79 愛されたかっただけ4。
「何で、父さん、母さん」
《あら、お帰りなさい》
『学校はどうだった』
「学校?」
《あぁ、お前はどうしようも無い屑に育ってしまったからね》
『高校生から育て直す事にしたんだ』
「育て直すって」
『コレでダメなら中学生』
《小学生、それでもダメなら幼稚園からね》
何を言っているのか分からなかった。
けど、ふと自分の手をみたいなのは瞬間、制服を着ていた。
「何、これ」
《育て直してダメなら、お前は死ぬの》
『残念だけれど、私達の失敗だ、私達が殺す事になる』
「ごめん父さん、ごめん母さん」
《さぁ、手を洗ってらっしゃい》
『折角だ、風呂に入ってきなさい』
「はい」
やっぱり、私達は失敗していた。
ずっと、失敗し続けたままだった。
《あのね、アナタは確かに高校生だけれど、もう高校生よ》
『着替えを用意する位は自分でしなさい』
「はい」
一人息子だからと、何処かで甘やかしていた。
一人で十分だろう、と。
私達は余裕を持って子育てがしたかった、けれど、単に甘やかすだけだった。
《はぁ》
「母さん、ごめん」
『もう、こんな失敗はするんじゃないぞ』
「はい」
如何に甘やかしていたか、思い知らされた。
『全く、どうしてお前は』
「ごめんなさい」
『そう謝るだけ、か』
「ごめんなさい、もうしません」
『だが、現にしただろう』
《何故なの、どうしてこんな》
「ココでは、まさかダメだなんて」
『いや、本来なら以前もダメな事だ』
《結婚前の女性に手を出して、もし妊娠させてしまったらどうするの》
「それは、避妊もしたし」
『避妊具は100%じゃない、そんな事も知らないのか』
「けど」
《あのね、排卵日じゃないって、嘘を言ってしまったそうなの》
「そんな、まさか」
『何故、どうしてなんだ、何故自分の都合の良い事は無闇矢鱈に信じて疑わない』
「ごめんなさい」
《どうするの、妊娠してしまったかも知れないのよ》
「そんな」
『そんなとは何だ!しなければ出来無い事をしたのはお前だろう!!』
《お父さん、落ち着いて、心臓に悪いわ》
『だが』
「ごめんなさい父さん」
《私達に謝るだけじゃ済まないわ、今度もよ、どうするの》
「それは」
間違いだった。
甘く育てたつもりは無かった。
厳しく育てた、つもり、だった。
間違えていた。
つもり、でしか無かった。
物分りの良い、素直な子だと、勘違いしていた。
親の顔色を疑う、単なる愚鈍な息子。
私達は失敗した。
「ごめんよ、悪かった、謝るから」
《いいえ、私達こそ、本当にごめんなさい》
『コレは私達の罰でも有るんだ、だから大人しくしてくれ』
「嫌だ、死にたくない」
《大丈夫、また生まれ変わるわ》
『次は中学生だ、それなら少しは上手くやれるだろう』
「嫌だっ」
《待ちなさい!》
『良いさ、逃げれば……』
何故、母さんが止めたか。
何故、父さんが止めなかったのか、考えもしなかった。
何枚も何枚も、同じ襖を開け続けていると。
以前の様に、元の位置に戻された。
母さんは焼死。
父さんは餓死。
2人が嫌がっていた死に方を、2人がしていた。
《連帯責任って、知っていますか》
僕が手を出した女の子のお腹が、大きくなっていた。
「な、何でそんな」
《ずっと、逃げていたじゃないですか、だから産むかどうかの相談も出来無かった》
「だからって!」
《コレは自死ですよ、アナタが逃げたせい、アナタのせい》
「だからって、何でこのままに」
《アナタが取り仕切る役目を負っている、なのに逃げ出した、違いますか》
「そんな、そんなつもりじゃ」
《あんな風に育てたつもりは無かった、ご両親も仰っていましたよ、流石親子ですね》
「だからって、何で、どうしてこんな事を」
【何故だか、まだ分かりませんか】
罪を、確かに罪を犯した。
傷付けたけれど。
「だからって」
《アナタが同じ事をされても、その程度で許せるかも知れません、ですけど許せない者も居る》
【アナタ程度の愚か者と、アナタはお付き合いしていた、と仰いますか】
「悪かった、反省してる」
《それで、この子はどうするんですか。要らないならアナタが片付けて下さい、遊んだ後は、自分で片付けましょう》
出来無かった、怖くて、無理だった。
そうやって結婚した、けれど彼女は良い人で、僕を責める事は無かった。
けれど。
『おめでとう、ございますで、宜しいんですかね』
僕とは似ても似つかない子だった、浅黒い肌に茶色の髪、目鼻立ちも何もかも似ていない。
「ど、どう言う事なんだ」
《お似合いだって、私達言われましたよね、ふふふ》
「まさか、浮気を」
