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72/100

72 気付き。

 あまりにもネネの反応が可愛くて、そう遊び過ぎてしまったせいか。

 3回目が来ない。


 単に魔力容量を気にしての事かも知れないけれど、違うかも知れない。


 レオンハルトの所に来たかどうか尋ねる事も禁じられているし、本当に機嫌を損ねたのか、コレも試練なのか分からない。

 しかも謝りに行った先で試されたら、またやり過ぎてしまうかも知れない。


 いや、寧ろ既に失格の状態なんだろうか。

 そして不意に、罰を与えられるのかも知れない。


 ならもう、今日にでも謝りに行こう。


「はい、何でしょうか」


《ごめんねネネ、この前は調子に乗って》


「単に間を開けているだけ、とは」

《かも知れないけれど、期待に応えられなかったなら謝りたいから》


「間を開けただけですよ」

《良かった、まだ失格じゃないんだね》


「今日を入れて、たったの2日ですよ?」

《けど顔を合わせる機会も無かったし、不安だったから》


「成長に魔力を使わせているんですし、枯渇させない為だったんですが」

《そこも考えたんだけど、ごめんね。あ、吸い上げて良い?》


「吸い上げる、何を」

《魔力を、大きくなってる時だけ》


「あぁ、どの程度ですかね」

《1割も無いかな、その分で補えるから》


「どうぞ」

《じゃあハグ》


「どうぞ」

《ありがとう》


 不安で堪らなかった。

 このまま放っておかれるか、油断した頃に失格の宣言を受けるかも知れない。


 そう思うと、不安で堪らなかった。


「ルーイ氏にも人の心が有るんですね」

《勿論だよ、だから不安要素は排除していたんだし》


「試す者の気持ちが、やっと分かった気がします、前の男なら好き放題していた筈。自分の自由な時間を満喫して、不安にすら思わなかったんでしょうね、はぁ」


《懲らしめたい?分からせたい?》


「その両方で」

《このまま、その話をしよう?どう懲らしめるか、どう分からせるか聞かせたい》


「いえ、勉強を優先します、その後お願いします」

《うん、分かった》


 本当に、分からない。

 ネネの何が気に食わなかったのか、全く分からない。


 低きに流されまいとする姿勢は真面目さや誠実さの現れ、そうあり続けようとする姿も健気だし、常に支え続けねばならない不安も無い。


 馬鹿を制御する能力も無いだろうに、何故、どうして。

 何故、困窮してもいない筈の者が、そこまで馬鹿なのだろう。




「はい、では、お願いします」

《うん、けどハグさせて》


 ネネには様々な迷い、葛藤が有る。

 それは清く正しくあろうとするからこそ、言動1つ1つの重さを理解しているからこそ。


《私が付き添おう》

「はい、ではどうぞ」

《ありがとう》


 ネネは自らを過小評価している。

 こうして心を開こうとしている、その事は評価されてしかるべき事。


 ネネは既に選べる立場に有る。

 直ぐにも切り捨て、全く瑕疵の無い、無関係な者から選ぶ事も出来る。


 だが心を寄せられている事を無碍にせず、向き合い、改めて評価をし直そうとしている。

 単に新たに評価をするより、以前の事を良くも悪くも加味し吟味を行う、こうした事が難しい事だと理解はしている筈だが。


「はい、話して下さい」

《このままで良い?》


「まぁ、良いですよ」

《ありがとう。先ずは分からせようかなと思ったんだけど、ちょっと懲らしめてから分からせて、また懲らしめたいよね》


「確かに」

《それでね……》


 確かに、私達とネネに幾ばくかの価値観の違い、死生観の違いは有るが。

 コヤツは別格だ、あの小鳥よりも遥かに残虐性を持ち、策略の粘度が高い。


 ネネの素直さ故に、その悪辣さはさして顔を覗かせていないが。

 貶め苦しめようと企みを明かしている、その笑顔たるや。


 流石、人種こそ悪魔の生みの親、と言われるだけは有る。


 自覚しているからこそ、敢えて顔が見えない様にと、こうして抱き締めたまま話しているのだろう。

 ネネが残虐な行為に同意する度、悪の華が咲くかの様に顔を綻ばせている。


 何処までも、人種とは恐ろしい生き物だ。


 獣や魔獣すら、死体を蹴る様な行為は滅多にしない。

 だが、コヤツは何でもするだろう。


 ネネの為になるならと、喜んで死体をもて遊び、虐げ続けるだろう。


