85 趣味と星座。
《お帰りなさい》
「ただいま」
先ずは玉響ちゃんの太腿にダイブ。
正直、同性ならハグより安心する。
《ふふふ、波立っていますね》
「そうなんですよー、鍵と指輪と招待状、後ろ盾を頂きました」
ルーイ氏に報告したけれど、お疲れ様、で終わった。
大した事では無いのかも知れないけれど、安心させる為に、そう振る舞ってるだけかも知れないし。
《おめでとうございます》
「違うんですよ、認められたいとかじゃなくて、多少なりとも好きに生きられる様にしたかっただけで。こんな筈では、加減を失敗しました」
《女の子なんですから、コレ位の選べる権利は有っても良いんですよ》
「選択肢が多くても困る」
《醍醐味では?》
「好みの相手にだけ好かれたい」
《では、好みの相手とは?》
「嘘を言わない、言っても最低限、どうしようも無い時だけ。コチラが納得出来る範囲だけ、他はダメです」
《仰る通りで、他には?》
「私に1番優しい、私を好き、私だけ好き。ダメな事は叱ってくれて、話し合ってくれて、浮気しない」
《ネネ様、宜しいでしょうか》
「ダメー、当たり前では、とか言ったら泣く」
《偶には泣くのも良いそうですよ?》
「追々に取っておきます」
《では、他には?》
「顔が好み」
《当然ですね》
「こ、声も良い方が良い」
《私もそう思います》
「当たり前しか、出ない?」
《それでは選択肢が多くても、仕方有りませんね?》
「どう、絞れば良いのか」
《当たり前でも、先ずは並べてみましょうか》
「ですね」
賢いに越した事は無い、性根は良い方が良い。
誠実さと真面目さが有り、裏表は、別に有っても構わない。
《構わないんですね》
「私にだけ優しいなら、それもある意味では裏表かと」
《確かに、そうですね》
「それと……」
衛生観念、道徳観念が合う。
死生観は、少し置いておきたい。
味覚は、別に程々に合えば良い。
趣味も、趣味。
彼らの趣味って何だ。
『僕の趣味ですか?』
「はい、因みに私の趣味は遊園地、それと気に入った音楽の改変です」
『僕の趣味は、やっぱり料理ですね』
「ほう」
『向こうに行ってしまったカイルに合わせ、向こうの料理も勉強したので、料理に関する歴史もですね』
「成程」
『あ、先日のエビトーストですよ、どうして僕に教えてくれなかったんですか?』
「すっかり忘れていたのと、侵略の結果齎された料理とも言えるので、言い辛かったんです」
『パン、確かに』
「はぃ」
『僕には責める気は微塵も有りません、仕方無しに諍う事もあるでしょうし、真実を知る事は難しいですし。なので以降は遠慮なさらず、お願いしますね?』
「へぃ」
『因みにカイルの趣味は乗馬だと聞いていますけど、行きましょうか』
「はい」
ネネ様は何故、趣味を。
《趣味、ですか》
「はい」
《乗馬と、オリガミですかね》
「まさかのオリガミ、何故」
《姉妹から、力や筋肉と器用さは必ずしも比例しない、寧ろ戦いにこそ器用さは必須だと言われ。気が付けば、時間が空くとやってしまいますね》
「ギャップが凄い」
『僕にはくれないの?』
《訓練と言えば訓練ですし、切れ端や粗末な紙なので》
「私にも1つお願いします、面白いので、じゃ」
『僕もお願いね』
《あ、はい》
何だったんだ、一体。
「私の趣味は遊園地と音楽の改変です、はい、レオンハルト様は何ですか」
『趣味と言うか、薬草学と、訓練だと思うが』
「好きな事は無いんですか」
『ネネの事を考え』
「それ以外です」
『無い』
「だからフられるんですよ」
『すまない』
「半ば冗談です、ありがとうございました、では失礼します」
『失礼します』
