86 慰労会。
流石に良い年の大人が、お誕生日会、は厳しいので。
ノーク君にお願いし、慰労会を開催して頂いた。
「えー、今までご迷惑をお掛けしご苦労も多かった事と思います。未だに未熟者ですので、コレからもご指導ご鞭撻の程、どうか宜しくお願い致します。乾杯」
「『《乾杯》』」
政治家の様な乾杯の挨拶しか浮かばなかったんです、仕方無い。
慰労会なんてした事が無いんだし。
「いやー、良いんすかね、俺マジで少ししか護衛して無かったんすけど」
「こんなに気兼ね無く護衛を頼めるのはケントさん位です、お手隙になりましたら、また宜しくお願い致します」
「うっす」
「あ、気に入った料理は持ち帰って頂いても大丈夫ですよ、奥様のお口に合うか分かりませんが」
「やった、あざーっす」
正直、早く復帰して欲しい。
けど、最も大変な時期を奥さんと一緒に乗り越えて貰う事が最優先。
目指せ超絶ホワイトな職場。
まぁ、就職前にこうなったので社会人経験は無いんですが。
配慮してこそ尽くして貰えると言うもの。
「心ばかりですが、どうぞ、出来るなら中身をご確認下さい」
『はい、頂きます、ありがとうございます』
《ありがとうございます》
『わぁ、可愛いエプロン、ありがとうございます』
《ありがとうございます、ふふふ、お揃いだ》
親子侍女ズには、4人お揃いのエプロン。
仲が良いそうなので、コレからも連携を取って頂けると助かる。
「素材提供です、お受け取り下さい」
《俺には勿体無い気がするんですが》
「粉を掛けないで下さったお礼も兼ねています、どうぞお受け取りを」
カイル氏には、大小様々な千代紙と東の国の折り図。
玉響ちゃんに手配して貰った。
《ありがとうございます》
そしてお次は。
「つまらない物ですが」
《いえいえ、ご丁寧にありがとうございます、頂きます》
玉響ちゃんには、民族衣装をセットで。
使用人用は既に有るけれど、コレは別。
「ふふふ」
《もう、こんなに、ありがとうございます》
それから魔法の先生、ココと帝国の礼儀作法の先生へ、東の国の硝子の文鎮。
ココも連携して頂きたい思いも有っての事、何とか喜んでは頂けた。
嵩張らない贈り物って、選ぶの大変だったけど、以降の贈答品がコレなら次回も受け取って貰えるだろう。
「はい、先払いです」
『ありがとうございます』
ノーク君には帝国の可愛い衣装。
と言うか、ネグリジェ。
クソ可愛いネグリジェ。
一瞬、顔を赤らめて即座に表情を戻した。
うん、これぞ弟、流石王族。
《僕らには?》
「有ると思います?」
《うん、ネネは体面を気にしてくれるし》
「どうぞ」
まさかネネが僕に、こんな贈り物をくれるなんて思わなかった。
指輪。
ココでも意味は同じな事を、ネネは分かってるんだろうか。
《本当に良いの?》
「婚約者ですし、周囲の反応も試したいので、レオンハルト様もどうぞ」
そうしてレオンハルトにも同じ箱、同じく簡素な指輪が。
《じゃあ、付けてくれる?》
「ではお手を拝借」
嬉しい。
溶けちゃいそう。
『ありがとう』
「いえ、試金石でも有りますし、絶対では無いですし。そも仮の指輪ですからね」
《じゃあ次は特別な指輪を作ろうね》
「それより、大丈夫ですかね、周りの反応。静か過ぎて振り向けないんですが」
《んー、どちらかと言うと、泣いてる》
「何故」
《やっとかって、感涙を堪えてる、レオンハルトみたいに》
『あぁ』
「あの、我慢大会用の言い訳と言うか、仮で、そこまで」
『受け入れ様としてくれている事が、何より嬉しい』
「立場が変わりましたし、相変わらず試し続けますが」
『構わない』
「ぅう、すみません、頑固で」
『いや』
《ネネのは?》
「有りますけど、どう」
《譲るよレオンハルト、本番は僕がするし》
『今までの事を改めて謝罪したい、そして誠意に感謝を。コレから幾らでも試してくれて構わない、ネネの気が済むまで、寧ろ俺は幾らでも試されたい』
