表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/100

62 戻る。

 その日、地震が起こった。

 そんな中、ネネちゃんは本当に行方不明者の中に入る事になり。

 私は無事な実家へと、数日後に何とか帰って来れた。


『お帰り』


 お兄ちゃんだけ家に居た。


 当たり前なんだけど。

 何か、安心しちゃった。


《馬鹿でごめんね》


『何された、怪我か、頭を打っ』

《ううん、大丈夫、本当に、ごめ、んね》


 お兄ちゃんは家で、株で稼いで生きている。

 勿体無いなと思ってた、ちょっと繊細だけど、悪い人じゃないのにって。


 けど、馬鹿なのは私の方。

 たった数回だけ寝込んだだけだけど、いっぱい分かった事が有った。


 私、本当に無神経だった。


 私は嘘も方便だって思えるけど。

 ネネちゃんもお兄ちゃんも、嘘が嫌いで、嘘が下手。


 良い事なのに、勝手に不器用扱いしてた。


 真面目で誠実で、良い人なだけ。

 だから外は生き辛くて、身を守る為に、閉じ籠もっちゃうだけなのに。


 勝手に、自分の方がマシだって。


『泣くなら上がれ、通報されても困る』

《うん、ごめんね》


『メシは』

《ううん、駅前で食べた》


『じゃあ風呂、荷解き、洗濯』

《うん、荷解き先にする》


『分かった、部屋に居るから、何か有ったら言えよ』

《うん、ありがとう》


 余計な事は言わないし、言う時は本当の事で、正解で。

 だから、もう、ダメなのかな。


 偽ユノはもう消えたし、もう、終わりなのかな。


「あら、ユノちゃん、お目々真っ赤ね」


 洗面所の鏡には。


《ゼパルさん?》

「あー、良かったわ、まだ記憶が有るのね」


《あ、え》

「いずれ消え、死の直前に思い出す、そうして辻褄が合う様になっているの」


《そんな》

「まだ回り足りないものね、後悔ばかりよね」


《うん、けど》

「戻れるわよ異世界へ、けれど、暫く戻って来れない。しかも、記憶を失う事は変えられないわ」


《胸を張って、ココに戻りだがっだ》

「そうね」


《残らなぐでも、頑張りだい》

「ユノちゃん、凄い不細工、ふふふ。じゃあ、良い?」


《宜じぐお願いじまず》




 ココに来た時と、同じ様な不細工顔で女が鏡に吸い込まれると、巻き戻りが起きた。


『成程な、因果律の調整の合間に、歪みを戻したってワケか』

《じゃの、多少の事象のズレは巻き戻しにより修正される》


『けど、捻じれの影響ってワケでも』

《良い塩梅に刺さっておった杭が抜けたんじゃよ、で、再び刺す迄の時間稼ぎによりアレが巻き込まれた》


 不細工女が言っていた、自身の偽

者。

 最凶最悪の、偽ユノ。


『阿呆だなぁ、時期を見極めろっての』

《全くじゃよね、じゃからワシらが生まれてしまうと言うのに》


 最も最悪な時期に、最も最悪な組み合わせで、最も最悪な事が起こり。

 俺達クトゥルフが生まれた。


『アレは、あぁ、そうか』

《消えるのが、1番じゃろ》


 ネネと言う女は、災害時に行方知れずとなり。

 あの腐れ女は。


『あひひひ、ふひっ、ふひひひひ』


 生き返り、地獄の苦しみを味わう事になる。

 何故か病院着で大学をふらふらと歩き回っていた女が、地震により起きた爆発事故で顔を焼かれ、手足も失うが命を取り留め意識も回復する。


 死ねず、顔を搔く事も出来ず、幻肢痛に悩み続け生きる事になる。

 恐喝の犯罪者として。


 正に、生き地獄だ。


《珍妙な笑い方じゃぁ》

『ふひっ、ふひひひっ。あ、夢の中でも追い詰めてやろう。丁度、良いのが居るんだ』


《まぁ、ココの医科学は発達しとるんじゃし、そう発狂はせんじゃろう》

『だよなー』


《はぁ、実に良い趣味じゃよね》


 寝ても覚めても悪夢。

 あぁ、最高だなおい、後50年はココで楽しめるぞ。


 夢の中で手足も顔も取り戻させてやる、幾らでも、何でも与えてやる。

 それから目覚め、絶望しろ。


 良い夢も悪い夢も、予測が付かない様に見せてやる。

 発狂も出来無い世界で、50年は苦しめるんだぞ、恵まれてるなクソ女。


『ひひっ、ふひひひひ』

《ほれ、お主のは暫くワイプじゃワイプ、コッチ見せい》




 酷い夢を見た気がするけど、全く覚えていない。

 ただ、凄い後味が悪いけど安心する様な、本当に変な感じしか残っていない。


 最近まで、全然、夢らしい夢なんて見なかったのに。


《ネネ、勘が馴染み始めたのだろう》


「勘って、馴染むものですかね」

《魔獣や神霊の影響を受けての事だろう、一種の予知夢、或いはシンクロニシティだ》


「あぁ、成程」


 シンクロニシティはユングが提唱した、集合的無意識だとか、霊的繋がりだとかの。


《身支度を整えてやろうか》


 黒蛇さんの女体化。

 凄いエロい、無駄にエロい。


 いや、無駄では無いか、コッチに引っ掛かってくれれば。