珍しく私的な事を尋ねに来たと思えば、あっと言う間に去って行った。
一体、何だったのか。
《趣味、ネネ》
「それ以外で」
《組み立てパズルかな》
「そんなのが有るんですか?」
《知育玩具だよ、庶民には少し高いけれど。原案は来訪者様、エルが趣味で設計していてね、僕が試しているんだ》
「難しそう」
《そうだね、簡単なのも有れば難しいのも有るけれど、必ず完成するからね》
「パーツを無くしたらどうするんですか?」
《型紙にパーツが嵌っていて、パーツの型を紙になぞり書きをして送るか。どのパーツが無くなったか分からない場合は、未完成品と残りのパーツを販売店に持って行けば、部品を送る手配をしてくれるよ》
「完成度、素晴らしい」
《そうだね、それで何故、趣味の事を?》
「皆さんの趣味を知らなかったので」
《それだけ?》
「あ、誕生日会などはなさるんでしょうか」
《内々でね、生年月日も重要な情報だから、デビュタントは特定を避ける為にも半年に1回行われる》
「あぁ、馴染みが無いので調べもしませんでしたが、成程」
《贈り物はその時、その時期に外部の者が渡す事が出来る》
「山羊座です」
《ネネ、言うのが遅くないかな?》
「アナタは?」
《僕は牡羊座、レオンハルトは蠍座》
『カイルは牡牛座、僕は獅子座です』
「ありがとうございます、では」
《ネネ、何が欲しい?》
「安心」
《ごめんね》
「いえ、こればかりは自身の問題なので、お気になさらず」
《ネネ、ピアノは?》
「アレは今は邪魔です、透明なガラス細工的なピアノなら欲しいですけど、ならその前に安心して過ごせる居心地の良い家が欲しいですね」
《分かった》
「いや贈らないで下さい、出来るなら自分の好きな様に建てたいので」
《何処に建てる?》
「何処が過ごし易いと思います?暑過ぎず寒過ぎず、湿度も適度な場所」
《かなり限られるね?》
「ですよね」
《どんな家が良い?》
「何か欲しい物は?物品で」
《ネネが作った何か》
「趣味が私だと直ぐに飽きますよ」
《飽きて欲しくないんだ?》
「下がりますね失礼しました」
プレゼントの事を尋ねたくて来たのかと思ったんだけれど、本当に全く違った。
ネネは誕生日があまり好きじゃないのかな、それとも何か有ったのか。
一先ずは組み立てパズルをあげよう。
それとピアノも。
『ふふふ、お忙しかったですからね』
「すみません、本気で失念しておりました」
《いえいえ、私達も敢えて触れませんでしたから》
「とは言えど、こう、何かさせて頂けませんか?」
『では、ネネ様へコチラの流儀をお見せ致しますね』
《ですね、楽しみに待っていて下さい、ふふふ》
全く、念頭に無かった。
別に嫌な思い出が有るワケでも、逆に言えば拘りが無いだけで。
生死に関わらないだろう。
困らないだろうと。
いや、正直どうでも良かったのは認める。
ただ身の回りのお世話をしてくれている方々には、相応の対応が必要だったワケで。
コレか。
コレだから友達が少ないのか。
いや、向こうではそこはちゃんとしてましたよ。
一種の社交術として。
だって誕生日は家族と祝うし。
その時には必ず家族旅行で遊園地で、欲しい物は寧ろ家族で話し合って直ぐに買うか、クリスマスに貰うか程度で。
それとは別に、気に入りそうな物を不意に渡すとかで。
いや、それが他とは違うとは知ってましたけども。
ユノちゃんの誕生日は知ってるし。
「玉響ちゃん、いつ生まれました」
《乙女座です、ふふふ》
「良かった、まだで」
《ふふふ、お忙しかったですからね、無理は無いかと。さ、どうぞ、成果をお聞かせ下さい》
「ふぇい」
《ふふふ》




