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第四十八話 会議には食べ物


「じゃあ話を聞こうか」


 テーブルには辛味チキンに小エビのサラダ、そしてポテトと会話のつまみには十分な料理が並ぶ。

 それぞれがドリンクで喉を潤し、今日の本題に焦点を当てる。


「だから! その、斎藤のこと好きになったんだって!」 


 そう宣言した杏奈さんは、私こそが乙女だと言わんばかりの表情であった。

 顔を真っ赤に染め、この気持ちは本物だと訴えかけられているようである。


 うん、なるほどなるほど。


「それを、なんで俺に?」


 それは大切な気持ちだし、とても素晴らしい感情だとは思うが、それを聞いた俺の感想としては「うん、そうなんだ」といった感じである。

 茶化す気にもなれないし、本気なのが伝わるからこそ適当に背中を押すこともしたくない。

 本気の相手に対して他者が出来ることなんて、心の中で応援することくらいなのだから。


「ほら、相馬君と斎藤君って仲いいでしょ?」

「え? あ、まぁ多分?」

「なんで疑問形なのよあんた……」


 いやほら、俺が仲いいって思ってても相手が何て思ってるのか分かんないしさ。

 小学校の時ある男子が「パーティーやるからみんな招待するね!」とお手製の招待状を教室で配っていたのに俺だけ貰えなかったあの日、俺とあいつは友達じゃなかったんだと知った。

 俺は友達だと思ってたんだけどなぁ。

 まぁ斎藤だったら友達だと言ってくれると思うけどさ。


「てか恋伊瑞たちは知ってたのか? 杏奈さんが斎藤に好意があるって」

「うん。って言っても最近だけどね」


 斎藤羨ましいなクソ。

 男子たるもの友達だとしても、そいつが女子にモテだしたら嬉しい反面、嫉妬の嵐が起こるものだ。


「てかわたしたちも聞いてないんだけどさー、杏奈はいつから好きになったの? ……相馬君、はいこれ」

「お、ありがとう。あれエビ好きなんじゃないの? 食べなよ。あとこれチキン」

「……そういうことはさらっと出来るんだね。うん、ありがと」


 改めてエビを少なくしたサラダを貰いながら、全員にチキンを配る。


「旅行の時に……」

「まぁそうよね。杏奈と斎藤君の接点そこからだし」


 恋伊瑞が相槌を打つと、杏奈さんは思い出すように語りだした。


「うん。一緒に買い出し行った時とか絶対に重いほう持ってくれたり、会話が途切れないように話振ってくれたりさ。優しい奴だなーって思ってたら、いつのまにか……!」

「あんた意外とチョロいわね……」

「処女に言われたくない」

「ちょっと待ちなさいよ! またそれ言う!?」


 仲良いなー。

 まぁ女子の理想の男性第一位は優しい男らしいし、斎藤はモテるだろう。まず俺に優しい時点で優男すぎるからな。


「あのさ、それで俺が呼ばれた理由はなんなんでしょうか……?」


 ワーキャー言い合っている二人に対して言うと、杏奈さんはゴホンとわざとらしく咳をする。


「お前さ、斎藤の好きなものとか知らない?」

「あー、そういう」

「そうそう。相馬から斎藤君のこと聞きたいって話になったのよ」


 情報を集めて戦略を立てようということか。

 恋愛とは情報戦。相手のことを知っていたほうが有利になるのは言わずもがなだろう。

 その点で言えば恋伊瑞の案は間違っていない。そう、唯一間違えたとするのならば。


「知らない」

「「え?」」

「だから、あんまり知ってることはないよ」


 そう、俺は斎藤のことを全然知らないのです。


「旅行は一緒に行ったけど、教室では少し話す程度だしな」

「期待した私が馬鹿だったわね……。考えてみれば相馬に仲良しの人なんていないんだった……」


 ねぇそれ悪口だよね? 意図しない口撃だよね?


「なんか少しでもないの?」

「って言われてもなぁ。ラーメンは嫌いじゃなさそうだったくらいしか」

「ラーメンか……、なるほど」


 頷きながらスマホに打ち込む杏奈さん。恋する乙女からすれば、どんな情報でも価値があるみたいだ。


「でもあれだねー。もっと近づける何かが欲しいよねやっぱり」


 サラダを食べながら、白波さんはゆったりとした口調でそう言った。


「それはそうね。一緒にいる時間が長いほど好感度って上がっていくらしいし」

「小和の実体験?」

「ち、違うわよ霞! ネットで見たの!」

「ネットねぇ」


 さすが恋伊瑞。恋愛に憧れてるとやっちゃうよな、多分俺も同じサイト見てるぞ。


「そして近々うってつけのがあるじゃない」

「あれだな恋伊瑞」

「そう、あれよ相馬」


 頭にハテナを浮かべている杏奈さんに、何故か面白くなさそうな白波さんを横目に。

 俺と恋伊瑞の言葉はハモった。


「「文化祭!」」


お読み頂きありがとうございます。


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