第2話
第2話は全て神様とのやりとりですので、兵器の登場を期待していた方、ごめんなさい。m(_ _)m
ちょっと人間臭い神様を描きたかったので、温かい目でみてください。
第2話
「死んだことになるのう」
やっぱりか。
「あのクソ野郎のせいで死ぬなんて!・・でも何で将軍は俺なんかの命を狙ったんだろう?」
恨まれることはしていないハズだけど・・・?
「お主が死ぬ羽目になったのはのう、異世界の人間が絡んでいるからじゃよ」
「異世界の人間?」
神と名乗った老人が言うには、
俺が破壊した施設は旧ソ連の秘密核施設などではなく、超次元通路を発生させる召喚転生魔法陣を隠すための施設で、超次元通路を使えばどんなものでも瞬間移動させたりすることが可能だという。
しかし、超次元通路は神様にとって大変不都合な代物であり、今の地球人の手に負えない技術であるため放置すると大変危険な状況を招きかねない恐れがある。
そのため、神様自身が特殊な波動を使って、地球のアメリカとロシアの首脳陣にカルト集団とテロリストが武装蜂起して占拠したと偽りの情報を流して破壊させるようしむけたということだ(普通は干渉してはならない決りなのだそうだ)
だが、この秘密施設を作ったカスター中将(実際には魔法で作られた人形らしい)が事前に察知し、超次元通路を使って最新兵器や実戦配備前の兵器を強奪して配置していたそうだ。
(どうりで作戦がことごとく失敗する訳だ)
ちなみに配備した最新兵器は誰が動かしていたのかというと、驚いたことにカスター自身が自分の複製を多数作って動かしていたそうだ。
だが、複製した分身は超次元通路から直接エネルギーを得ていたため、通路を中心とした半径1km圏内から外に出ることは出来なかったらしい。
更にこの超次元通路は、俺や神様がいるこの場所や別の異次元に行くことも可能なんだそうだが、これには制限があって俗にいう魂か、カスターのような魔法人形だけなんだそうだ(詳しくは言えないらしい)
「カスターは超次元通路を使って何をするつもりだったんですか?」
「あやつは転生の素質のある魂を持った人間をおびき寄せて殺してから、超次元通路で別の異世界に魂を送るつもりだったんじゃよ」
「異世界に魂を送って何をするつもりだったんですか?」
「そこまでは分からんが、よからぬことには違いないじゃろうな」
「なんとまあ・・・でも超次元通路を破壊したからもう魂を送ることは出来ないですよね?」
「あれ?じゃなんで俺が殺される羽目になったんだ?」
「超次元通路は目に見えないエネルギーの塊みたいな物じゃから、魔法陣を破壊してエネルギーが完全に消えるまで十数分かかるのじゃ」
「その間は通路としての機能は生きておるから、対象となる人間を超次元通路の傍で殺してしまえば、あとは自動的に魂が吸い込まれるんじゃよ」
「え、それって・・・」
「お主がその対象だったんじゃよ」
マジかよ・・・
だからあんな無謀な攻撃をやらされたのか。
「なんとかお主の命を助けたかったのじゃが、すまなかったのう」
神様が静かに頭を下げた。
・・・認めたくなかったけど、やっぱり俺は死んだんだな。
「そういえば、カスターはどうなったんですか?」
「あやつは、お主を殺した直後に自害したようじゃ」
「・・そうですか」
「お主には気の毒な事をしてしまったが、どうじゃろう、異世界で新たな人生を過ごすというのは?」
「他の世界で人生をやり直すんですか?」
「そうじゃ」
「もちろん、生前のお主の能力と記憶を引き継いだままで、若くて高身長な二枚目の身体を用意してやるから安心してよいぞ」
二枚目って・・・
「エルドラドと呼ばれる惑星じゃが、地球と環境が似ておるから直ぐに慣れるじゃろう」
「地球で大気汚染や温暖化などと呼ばれるような、愚かな人間が引き起こす災害とは無縁の世界じゃし、なにより魔法が使える世界じゃからお主にとっても悪くない話じゃとおもうのじゃがな」
地球の温暖化騒ぎには正直うんざりしてたし、魔法にもちょっと興味があるから、確かに悪い話じゃなさそうだな。
「生活水準は地球で言うところの中世の欧州のような感じじゃが、戦を仕掛けてもお主が武力で負けることはまず無いじゃろう」
ん?どういう意味だ?
「じゃが、無意味な大量虐殺は避けてほしいのう」
???
「まあ、相手が襲ってきたら殲滅しても構わんがのう」
何かとんでもないこと言ってないか?
「大量虐殺なんてしませんよ」
「そんなことしたら魔王呼ばわりされちゃうじゃないですか」
「ほっほっほっ、まあお主ならそう言うと思ったわい」
なんか揶揄われてないか?
