78 愛されたかっただけ3。
《はぁ、記憶は有るか》
思い出した。
この声の男に押されて僕は。
「良くも!」
《悪かった、あんな事になるとは本気で思ってなかったんだ、謝る》
「アンタ」
《全員死んで振り出しに戻ったんだ、悪かった》
「は、何で」
《君が死んだ後、女が嘘を言ったんだ》
そして閉じ込められ、アナウンスが聞こえたらしい。
本当に、悪いと思っていないんですね、と。
そして女は死に、男はアナウンスに答え続け。
飢えと渇きから、嘘を言って死を選んだらしい。
「どう、死ぬんですか」
《首の装置、ココから薬液が出るらしい、酷く苦しくて痛かったよ》
「そん、シミュレーションじゃないんですか、何かの装置に」
《だとしても、ココの者の納得を得られるまで、出れないんだろ》
納得。
納得って。
「あの、居るんですか、女性の方」
『だったら、何よ』
《何処までも不愉快な口の利き方をするな、協力し合わなければ出れないかも知れない、それがまだ分からないのか?》
『だって、それこそシミュレーションかも』
《馬鹿が。知らない事が多いからって考えもしないのは分かった、だが協力はしろ、良いな?》
『わ、分かったわよ』
《君も良いな、落としたのは本当に悪かった》
「ほ、本当に、そう思ってるんですか。また、僕を」
《試しに嘘を言えば良い、俺はまたアレを味わうのは嫌だけどな》
『黙って協力しなさいよ!!また死ななきゃなんないなんて絶対に嫌よ!!』
「けど、アンタ達が仕掛け人かも」
《金稼ぎで死人が出た時点で悪いと思った、十分な償いをした、直ぐに稼ぎ方を変えた》
暫くして男は呻き声を上げ始め、絶叫し、静かになると。
異臭が漂い始めた。
「そんな、嘘ですよね、何かの冗談で」
『もう嫌!お願い出して!許して!!』
【出す意味って、何ですかね、許す意味が何処に有るんですかね】
最初とは違う、聞き覚えの無い声。
『あ、アンタが犯人ね!!』
「知り合いなんですか」
『貢がれてた相手の奥さんよ!!』
「そんな、じゃあ、アナタのせいで」
【誰のせいでも無いですよ、全員が全員、自業自得ですから】
『誰よ、今の』
「ぼ、僕の、僕の」
『アンタのせいじゃない!!』
「違う!僕は誰も」
【私が死んで無い証拠は有りますか】
声が、混ざった。
『ごめんなさい、謝るから』
【謝って済む事だと思っているんですね】
『そ、違うけれど。違う、出たら償いはするから、必ず償いはしますからっ、何でっ。嫌、また』
【浮気される方にも問題が有る、今でもそう思っていますか】
『思って無い!思って無いだからっ!!何で!悪いって、思ってるのに!!』
女も呻き声を上げ、絶叫し、黙った。
【謝って済む事だと、思っていましたね】
あの痛みがシミュレーションだとしても、ココの者に納得をされない限りは出られない。
《誰か起きてるか》
「何なんですかココ!!」
《あぁ、どう死んだ》
「嘘を、言いました」
《そうか。俺は金儲けで人を死に追い遣った》
ココには規則性が有る。
それに沿うしか無い。
人を食おうが何だろうが、結局は1人では脱出が出来無い。
あんなに問答を繰り返しても、結局は出れなかったんだから。
「う、浮気がバレました、相手は死んでるかどうか分かりません」
ガシャンと音がした。
後は女だけ。
『金を貢がせました、誰か死んでいるか分かりません』
この後、どうするかだ。
《改めて言うが、コレは協力型だと思う、3人で脱出する事がココの誰かの望みだと思う》
そして嘘は3回まで。
3つ目を言った時点で、毒液で内側から溶かされて死ぬ事になる。
そうすれば振り出しに戻る。
「協力、します」
《女》
『する、するわよ』
あぁ、コレが正解か。
「明かりが」
『出して!何でもする!謝るから!!』
《余計な事を言うな!!本心からの言葉じゃない限り、嘘だと認識される》
「そんな事」
『そんな事!どうやって』
《もし、俺達は既に死んでいて、ココが地獄なら簡単な事だろ》
地獄なんだよ、ココは地獄。
蜘蛛の糸は垂れて来ない、出るには何かを成さなきゃならない。
「何で」
《質問が無いなら質問したい》
『アンタ、何処見て』
【質問をどうぞ】
《ココは地獄だろ》
【はい】
《ほらな、どうすれば出れる》