『ネネ、準備しないとルーイに突撃されるよ』

「あ、はい」


 コンちゃんの女体化は、可愛い。

 可愛いのに性別不明で凄く可愛い、ダメだ、寝起きの語彙力。


《歯を磨いてやろうか》

「結構です」


 意外とユノちゃんが居なくても大丈夫。

 と言うか、そう魔獣を信用しなかった事もいけない、頼るなら信じないと。




《おはよう御座います、お姉様》

《おはようネネ》


 お姉様、驚いてますわ。

 お城に帰った筈のお兄様が居て、カッと目を見開きましたわ。


「おはよう御座いますエル様、ソレ、どうなさったんでしょう」

《ふふふ、お兄様、この外見で魔獣なんですの。ですから向こうの城内に入れず》

《ココで世話になる事になったんだ、宜しくねネネ》


 お姉様、眉を顰めるのを我慢なさると、こうカッと目を見開きますの。

 動揺を隠そうとするお姉様、実にいじらしいですわ。


「でも、一応は」

《ええ、ある程度の場所は入れますわ、ですけど》

《重要な場所には入れないからね、以降はエルが向こうで過ごす事になったんだ》


《ふふふ、そしてお兄様はお姉様と、諸国を回る》


 私、あまり興味は無いのですけれど、楽しそうな旅路になりそうで。   

 少しだけ羨ましいですわ。


「レオンハルト様も」

『勿論です』


 ほら。




「ご配慮賜りましてまして、誠に感謝致します」


 ネネさんに、正式な爵位が与えられました。

 そしてルーイ殿下が、お父上と別れの挨拶をしている時、彼女が現れた。


『お前の名は』


「わ、私は、私の、名前は」


 いつか現れるだろう、とは聞いていたけれど。

 本当に、タイミングが悪い人。


『お願いしますデバル伯爵、』

「ふふふ、勿論よヒナ様」

《そうだね》


「殿下」

《あぁ、デパル伯爵》


「ふふふ、あの子も私が引き取るわ。アナタの姿、借りるわね」

《では君は僕が、さ、旅支度を》

《ありがとうございます》

『お心遣い、感謝します』


 この世界の人種にとって、悪魔とは優しく真面目で、賢い存在。

 決して、排される様な事は無い。


《あぁ、思い出せないんですか》

「すみません、何か、もしかして頭を打ったのかも知れなくて」


『そうか。では世話を頼むレオン、ルーイ』

『はい』

《はい、仰せのままに》


 この女は散々にユノさんの名を騙った事、そして元からの因果で、地獄を巡り続ける事になる。


《可愛いよ、ネネ》

「ルーイ、でもアナタ、婚約者が」


《君の魅力に負けたんだ、愛してる、受け入れてくれるよね》


「はい」


 反省していたら、少しは手加減してあげたのに。


《ふふふ、やっぱり愚かな来訪者だったんだね、残念だよ。レオン殿下、捕縛で良いですよね》

「えっ」

『失礼する』


「ちょっと待っ」

『何処から来たかも、名も思い出せない、叡智の結晶としての価値は無いと看做して良いだろう。しかも常識も衛生観念も貞操観念も無い、それに良心も、善人なら婚約者が居る相手をしっかり拒絶すべきだ』

《ですよね》


「だって、ルーイがどうしてもって言うから」

『子供が強請れば酒を与えて良いとでも?産む機械にする価値すら無い、去勢させよう』

《ですね》


「待って、名前なら思い出したから」

『もしかして、ユノ・ナダギかな』


「そう、そうなの」

『成程、やはりパブリックドメイン化しているんだな、来訪者ユノの名は』

《前任の来訪者様の言う事は正しかった、ユノの記録に間違いは無いと証明されましたね》


「えっ、ユノが居たの?私、知り合いで」

『そして国を滅ぼす存在、悪しき来訪者、だろう』

《知っているんですよ、コチラに来る前は皇帝を誑かし、皇妃を処刑させ国を滅ぼした。その更に前は妻の居る者を唆し、その妻に刺された》


 見せて貰ったけれど、本当に酷い事になっていた。

 無辜の民が、何度も何度も死を繰り返してしまう世界。


 例え私の事では無くても、コレは許せない、許すべきでは無い。


「違う、それは私じゃ」

《あぁ、でしたら友人を虐めていた方ですかね。コチラには既にユノノートが有るんですよ、さ、お名前をどうぞ》


「何それ、まるでデス」

『有益な事を話せないなら猿ぐつわを噛ませるが』


「言う!言うってば!」


 向こうでは、悪人が居なくなる事は無い。

 けれど、ココでなら減らせる、全滅だって不可能では無い。


『お疲れ様でした、デバル伯爵、』

「いえいえ、寧ろコレからだもの。ふふふ、どうなるのか楽しみだわぁ」

《君に任せるよ、じゃあね》


『何度も死ぬ事になってしまった方々の分も、お願いしますね』

「はい、お任せを」


 悪しき見本は必要。

 それにネネさんと、ユノさんが悲しむだろうから、全滅はさせないけれど。


 私は出来る、出来てしまう。

 私は悪魔の最高位なのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