「ところでのう、お主に頼みたいことがあるのじゃ」
「頼み?」
「うむ、あの魔法人形を送り込んだ首謀者を召喚転生魔方陣もろとも葬ってほしいのじゃ」
「カスターを送った奴はエルドラドにいるんですか?だったら、地球の首脳たちを情報操作して動かしたように、エルドラドの偉い人たちにも同じことをすれば」
「すでに実施しておるが、変化が無いのじゃよ」
「変化が無い?」
「お主の住んでおった国や、魔法陣のあった国に情報収集を生業とした組織があったじゃろう?その者たちに情報を流すことで魔法陣と術者の抹消までこぎつけることができたのじゃ」
アメリカだとCIAとかNSA、ロシアだとSVRやGRUあたりがそういった組織のはずだけど、確かにそういった連中にテロ絡みと核関連の情報を流せば大統領まで伝わるよな。
「エルドラドにも国ごとに同じような組織があるのじゃが、何度情報を流しても一向に動きが無いのじゃよ」
「誰かが情報を握りつぶしているんですかね?」
「恐らくそうじゃろうが、握りつぶしているのが末端の人間なのか、それとも中枢の人間か皆目見当もつかぬのじゃ」
「かと言って儂がこれ以上干渉することはできんもんじゃから、ほとほと困り果てておったのじゃ」
「事情は分かりましたが、どうしてその召喚魔法にこだわるんです?」
「それはのう、魔法を発動するには、魔法の源となる魔素と呼ばれる物質を含んだ魔石という鉱石を利用して発動するのじゃが、召喚転生魔法だけは魔石以外の魔素を利用しているのじゃよ」
「魔石以外の魔素?」
「人間の魔素じゃよ」
「人間の魔素?」
「簡単に言えば人間を殺して魔素だけ体内から搾り取るんじゃよ」
!!
「もともと召喚転生魔法は、他の魔法と同じように魔石の魔素を利用して使われておったのじゃが、自然の魔石は魔素が少ないものが多くてのう、魔法を発動するにはどうしても莫大な数の魔石が必要になるのじゃ」
「そこで魔石以外の魔素、即ち魔物の魔素を利用しようと考えたようじゃが、魔物の魔素も魔石と大して違いは無くてのう」
「もっとも、膨大な魔素を持った魔物も当然おるが、そいつらは桁違いに強くて数が少ないもんじゃから、結局魔石を使うのと大して変わらなかったのじゃ」
「じゃが、魔導士の一人が人間一人の持つ魔素の量が、魔石の何倍もあることを発見してしまってのう、それから人間の魔素を使うようになってしもうたんじゃ」
「それでも最初の内は、死刑囚の様な重罪を犯した囚人を利用しておったようなんじゃが、死刑囚を使い切ると他の囚人を生贄にしだしてのう、瞬く間に一回の魔法に100人の生贄を使うようになってしまい、それが当たり前になってしまったのじゃ」
なんでそんなに増えるんだ?
「いくら囚人とはいえ、一度に100人もの人間を殺してしまうのはいかがなものかと思ってのう、“生贄を控えるように”と神託を出したのじゃが、どこの馬鹿垂れが解釈したのか“囚人の生贄が駄目なら処女を生贄にすれば良い”などとふざけたことを抜かしおってのう」
どう解釈すればそんな発想になるんだ?そいつ阿保なのか?
「流石に見過ごせなくなったもんじゃから、各国の国王に召喚転生魔法は禁忌とし、破れば神罰を下すと警告を告げたのじゃが、ほとんどの国が無視しおってのう」
神様の警告を無視するとは大した度胸だな、いや、イカレテルのか?
「とうとう儂の堪忍袋の緒が切れてのう、国王どもの住む城に直接神罰を下して崩壊させたんじゃ」
当然の報いだな。
「その後は、召喚転生魔法が使われることは無くなったのじゃが、儂が直接手を下してしまったせいかのう、数十年に渡ってあちこちで干ばつや洪水といった天変地異が起こってしもうてな」
地球でも干ばつや洪水なんかの災害が度々起こっていたけど、誰かが神様を怒らせたのか?
「それ以来、儂が直接干渉することが出来なくなってしまったのじゃよ」
神様が干渉できない決りになっているのはそういうことか。
「あれ?じゃあカスターはどうやって超次元通路を作ったんだ?」
「地球の科学じゃ作れないんだし、魔素なんか地球にあるとは思えないし」
「言ったじゃろう、あやつは魔法で作られた人形だと」
「・・もしかして、自分の身体に魔素を貯め込んでたんですか?」
「そういうことじゃ」
バッテリーみたいな奴だな
「あれ?あいつが最新兵器を強奪したり配置したりするのに超次元通路を使ったって言ってましたけど、一体何回使ったんですか?」
「恐らく10回は使用しているじゃろうな」
千人分、いやそれ以上の魂が使われたのか?
大量殺人じゃねえか!
こんなの、いくら異世界でも個人でやるなんて無理があるよな。
まさか国ぐるみで・・・?
それじゃ、戦争を吹っ掛けられたら殲滅しても構わないというのは冗談じゃなく本気だってことかよ!
国の最高権力者が絡んでいるとしたら、その国の軍隊と対峙することになるわけだから納得できるよな。
だけど・・・
「事情はよく分かりましたけど、今の俺には到底無理な話ですよ」
魂だけになった俺がいきなり右も左も分からない異世界で、神様の逆鱗に触れたくそったれ共を探し出してブチ殺してこいって言われてもな。
「もちろん今のお主には無理じゃろう」
そう言うと神様の手が光り出した。
「お主にはこの能力を授けよう」
頭の中に次々と情報が流れ込んでくる。
「これはいったい?」
「それと、お主には案内役を授けておくとしよう」
「案内役?」
「はじめましてマスター、ナビとお呼びください」
青い菱形の小さなクリスタルのような物が空中に出現し、女性の声で話しかけてきた。
「あとはその者に聞いとくれ」
そういうと神様は光に包まれて消えていった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
話が進むにつれて色んな兵器を登場させたいと思います。
少しでも楽しんでいただけましたら、評価やブクマで教えていただきたいです。