【ココは試練の間、答えはアナタの中に有る筈です】
あぁ、そうか。
《例え生まれ変わっても、この記憶が無い限り、悪さをしない自信が無い。もう人として俺を生まれない様にしてくれ、蚊トンボか羽虫、人に害をなさないのが良い》
悪かった。
アレは俺のミスだ、脇が甘かった、追い詰め過ぎた。
けど、こうなって初めて認めた事。
生きる為には、多少の騙し合いは許されると思っていたし、今でもそう思ってる。
改心は俺には無理だ。
そう善人のままじゃ生きられなかった、恵まれ無かった事だけじゃない、あの世では仕方が無かった事だと今でも本気で思ってる。
そこに生まれ、そう育った。
好きでそう、いや、楽な方を選んだだけだ。
やっぱり俺は、人じゃ無い方が良い。
【結構です、では、ご退場下さい】
あぁ、コレが正解なのか。
《な、何なんだよココは》
真っ暗になると、退場した男とは別の声が聞こえた。
「先ずは罪を告白するんだ!」
『嘘はダメよ!3回目で死ぬ事になる!!』
《は、何を言って》
「首輪に鎖が有るだろ、その鎖が外れて動ける様になるんだ」
『協力するって言えば明かりが付くの!』
《何のドッキリだコレ》
「違うんだ!!本当に」
『試しに嘘を言ってみなさいよ!!本心じゃなきゃ本気で、言わないで!私達も』
《人類の平和だけを願って生きてました、悪い事は1度もしてませんし》
『止めて!』
《人を害した事は1度も無いでっ》
『もう!!』
「あぁ、また死ななきゃならないのか」
何度、繰り返す事になるんだ。
嫌だ、もうあの苦痛は。
《痛い!助けて、助けっ》
男は呻き、絶叫し、静かになった。
何度繰り返せば。
『はぁ、もう、殺して』
そうだ、何でも良いから死ねば良い。
「ハッチだ、水の出る場所は同じだった、溺死にしよう」
『何それ、どっちみち苦しそうじゃない』
「どっちがマシか、それしか無い」
『もう、好きにして』
アレから何度も試した。
けれど、退場出来無い。
後悔したい。
本気で懺悔がしたいのに。
彼女にも悪かった部分が有る、そう思うと、僕だけが悪いんじゃ無いと思ってしまう。
来世が有るなら虫なんて嫌だ。
僕だけが悪いワケじゃ無い筈だ。
「僕だけが悪いんじゃない、こう育てた親にだって、罪が有るじゃないか」
【結構です、では、ご退場下さい】
「やった、やっと」
何で。
『何でよ!アイツらが言ってた通り』
《だからさ、マジで思って無かったら、意味無いんだって》
「もう発言は最後にして貰えませんかね、コッチは半ば、巻き込み事故で死ななきゃならないんですし」
『何よ、アンタ達』
《すみませんでした、この馬鹿女を見てマジで目が覚めました。俺は自己中で連帯責任とかどうでも良かったけど、コイツの言ってた因果とか言うの、信じて無かったんです》
「学が無いだけで、無かったせいだと僕は思う。生まれとか育ちも重要だって納得しました、イキがってました、恵まれてたのに考えようとしなかった」
《俺も虫で良いや、けど綺麗な蝶が良いな、愛好家に大切に飼われる蝶とか》
「良いですね、でも僕は、熱帯魚が良い。毛虫も害虫と言えば害虫ですし」
《あー、アレな、茶毒蛾》
「生きてるだけで人の近くに居たら害になる、僕は、僕もそうだったと思います」
《それも環境とか親じゃないの》
「かも知れませんけど、結局は甘えてた、楽な方に逃げてたんです」
《俺も、したくない事をしないで、したい事だけしてた》
「僕も、嫌な事でもしなきゃいけない、じゃないとあんな風になる」
『ガキ共が、何を知った風な』
《あんな親の元に産まれる位なら、全然虫で良いわ》
「どんな親に育てられたのか知りませんけど、酷い環境だからって、全員が全員犯罪者にはならないんですけどね」
《ウチ、あんなんだったけど、妹は違ったな》
「すみません、でもあの人よりマシですよ」
《アンタ、どんな親に》
『ウチの親はマトモよ!!』
「そっか、やっぱり僕らの性根が悪かったんだ」
《あぁ、俺らも親も悪かった》
「ですね」
『アンタ達』
【はい結構です、では、ご退場下さい】
また、真っ暗になって。
私が悪いのは分かった、でも親だって、周りだって。
私だけが悪いんじゃない、なのに私ばっかり、何で。
《あの、誰か》
「母さんか」
『ママ、パパ?』




