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70/100

70 予測。

 一難去ってまた一難。

 自分にはハーレムなんぞ無理では、と思わされた。


《構って、何か食べさせて》


 ルーイ氏の襲撃だ。

 どうやら先日、カイル氏とノーク君に料理を振る舞った事が伝わったらしい。


「そんなに暇ですか」

《うん、だって既にココの事は知ってるし、変更点も確認したし復習もした》


「すみませんね飲み込みが遅くて」

《手伝うよ?》


「まぁ、じゃあ、付き添いをお願いします」

《うん》


 字を覚え始めたらキリが無いので、今まではココの言葉で解説して頂いていたが。


『はい、では僕が解説させて頂きますね』


 ルーイ氏は多少警戒すると思ったが、意外と平気らしい。

 と言うか知っているんだろうか、ノーク君とカイル氏の事を。


 まぁ、後で確認しますか。


《あぁ、やっぱりそうなんだ》

「勘ですか、情報ですか」


《勘かな、今日でネネに気が無い事が分かったし、なのに敢えて近付く理由って何なのかなって》

「成程」


《コレは何?》

「エビトーストです、どうぞ」


 不意に思い出した、家族の好物。

 本当に、食に拘りが無かったので、こうして不意に思い出す事が有る。


《うん!美味しいよネネ》

「どうも、母の好物なんです、エビ」


《ココの料理なの?》

「占領されると食文化が変化するので、諸手を挙げて紹介は出来ませんけどね」


《そっか、そう言う事なんだね》

「ただ国に帰ったら広めて下さい、頗る簡単ですから」


《うん、そうするよ》


 元気だろうか。

 ココに来たら、どんな反応をするんだろうか。


「もし、万が一にも、向こうに飛ばされたらどうしますか」


《死ぬかな》

「あぁ、ですよね」


《ネネが居て覚えていてくれたら良いんだけど、そもそも向こうでは不法移民扱いになりそうだし、見ず知らずの母国に送り返されてもね。生きる意味が無いから》


「ココの人にとっては、向こうこそ地獄で悪夢でしょうね」

《良いね、そうした御伽噺を作ろうか》


「子供の夢見が酷く悪くなりそうなんですが」

《悪い子ならね、最悪を考えてみてよ、ココの者として》




 悪い子に育ってしまった子が、星屑の呪いに引きずり込まれ、向こうへと行ってしまった。


 幸いにも言葉は通じる場所。

 けれど何も証を持ってはいなかった子は、白い制服と見慣れぬ道具の揃う施設へと、送られた。


 そうして幾日か過ぎた頃、仮の身分証を渡され、慣れぬ場所で働く事になった。

 けれど、何も知らない子は沢山叱られ、怒られた。


 メモしなさい。

 分からない事が有ったら聞きなさい。


 何を聞けば良いか分からなかった子は、仕事場から逃げ出す途中、強盗に遭ってしまった。

 更に助けを求めると、今度は乱暴をされてしまった。


 そうボロボロになった子を助けた者が居た、どの様な仕事をしている者か分からなかったが、その子に優しくしてくれた。

 お金を恵み、仕事を教え、常に褒めてくれた。


 けれど、その者が騙され困ってしまった。

 助ける為、その子はお手伝いをした。


 荷物の配達、掃除、料理。

 出来る事は何でもした。


 体を見せ、お金を貰い、言われるがままに何でも口にした。


 気が付くと、あの気の優しい者は居なくなっていた。

 連絡も取れず、その子は閉じ込められてしまい。


 どうしてもココから出たいなら、この荷物を配達しろ、体を売れ。

 この家に盗みに入れ、動物を殺せ、人を殺せ。


 言われるがままにするしか有りませんでした、言う通りにしていれば何も無い。

 ですが、少しでも逆らえば殴られる、必要なモノを全て取り上げられる。


 逃げ出す、だなんてもう頭にも有りませんでした。

 その日を生きるのに、その子は手一杯。


 そんなある日、あの人を見付けました。


 とても優しかった人。

 怒らず常に褒めてくれる人。


 その子が笑顔で駆け寄ると、その人は何も言わず、笑顔も無く。

 ただ黙って、お金を渡すだけでした。


 悲しみのあまり、その子は大切だった者を殺しました。

 そして、通りすがりに殺されました。


 可哀想な子は、星屑になってしまいました。




「ノーク君、合作と言えど、我ながら後味が悪いしか無いんですが」

『良いと思いますよ、教訓譚なんですし、青髭も後味が悪いですしね』


「千夜一夜物語、ご存知ですか」

『概要だけなら、ですけど』


「似てませんかね、王と青髭」

『あぁ、確かに』


「はぁ、元居た世界の残酷さも、心にきてます」