王子様は膝を着きスズランの姫に指輪を嵌めると、手に長いキスをしました。
そして立ち上がった王子様に、スズランの姫は。
「ドM」
こうして、スズランの姫は2人の王子様と婚約する事となり。
皆が祝福しました。
《ふふふ、全て持って行かれましたね》
「もー、慰労会だって言うのに、途中から婚約披露宴にマジでなっちゃうし」
《相談相手が悪かったですね、小鳥と向こうの指導係に相談されたのでは?》
「はぃ、安心を得る為の筈が、なんか自ら罠に嵌ってしまった気がする。まさか、実はココまで」
《それは無いかと、本当に喜んでらっしゃいましたから》
「それも実は」
《あの方は既に魔獣寄り、いえ寧ろ私達精霊種に近い存在です、以前より素直なお気持ちになっているかと》
「スライムは、精霊種?」
《品物の件で幾度か戻った時の事です、コチラで事前に調べさせて頂いたのですが……》
スライムは東の国には居なくとも、先人達の情報は有ったらしく。
護衛の為にもと、正体を知った段階で調べてくれていたそうで。
水の精霊の変異種らしい。
ウンディーネやドリアードに近く、固体だからこそ食物を摂取する必要が有り、生態としてはプラナリアに近く単一性生殖。
要するにクローンを生み出せど、滅多に繁殖行為はしない。
けれど例外的に人種と繁殖するが、人種を捕食か捕食されるかが、繁殖行為となるらしい。
「は?」
《改めてコチラの情報とも照らし合わせましたが、はい、だそうです》
「魔獣との違いは?」
《魔獣との掛け合わせでは人種は劣性ですが、アレの場合は人種が優生。つまり生まれる場合は殆どが人種、それは精霊種の特性なんです》
「はー」
《因みに悪魔なる者は産み分けが出来るそうなので、特に劣性だとかは無いそうで》
「へー」
《ネネ様、本当にココに留まられる気が有ります?》
「有りますけども、まだ先の事かと」
《まぁ、お忙しいですしね、ふふふ》
「ありがとうございます、大変だったでしょう」
《いえ、図書のシルキーも精霊種に近い存在ですから、読み聞かせをして頂いたんです》
「喋れるんですか、あの子」
《同種だけ、ですね》
「ほー」
《もう、私が居ないと、本当にダメですね?》
「はい、ダメです、支えて下さい」
《はい、勿論》
「明日、明日から本気出します」
《ふふふ、そうですね、今日は慰労会でしたから》
「あ、お菓子だけでも渡そうかと」
《だけ、ですよ》
「ふぇい」
急いで各国の図書の精霊にお菓子を渡すと、そのまま本を貸し出してくれた。
申し訳無い。
取り敢えず本をしまい、読み聞かせは翌日へ。
なんせ、まだ渡す相手が居ますので。
『ふふふ、ありがとう』
《寄越さぬのかと心配していたぞ》
「何を仰います、ずっと一緒に居るんですから分かるでしょうに」
コンちゃんには写真立て。
あのお爺さんとの写真を、お孫さんが妖精さん経由で送って来てくれたので、丈夫で写真が劣化しない写真立てを。
黒蛇さんには、コレが最も悩んだ。
なので白紙の分厚い本とペン。
思い出を残して貰おうかと。
《さ、もう眠ると良い》
『今日も忙しかったもんね』
「本当に、大変でした」
要は立食会を計画したワケで、そうなると食事だ飲み物だと相談する事になる。
そこで帝国の礼儀作法の先生、ノーク君に指輪の件を相談する事になり、更に裏で動かれていたと。
それは良いんですよ、こうしたサプライズは良いんですが。
指輪を渡したのは、罪悪感を減らす為。
だって正式なお付き合い宣言もして無いレオンハルト氏に粉を掛けるも同然で、そうした行為を改めて周囲に理解して貰う為に、あぁしただけで。
《そう思い悩むなら、もう少し疲れさせてやろうか》
『する?』
「しません、おやすみなさい」
はい、切り替えます。
少なくとも作戦通り、本当に周囲はハーレムを問題としていないのは分かったのだし。
明日、明日考えよう。
明日から本気出す。