「あ、良い事を思い付きました、既に有るか確認をお願いします」

《うん、ふふふ、少しは元気になれた?》


「はい、性格が悪いので」


 傷付けられ裏切られ、痛みを感じ恨むのは当然だろうに。

 その程度、コレに比べれば灰汁にすらならんのだがな。




「如何でしたか、ノーク君」


 まぁ、聞かずとも分かるんですが。


『はい、ありがとうございます、念願が叶いそうです』


 一国の王子様が、ニヤニヤヘラヘラと。

 実に嬉しそうで幸せそうで、まるで自分の事の様に嬉しい、既に顔面から幸せのお裾分けを頂いている状態だ。


「今です、惚気て下さい」

『恥ずかしくて顔を見れなかったんですけど、いざ見てみると、真っ赤になってくれていて……』


 甘酸っぱい、恋の味。


 こうして周囲が語るからこそ、皆が皆幸せそうだったからこそ、自分も幸せになれると半ば信じていた節がある。

 うん、他人の幸福は蜜の味、当たり前に得られると思うな恋愛の幸。


 はい、以前見事に失敗しましたよ。


 今の自分ですか。

 楽しむだの何だのより、心臓が飛び出しそうになるばかりで、幸せがどうのと味わえる状況では無いです。


 はい、自分には早過ぎた作戦でした。

 あまり好かれてる実感は、有りますが、もう少し工夫が必要な状態でして。


 だからこそ、少し日を置いていたんですが。

 凄く心配されました。


 はい、好かれている実感を得ました。


 そして如何に懲らしめるか、如何に分からせるかを話して貰った事で。

 話を真剣に聞いてくれていた事、覚えてくれていた事、嫌だった事を理解してくれている。


 そんな家族なら当たり前の事が。


 そうか、基準が家族だから、だから多少は基準以下でも仕方が無いと。

 そう思い、基準を下げ過ぎてあんな事に。


 成程、コレが自己評価か。

 少なくとも家族はしっかり指摘してくれる、けど注意されまくったワケでも、無関心に扱われたワケでも無い。


 いずれ家族になるなら、基準を下げる意味が無いのに。

 他人の評価に合わせて、自分の評価を下げた。


「はぁ、ごめんなさい」

『えっ?どうしました?』


「自己評価が何故低かったか、低い弊害が、やっと納得しました」


 良さそうな壺が、やけに安く売られている。

 自分なら値付けミスか、相手が無知故の事かと思うだろう。


 でもアレは、壺に何か問題が有るかも知れない、そう考えた。


 けれど、期待した問題は無く、悩んだり困ったりした。

 そして本当に問題が無いとなると、自分の手に余るかも知れない。


 そう気付いたか、無意識に察したか。

 それでフッた。


 けれど惜しくなった。

 やっぱり良い壺、利用価値が有りそうな壺に見えた。


 何故なら、馬鹿だから。


『はい、多分そうだと思います』

「ふええ、すみません、物分りが悪くてすみません」


『いえいえ、ご自身で気付けたんですから、十分に優秀でらっしゃいますよ』

「ですけどノーク君なら、直ぐに気付けるでしょう」


『育ちも何もかも違いますし、周囲が危ういと判断すれば排除されます、つまりは周囲も判断を誤ったんです。家族なんですから、しなくても良い失敗はさせるべきでは無い、ネネ様と家族は等分の罪ですよ』


「もう大人なので、あまり相談しなかったんです」

『それは家族の罪です、子が相談し難い状況を放置する、それは良い事ですか?』


「いいえ、ですが。ですけど、いずれ家族になるのなら、相談すべきでした」

『言っては何ですがかなり下等ですし、ネネ様がそう見下げなくとも、何処かで恥ずかしかったのでしょう』


「かも、知れません」

『と言うか、不誠実で不真面目、騙し誤魔化し詭弁を弄する者に騙される方だけが罪ですか?』


「いいえ、向こうが圧倒的に悪い。例え悪意が無くても、害意が無くても」

『はい、その通りです、向こうは悪人です』


「すみません、コレからもきっと、似た様な問答をします」

『良いんですよ、治そうとし、進もうとしている。コレは怪我の治療、毒抜きです。単純で信じ易い馬鹿なら直ぐに立ち直るでしょう、けれど何度も似た様な事で悩む筈。表面では無く根本を理解し、同じ轍を踏まない様にするには、寧ろコレが当然なんです』


「誰かウジウジ悩んでいる者、居ませんか」

『分かりました、では庶民と触れ合ってみましょう』


 そうして、来訪者様にご相談会が開催される事になりました。

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