『なら、どうすれば上手くいくと思いますか?』


「そう、ですね」




 昔々、秋色の髪の者が星屑の呪いに巻き込まれ、見知らぬ場所へ落ちました。

 周囲には枯れかけた木々しか無く、秋色の子は高い場所を目指しました。


 そうして山の頂きに着いた頃、狩人に出会いました。


 狩人は、秋色の子を山の神だと思い込み、直ぐに頭を下げ。

 獲物を置いていきますので、どうかお許し下さい、と告げました。


 ですが、秋色の子は言葉が分かりません。


 何とか秋色の子が助けを求め様とした時、お腹が鳴ってしまいました。

 狩人は驚きましたが、直ぐに火の用意をし、神様へ食べ物を渡しました。


 慣れない味付けでしたが、温かい食事は久し振りです。

 秋色の子はお腹いっぱいになると、次は狩人へ食べる様にと促しました。


 狩人は躊躇いましたが、空腹には勝てませんでした。

 しかも急いで山を居りなくてはなりません、もう幾ばくかで日暮れ。


 狩人は秋色の子に頭を下げ、山を降り始めましたが。

 秋色の子が着いて来たので、とても恐ろしくなりました。


 きっと自分は山の神に食べられてしまうのだ、と。


 覚悟を決め、急がず山を降りる事にしました。

 1度目を付けられては、無事に村へ帰る事は出来ません。


 確かに倒す事も出来ますが。

 もし倒してしまったら、100年は山の恵みを得られません。


 狩人が哀しみの溜め息を吐くと、秋色の子は野苺を差し出しました。


 そこで狩人は気付きました、もしかすれば秋色の子は、山神様と人の子では無いのかと。

 村には古い言い伝えが有ります、白蛇と娘が結ばれ、以降は山火事が無くなったとされる言い伝え。

 

 そうして狩人は決心し、秋色の子と共に山を降りました。


 秋色の髪をした、秋の山に現れた子は。

 神様と人の子として村で大切にされ、いつまでも幸せに暮らしました。




「何だか、贔屓した感じになってしまいましたが」

『良い子にはコチラも併せて聞かせ、そう安心させれば良いかと。どの道、何処でも生きられる様に知識を蓄えさせるのが、親の義務ですから』


「はぁ、昨今は本当に、教育を学校へ依存し過ぎる傾向が強く」

『何故なら、労働中毒にさせられているからだ、と伺いましたが』


 確かに。

 労働さえしていれば、金さえ稼いでいれば、一定の評価がされる。


 そして、その次は結婚、子供。


 どう育てたか、は二の次。

 犯罪者になれば親のせいでは無く、本のせい、世の中のせいだと。


 それが本当なら、もっと似た犯罪者がわんさか居る筈、なんですがね。


「何故だと思われますか」

『平和の弊害、それと資本主義の影響の強さかと。内面、内需の強化が必要、ですかね』


 それが何故か叶わない、何かしらに邪魔をされている、とするなら。

 陰謀論に繋がってしまう。


 兄よ、やっと分かった気がします。

 マジだったんですね。


「お祈りがしたいです、無辜の民が向こうへ行かない様に、来るべき者だけがココへ来る様に」

『ではお参りに行きましょうか、そろそろ市井はどうですか?』


「行きます」

『はい、では明日にでも行ける様にしておきますね』


「ではコチラは報告に行ってきます」

『はい、お気を付けて』




 コレでも、ネネは自身の能力を認めないだろう。

 ルーイに作れと言われ、その日のうちに2つも仕上げた、だが。


《流石だね、ネネ》

「この程度は、民話の組み合わせですし」


《そう知っている事が重要なんだけれど》

「活かせませんでしたしー、褒め言葉より褒美を下さい、市井に行きます」


《構わないよ、楽しんで来て》


「素直、何か企んでますか?」

《して無いよ、僕らも日をズラして行くつもりだったから、美味しいお店が有ったら教えてね》


「はい、では」

《うん、またね》


『随分と素直に送り出したが』

《ココの民族衣装を作るだろうから、そこが楽しみでも有るからね》


『成程』


《ふふふ、君とこうした事が話せる様になるなんて、思ってもいなかったよ》

『すみません、俺が不甲斐無いばかりに』


《それは僕もね、仮初でも婚約者が居れば、もう少し上手く立ち回れた筈だったんだし》

『それはそれで問題になりそうだが』


《仮初だよ、根っから女しか愛せない女を、見繕ってはいたんだけどね》

『そう俺まで誤魔化す算段だった』


《まぁ、そうだね》


 ルーイに見合うにはネネの様なモノが確かに理想だが、俺も俺で、譲る事は出来無い。


『ある意味、コレも運かと』

《だね》

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