88 この世が求める事とは。
お昼ご飯の後、お昼寝。
それから続き、午後の講習へ。
『そろそろ人種も含めての、生態について、ですかね』
獣や魔獣程、思惑とは程遠く、本能や直感を優先させ。
根が曲がり難く、真っ直ぐに育つ。
そして人種の祖である悪魔や精霊に近ければ近い程、容易く曲がってしまう。
思惑や策略を巡らし、本能を簡単に捻じ曲げ。
思考、思想は簡単に変化し、信念も直ぐに変化する。
そうして本能をとことん無視し、自ら法を作り縛られ、自らの策に苦しむ。
つまり人種は。
「劣等種」
『昔はそう呼び、そう呼ばれていたそうですけど』
「獣の様な強さも魔獣の様な素直さも無い、悪魔の様な賢さも無く、精霊の様な分かち合う寛容さも無い」
『ネネ様』
「来訪者こそ、最も劣等種」
だからこそ、ユニコーンや何かになりたがった。
こんな劣等種は嫌だ、愚かな生き物は嫌だ。
分かる。
良く分かる。
神にしても悪魔にしても、同情しているだろう。
何て愚かで可哀想な生き物なのだろう、と。
《ネネ様も人種も、まだまだ赤子です》
「なら、甘え頼れば良い」
《はい、その通り》
それでも、改めて最下層種だと言う事実は変わらない。
人種の進むべき道は、独り立ち。
ほら、もう安心して下さい、と。
既に東の国はそうなっている。
けれど、ココは。
いや、各国で違う可能性は有る。
神は其々に居る筈なのだから。
「ノーク君、この国の目指している位置は何処ですか」
『神々との共存です。来て頂くには、まだまだご心配を掛けてしまう点が多く、至るには未だに道は遠いですが。諦める気は無いです、それが目指すべき位置ですから』
「何百年では済まないかと」
『適切な時期と速度が有ります、それらを常に見極め続け、実行するだけですから』
「だけて、欠けたら大変では」
『予備の予備も居ます、それでもダメなら運命、そうした流れなんですよ』
「いや」
『既に見本が有る、その流れに沿い、寧ろ運良く事が運び過ぎてすらいる。いつか、何処かで止まってしまうかも知れない、逆流が起きるかも知れない。そう思っているんです』
「殿下もですか」
《うん、それに逆流が必ずしも悪しき事とは限らない》
『はい、歴史は繰り返す、時に巻き戻ってしまう事も有る』
《その波に逆らうかどうかは、その時代によって変わる》
『押し流されるべき時が有れば、選ぶしか無い』
「身内の犠牲が有っても」
『火の粉は払いますよ、伝える者が居なくては無意味ですから』
《けれど、選ぶのは民、政を間違えれば国が滅ぶ》
「でも被害が」
『嫌なら学べば良いんですよ、破滅が嫌なら、民の全てが賢くなるしか無い』
《僕らの国は、そこまでは引き上げられた、けれど》
「虹の国は滅びかかった」
『王が選び、民が選んだ事、そのまま滅ぼす筈だったそうです』
《滅びもまた、歴史だからね》
「けれど地獄が口を出した」
《王族を途絶えさせては、もっと立ち直るには時間が掛かってしまう》
『勿体無い、他の道を探れば良い、少なくとも虹の国は滅んだも同義』
「何で、そんなに」
『好きなんだそうです、とても愛おしい』
《例え愚かでも、愛しい子供達、らしい》
「悪魔が、安心して手放せる世界」
《それに精霊も》
『不死は悲しみです、忘れられぬ事は不幸です』
「はぁ」
《手伝って欲しい、世の為、悪魔の為に》
「また、途方も無い事を」
《ココまで来たなら、ネネにも出来るよ》
『雨粒も集まれば川になり、砂も積み上げれば山になります』
「コレは、誰にも簡単には叶えられないですよ」
『だからこそ、来訪者様が居るのだと思います』
《悪しき者も、善き者もね》
「休憩で」
《はい、休みましょう》
ネネは逃げ場にと、俺を選んでくれた。
「熱が出そうです」
『あぁ、至ったと聞いた』
「志が高過ぎて目眩がする」
『結婚は余暇で余興、ただ俺達が正しさを目指すだけでは、心苦しさを与えるばかりになる』
「けれど、優しさに甘えるばかりでもいけない。身を律し、正しく歩み続けなければならい」
『あぁ、人種全て』
「そら嫌にもなりますよ、自分の弱さを良く知り、誰より理解しているんですから」
『何者にも欠けが有る、だが欠点では無い、良いも悪いも無い筈だ』
「分かりますけども」
『ネネは完璧主義らしい』
「ぅう、違うのに」
『俺が言えた義理では無いが、少しは自身を許した方が良い』
「アナタが言いますか」
『あぁ、面目ない』
「他人に、許して貰わないといけないのかも知れません」
『俺もネネに許して欲しい』
「はぁ」
『何を許せば良い』
「至るのに時間が掛かりました」
『いや、早い方なんだが』
「いや、他国の方だそうですが、もうお姫様を娶ったと」
