないかな...?」


ジローが夢見た勇者ライフは、税金と契約の束縛にまみれた地獄だった。


現実 vs 夢


ジローの想像していた未来、それは勇者になって金と名声を得て、美少女たちに囲まれ、そして魔王を倒して英雄になる事だった。


しかし現実は所得税三倍、遠征費自己負担、クエスト報酬は事前に税引き前控除、勇者資格は更新制(有料)、そして活動資金は借金(返済義務あり)


「勇者って……こんなんだったのか……ッ」


思わず膝をつき、涙が流れそうになる。


隣で微笑む案内人。

王座から見下ろす王。

税金をふんだくれることしか考えていなさそうな貴族たち。


((──俺、どうやって魔王を倒せばいいんだ?))


((魔王より、まずはこの国のシステムをぶっ壊すべきなのでは……?))


「いや、まさかな......」


だが、この時の直感は正しかったのかもしれない。


そう、ジローはまだ知らなかった。


この国の財政は、**勇者の財布**によって成り立っているということを。


──戦え、勇者よ。魔王と、そして税金と。


第150代目勇者ジロー・カネーズルの、理不尽との戦いが今始まる。














最後まで見て頂きありがとうございました!

初投稿なので至らぬ所もあると思いますが、その場合はご指摘願います!


良ければコメント.....下さい

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