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数学は世界を救う、のか?(1)

前勇者の壮行会。そして勇者ミームは笑わない王女と出会う。

「で、女神ミームってどういう存在なんだ?」

俺は、王から与えられただだっぴろい自室で聖女にたずねた。

「私もいまいち理解できていないけど……

転生を司る女神の一柱(ひとはしら)で概念の継承を権能としている女神だと言われているわ。かつて勇者巫女のコトダマ様を呼び出したのも女神ミームだったと言われている」

「コトダマ様!?」

「その時の大魔王はアンデッド、というか幽霊だったの。あまたの幽鬼をあやつってこの世界を壊滅寸前まで追い込んだのだけど、コトダマ様が現れて呪文一つで滅ぼしたと言われているわ」

「そんな凄い呪文があるのか!」

「『地縛霊よ、自爆しなさい!』という呪文で、一時は大いに流行ってこの世の全ての地縛霊は亡ぼされたとか。ただし浮遊霊にはきかず、『カケマクモカシコキ』なんとかかんとか、長い呪文が必要だったみたい」

……あー、なんとなく読めてきました。コトダマの力を借りて何とかする系ね。下手うつとピサの斜塔をピザの斜塔にする系。

「そのコトダマ様は今はどうしてるんだ」

「もう百歳を超えて、今は養老院で過ごしておられるわ。すっかりボケてしまって、往年の力はないそうよ」

……残念。巫女なら女神とのやりとりもできると思ったのだけど。

「でも、コトダマ様は予言したわ。『勇者が現れた時、その者は自らの心に問うことで自らを知る』と」

「あー、そういう系ね。『他人に答えを求めるな、自心で悟れ』とかなんとか」

「あ、そろそろ勇者……もとい先代の勇者が旅に出るところね。魔道士ちゃんもついて行くから、最後に顔を見ておいた方がいいんじゃない?」

「魔道士ちゃんが! てか、聖女さん、なんでそんなことを言うの」

「私、他人の心がわかるんです」

聖女さんは、にたあと笑った。


というわけで、勇者(と実はその恋人だった魔道士ちゃん)の壮行会の会場に出向くことになった。

いささかしょげはしたが、気弱ちゃんがアルファオスに惹かれるのは世の習い。

仕方ないさー。


壮行会は盛況だった。

というか、ほぼ主賓は俺。大魔王の退治譚を何度もせがまれる始末。

……ごめん、前勇者。


そして、そんな中で思いっ切り目立ったのが、宝石をちりばめたドレス姿の一人の女性だった。

侍女たちに囲まれているところを見ると、王族の一人らしい。

なぜ目立ったのかというと、全く楽しそうじゃなかったからだ。

楽士たちは陽気な音楽をかなで、色鮮やかな果物にあまたの肉料理。

中庭では芸人がアクロバットを見せたり火を噴いたり刀を呑み込んだりしている。

強めの酒こそなかったが、飲み物はバラエティーに富んでいる。

祝宴としては申し分ない完成度だ。

「第一王女よ」

聖女がささやく。

「笑わない王女として知られている方なの。今までいろんな人が笑わそうとしたけど、一切表情がかわらないの」

王女は、侍女が持ってきた皿を適当につついては、酒で胃袋に流し込んでいる感じだ。

王女と目が合った。

「ほら、挨拶してきなさいよ」

聖女が背中を押す。

ちなみに、聖女さんは俺よりもかなり年上で、美形のおば……

いえ、さすがにそれは言うまい。相手は心が読めるのだ。

「いいわよ、別に。私は別に自分に幻想は抱いてないから」

……ちょっと悔しそうだ。

そのうちに王女の方から近づいてきた。

「勇者ミームよ、このたびの働き、まことに結構でした。第一王女として、感謝をいたします」

「ありがたき幸せ。で、姫のお名前は……」

何気なく発したその一言に、場の空気が凍り付いた。



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