『至れているかは別だ』
「な、なんですと」
『誰しも、向き不向きが有る』
「は、え」
『すまない』
「いや、責めはしませんけども」
『ネネには自身に余裕を持つ事を、許して欲しい、何も焦る必要は無い』
「無茶を」
『だが必要な事だ』
「はぁ」
『すまない、気晴らしに来た筈が』
「子供を寝かし付ける様に、背でも叩いて下さい」
『分かった』
ネネ様は、気付いたなら、見て見ぬふりは出来無い。
真面目で誠実故に、どうしても考えてしまう。
何が出来るのか、どうすれば良いのか。
「はぁ」
《知っている者の責務を負うだけ、で神々が喜ぶとお思いですか?》
「ぃぃぇ」
《では、神や悪魔の願いは、何でしょう》
「人種の幸福」
《私も、そう思います》
「はぁ」
《気晴らしをなさいませ、お切り替え下さい》
「お勧めは何でしょう」
《勿論、我慢大会ですね》
最早、物理的に切り替えさせられた、と言っても過言では無いだろう。
実質、貞操を奪われたも同然だ。
「ぅう」
《おはようネネ》
「何て事を」
《大丈夫、まだネネは処女だよ?》
「もう、その定義に入るかすら怪しい程」
《コレでも王侯貴族の線引の範囲内、だよ?》
「ガバい」
《離別するまで、合わない者と苦痛を伴いながら致し続けるか、お互いに合う様に調整し合うか。どっちが良いと思う?》
「そら、調整の方が良いとは思いますが」
《庶民はもっとだよ、どっちに合わせる?》
「もっとって」
《妊娠したら結婚》
「ぅう」
《それとも逆でする?それなら問題無いし》
「孕むのも孕ませるのも暫くは嫌なんですが」
《だからしてないでしょ?》
「あんなの、したも同然では」
《けどしてないし》
「まさか」
《無いよ、そんなに上手?》
「ぅう」
《はいはい、よしよし、良い子だねネネ》
「悩みに悩みをぶつけないで下さい」
《切り替えのつもりだったんだけど、そんなに嫌だった?》
「ぅう」
《ごめんね、つい可愛くて》
性依存になる者の気持ちが少し分かってしまったのが、悔しいと言うか何と言うか。
兎に角、恐ろしい。
前のアレは何だったんだ。
お遊びも同然。
全然、全く違う何か。
アイツは下手。
クソ下手だった。
で、ルーイ氏が異常に上手いに違い無い。
だとしても落差が凄過ぎる。
何なんだ一体。
「平穏が欲しい」
《なら言う事を聞いて、コレは悪い事じゃないし、耽る事も悪じゃない。それともネネは万人に、追い詰められて欲しい?》
「そう、匙加減が」
《少しは僕らに任せて、もう少し、ココを楽しんで》
この道を生きる場所に生まれて、道に逸れずに生き続けてる。
それは本当に尊敬してます。
「何で、受け入れちゃいますか」
『明日死ぬかも知れない、なら些末な事を気にする道理が無い』
「些末ですか」
『ネネに触れられるなら、少しでも喜ばせられるなら、殆どの事は些末な事だ』
レオンハルト氏も、何故か上手い。
「何で、そんなに上手なんですか」
『ネネ、どうか心を静め、落ち着いて聞いて欲しい』
「まさか」
『君の以前の相手は、あまりに情が無さ過ぎる』
「そっち」
『すまない、言葉が選べなかった』
下手で情も無い馬鹿。
いや、でも痕跡は無い。
それこそ証拠も無い。
自分さえしらを切れば良い。
と言うか、それを推奨されてすらいる。
けれど、良いんだろうか。
無かった事にして、本当に良いんだろうか。
「何の事か、全然、分かりません」
『そうだな、ネネは処女なのだから』
嬉しそうに言われて、また流されてしまうワケだが。
良いのか。
本当に良いのか。
もし逆なら。
まぁ、その方が良いのか。
「次の予習をしたいです」
ネネの心の中から、やっと毒を隔離出来た。
解毒には、まだまだ掛かるけれど。
少なくとも、もう毒は広がらない。
《次となると、紫禁城かな?》
「はい、食べ物に期待しています、それに陰陽五行も」
《明日にでもノークにお願いしよう》
「今日でお願いします、勤勉舐めんな」
ネネを抑え込むのは、2人がかりでも、2日が限界らしい。
《なら、夜はレオンハルトだよ》
「まぁ、切り替えも必要ですし、平等は大事ですし」
《嫌なら我慢させても良いんだよ、ネネの為ならレオンハルトは我慢出来るんだし》
ネネの中にも性癖が目覚め始めてる。
僕が食べられたい様に、ネネは我慢を喜ぶ。
「交渉はしてみます」
《分かった、直ぐに用意させるよ》
レオンハルトの喜びは、我儘を言われる事。
あんなにも以前は嫌がっていたのに、寧ろ今は求めてすら居る。
僕らは上手く循環している。
僕がイジメ、ネネがレオンハルトに泣き付く、そしてレオンハルトは僕に言う。
思った通り。
僕らは3人で1つだ。