《言いがかりは止めて下さい、証拠は?それともアナタも浮気しているか、マリッジブルーか、何でしたっけね》
僕が言った事が、そのまま。
「何、何で」
《知っているのか、勿論、ココが地獄だからですよ》
「ぼ、僕は」
《懺悔した程度で許される、だなんて、何処の便利な宗派なんですか?教えて貰えます?》
「こ、こんな」
《鈍感な人には大した痛みでは無いでしょうけれど、あぁ、だからご自分より敏感な者のせいになさるんですね》
「ち、違う」
《残り、後2つ》
ココは、地獄の延長線上だった。
輪廻転生の場所でも無い、天国でも無い、ココは地獄のままだった。
「すまなかった」
《さ、先祖返りかも知れませんよ、抱っこしてあげて下さい》
地獄でも、続けるしか無い。
もしかすれば、次こそは抜け出せるかも知れない、あんな痛みはもう嫌だ。
『ママ、パパ』
《お帰り》
「学校はどうだった」
『うん、凄く楽しかった』
「そう」
《良かったわね》
パパとママは、以前とは別人みたいに躾けに厳しくなったけれど、まるで天国みたいな世界。
良い子にさえしていれば、規則通りに生きれば、何の問題も無い。
確かに以前は欲張り過ぎたとは思う、けどココは向こうとは少し違うし、以前よりも私は良い子にしてる。
何の問題も無い。
なのに。
『何で真似するのよ!!』
『だって、可愛かったから』
グズグズ泣くばっかりの妹が居る、真似ばかりしてくる妹に本当に困らされてる。
こんな女こそ、死ねば良いのに。
「何故、どうして真似ばかりするんだ」
《アナタは好きなモノを選んで良いのよ?》
娘は、妹の方は、どうしてか変な風に育った。
他人の服装や外見を真似、直ぐに仲間外れになる。
そうなると姉を真似し、再び喧嘩。
その繰り返しだ。
『でも、だって』
「真似るにも限度が有るんだ、お前が嫌じゃなくても、こう何人もが嫌だと言っている事を。何故」
あぁ、僕の愚かさが移ってしまったんだ。
親になり、どれだけ母さんと父さんが苦しかったのか、やっと分かった。
『ごめんなさい』
「どうすれば良いのか、対処法を出しなさい、それまで学校へは行かせない」
以前の母と父とは違う。
けど、以前の方がマシだったかも知れない。
揉め事を起こすと一々煩い。
あんなに無関心だったのに、しかも姉が居る、前とは違うけれど同じ事も多いのに。
上手くいかない。
前とは違うのに、どうしてかバレる。
何で。
『またアンタ、どうして私の部屋に』
『良いじゃん別に、どうせ私は学校に行けないんだし』
『は?だから何?』
『意地悪』
『いや返してよ』
『返すから貸してくれたって良いじゃん』
『アンタに貸す意味無いんですけど』
『ケチ、意地悪』
『ケチで意地悪で結構、返さないなら言いつけるだけですけど』
ちょっと借りる程度、別に良いじゃん。
良い母親と父親が居るクセに。
『はっ、返せば良いんでしょ返せば』
『アンタっ』
クソみたいな子供を持つと、地獄を見る事になる。
僕みたいなクズに見合う女と結婚すると、家も家庭も地獄だ。
「何で、お前達は」
《本当、アナタにそっくりね》
『ごめんなさい』
『私は絶対に謝らないわ』
妹の方が大怪我しているにも関わらず、姉に反省の色は全く無い。
「言い分は聞いたが」
『絶対に、この子は反省して無いわ、絶対にね』
『ごめんなさい、反省してる、もうしない』
『どうだか、貸さないって言ったら床に投げ付けたのよ、マジで有り得ない』
『それは、手が滑って』
《あぁ、3つ目ね》
『えっ』
『まさか、アンタも』
「お前、まさか」
『助けてお母さん!痛い!!』
《そうね、痛くて苦しいわよね、だって中身がドロドロに溶けていくんですもの》
『何で!どうして!!』
《アナタが3つ、嘘を言ったからよ》
『ちょっとアンタ、まさか試練の間を』
『何それ知らない!助けて!痛い!!』
《試練の間が必要かどうか、確かめたの》
「何でそんな事を」
【何故か、分かりませんか】
俺と娘は肩をビクつかせ。
下の娘は、返事すら出来無い程に。
『嫌っ!』
「待つんだ!!」
《説得、頑張ってね》
死にたくないからじゃない。
知りたかっただけなんだ。
試練の間に居た事が有るのか、その事を聞きたかっただけなんだ。
まさか。
「コレだけ教えてくれ、君は、試練の間に」
『居たから何だって言うのよ!!』
あぁ、あの女が僕の子に。
そうか、コレは続けても、どうせ地獄なんだ。
「地獄は、続いてるんだ」
『何よ、だからって、止めて!!離して!!』
「生まれ変わって、生き直そう、今度こそ」
『嫌ぁあああああああああ!!』




