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第四十話 気遣い


「先にほらこれ」

「モバジュウ?」

「スマホのバッテリーなくなったって言ってたし。さすがに不便だろ?」

「……ありがと」


 嬉しそうにする恋伊瑞。お前も女子高生だしな、スマホが復活するのは嬉しかろう。

 そんな会話をしながらコインロッカーに大量の荷物を預けた俺たちは、発券機でチケットを購入する。

 てか今更だけど、お小遣いであの量の買い物が出来て遊園地にも来れるってどんだけだよ。


「てか東京ドームシティとか久しぶりすぎ!」

「俺は初めて来たな」

「泉も久しぶりに来たんですよ! 前に家族で来て以来ですねー」

「ちょっと待ってくれ。なんか今衝撃の事実が聞こえたんだけど……」


 そんな俺の言葉は無視され、女子二人はお喋りに夢中であった。

 恋伊瑞も泉も人当たりは良いしな。仲良くなるのは当然か。

 それなのに何故、椎名さんとはあんなに馬が合わないのだろうか。


「私ちょっとお手洗い行ってくるわね」


 そのまま人の波をかきわけてトイレへと向かった恋伊瑞。

 

「お兄ちゃん。分かってると思うけど、恋伊瑞さんが帰って来たら『可愛い』って言うんだからね?」

「いやなんでだよ」


 意味が分からず聞き返すと、横腹にチョップを食らった。普通に痛いから止めてほしい。


「女の子がトイレに行ったら絶対に化粧直しをしてるからだよ!」

「普通にトイレしてるだけかもしれないだろ」

「デリカシーがないよお兄ちゃん! トイレするためだけにトイレに行く女子なんていないよ!」

「いないことはないだろ……」

「でも姉ちゃん化粧ポーチ持って行きましたけどね。それ以外の荷物俺に預けてるし」


 大和は手に持った小さなバックを掲げる。それは確かに恋伊瑞のバックだった。

 例えそうだとしてもだ。

 恋伊瑞が俺相手に見てくれを気にするなんてのは想像が出来ない。

 オシャレや化粧は他人からの視線のためであり、それは俺に向けてではないのだから。


「おまたせー」


 帰ってきた恋伊瑞は確かに奇麗になっていた。

 泉に変なこと言われたから変に意識してしまうが、気にしてはダメだと心に誓う。

 しかし妹はそんな俺を許してはくれないらしい。


「全然ですよー。ね、お兄ちゃん!」


 『お兄ちゃん』を無駄に強調して言ってくる。

 分かってるよ泉。その思いを伝えるために笑いかけると、泉も笑顔を返してくれる。


「じゃあアトラクション行くか」

「はぁ、ヘタレだなぁホントに……」


 うるさい。

 そんな俺たち兄妹のやり取りなどつゆ知らず、恋伊瑞は地図を見ながら。


「何から行く?」

「じゃあ年下組の行きたいやつからにするか」

「意外とお兄ちゃんしてるのねあんた」

「意外とってなんだよ」

「別にー。じゃあ泉ちゃんと大和、何から行きたい?」


 そう聞く恋伊瑞に、大和は顔を背けると。


「なんでもいい」

「可愛くないわね大和は」


 思春期だなー。

 俺もあったぞ、そういう時期。むしろ大和は姉と出かけているだけ良い子だと思うしな。


「あ、じゃあ泉が決めてもいいですか? やっぱり最初はこれがいいです!」


 そんな態度の彼とは裏腹に、泉は満面の笑みで一つのアトラクションを指さした。

 遊園地の花形、ジョットコースターだ。

 

「泉ちゃん可愛いわねやっぱり。じゃあそれにしましょ! 相馬もいいわよね?」

「待ち時間も意外と少なそうだし、いいと思うぞ」

「大和君もそれでいい?」


 泉がそう聞くと。


「も、もちろん! 俺もそれ以外考えられなかったし!」

「あんたさっき何でもいいって言ってたじゃない……」


 思春期だなー。

お読み頂きありがとうございます。


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