第六話 映画館
「てか今更だけど、一緒に来るの俺でよかったのか? あのギャル二人じゃなくて」
気が強そうな金髪ショートの褐色ギャルと、地雷系みたいなホワイトロングの白ギャル。
この二人と恋伊瑞は仲良くしている。
ちなみに、どちらも可愛い。そして当たり前だが話したことはない。
「チケット二枚しか無いのに、杏奈と霞を誘えるわけないでしょ。どっちかだけとかあり得ないし」
「そりゃそうか」
「友達いない相馬には分からないわよね」
「そ、そんなことないわい!」
ニヤニヤと心底楽しそうに刺してくる。
俺にだって友達くらいちゃんといるのに。
前の席の斉藤とか。たまに話すくらいでお昼も一緒に食べたことないけど。
あとはそうだな、うん。特にいない。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
映画館の会場内には、人気映画ということもあってか既に結構な人が入っていた。このペースならほぼ満席になるだろう。
自分の番号席に座ると、隣に恋伊瑞も腰を下ろす。
まぁそうだよな。デートのために用意したチケットだし、隣同士だよな。
変に意識しないよう、本編の前に流れているCMをボーと眺めることにした。
ちなみに俺は結構このCM時間が好きだったりする。
「飲み物置かないの?」
映画館ではお静かにをしっかり守るタイプらしい恋伊瑞は、まだ館内が明るいのにも関わらず小声で囁いてきた。
俺の顔を覗き込むように前屈みになりながら、上目遣いで見つめてくるのは反則だと思います……。
そんな事をされたらついとっさに、女の子が小声で話す時って可愛いなぁとか、恋伊瑞の足細いなぁとか考えてしまう。
……いや別に生足を見つめてた訳じゃないけどね?
緊張で手に持ったままだったドリンクをドリンクホルダーに入れる。
「やっぱりカップルが多いわね……。わ、見て相馬! 小学生くらいの子達がポップコーンをあーんしてる!」
「小学生で彼女持ちとか生意気な……」
最近の小学生ってあれが普通なの?
どんだけませてるんだよ。
「俺の百八妄想の一つを小学生に見せられるとか屈辱だ……」
「それ、鐘鳴ったことあるの?」
「まだ大晦日がきてないだけだから……」
「長い一年になりそうね……」
「……」
「……」
なにここ、死の海域なの?
いや、会話を弾ませられない俺も悪いんだけどさ。
周りでは『楽しみ〜』だとか『手繋いでもいい?』だとかイチャコラしているのに、俺たち二人の席だけ空気が冷たい。
おい待て。さっきの小学生カップルがキスしてやがる。せめて映画見終わった後にしろよ。
まさか人生で小学生相手に嫉妬を通り越して殺意を覚える日が来るとは思わなかった。
最低な高校生でごめんなさい。
「初めて人を殴りたいと思ったわ」
最低な高校生が隣にもいたみたいです。
お読み頂きありがとうございます。
星での評価やブックマークをして頂けると執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。