61 ユノの方。
《へっ、あれ》
戻ろうとか思って無かったのに。
いや、でも先ずはネネちゃんの安否確認。
電話、忘れない様に電話と、メアド。
よし、覚えてる。
兎に角落ち着こう、うん。
ネネちゃんに電話、電話。
【はい、もしもし】
あれ?
《あ、あの、音一 音々さんの番号で宜しかったですか?》
【はい、そうですが】
あれ?
予想と全然違う。
どうしよう。
なんだろうコレ、どう言う事だろう。
《あー、あの、〇〇さんの事でお伺いしたくて》
【あ、あぁ、詳しくは弁護士に任せていますので】
《あ、じゃあ、弁護士の方のお電話番号宜しいですか?》
【あの、この番号を何処で】
あー、どうしよう。
ネネちゃんが生きてるとか、コッチが分からないとか想定して無かったよぉ。
《すみません、その、〇〇さんからで》
【成程、分かりました、電話番号お伝え下さいします】
《はい、すみません、ありがとうございます》
あぁ、どうしよう。
不信がられただけだぁ。
寂しいなぁ。
話し合えたらって思ってたから、全然、予想して無かったなぁ。
【あ、あの】
《はいはい?》
【お名前を、お伺いしても】
《あ、すみません、ナダギユノと申します》
【ユノ】
あれ、何か憎悪籠もって無い?
《あのー》
【今、どちらに、お会い出来ませんか?】
《あ、すみません、今は海外でして。もし良ければ、帰国次第、お会いする事は可能なんですが》
【あぁ、そうなんですね】
《はい》
【では、また、ご連絡しても構いませんか】
困るなぁ、嘘言っちゃったし。
《コレから先移動日が続くのと、時差で難しいかもなんですけど、はい、時間が合えば》
【分かりました、では】
《はーい、失礼しまーす》
【はい、また】
はぁ、何だったんだろ。
何か変だったな。
何だろ。
ネネちゃんなら、もしネネちゃんが私だったら。
多分、最悪の想定をする筈。
でも、最悪って何だろ。
最悪。
ネネちゃんの最悪の状態。
まさか。
まさか、ネネちゃんの体に、偽ユノが。
有り得る。
ネネちゃんは向こう、しかも押し出し式で偽ユノが戻ってたなら。
どうしよう、有り得そう。
でも有り得たとして、私、どうすれば。
魔法。
出来るのかな、魔法。
いや、モノは試しだ、うん。
《ニャルさん、お願い!》
何ココ、知らない場所なんだけど。
何処の映画館だ。
で、知らん女。
『誰、君』
《ぅうっ》
『えっ、いや』
《ニャルさんなのに、違うぅ》
あぁ、違う俺を知ってんのか。
しかも俺を頼るとか。
この女ヤバ過ぎじゃね。
『いや、確かに俺はニャルラだけど、違う次元の俺じゃね?』
《ぅう、だと、思いまず》
クソ泣くじゃん。
『で、どう困ってんの』
《ヤバいのが転移しまくってて、友達の空いた体に、多分入った》
嘘は無い。
となると。
『マジか』
《確証は、無いですけど、最悪は、最悪だなと、思って》
『そう言う勘は大概当たる』
《ぅええ》
『面白そうだから手伝ってやる』
《ぅ、ぁ、ありがどうございまず》
クソ泣くじゃん。
大丈夫かコイツ。
『お、おう』
ユノ、ユノナダギ。
マジで変な運だけど、面白いわ、マジで。
何度転移しても変な世界で、やっと良い家の女に、現代に帰って来れたっぽいって時に。
ユノ。
思えばこのクソ女の偽名を使ってたせいで、こうなったのかもだし。
マジで仕返ししてやろ。
この女、家が金持ちだし。
まぁ、顔はクソ不細工って程でも無いし。
整形すれば、かなり売れそうだし。
つかしとけよなマジで。
コイツだけ平凡顔とか、どんな頭してたら平気で生きてけんのか、マジで分かんないんだけど。
まぁ、良いか。
どうせ、バカなんでしょ、学歴も大した事無いし。
はぁ、姉とかならなぁ。
いや、既婚者とか面倒か。
次こそ完全に猫被って、絶対にバレ無い様にしないと。
しないと。
誰に?
何だろう。
何か忘れてる気が。
大事な。
いや、まぁ、そのウチ思い出すか。
『ネネ、起きてる?』
「はーい」
ウチの子が、まるで別人に見えるだなんて。
『アナタ、私、病院に行こうと思うの』
《母さん、どうしたんだい》
『あの子が、ネネがまるで別人に思えて。そう言う病気が有るそうだし、行こうと思うの』
《僕も少し、そう思えてならないんだ。直ぐにでも、3人で行ってみよう》
『ごめんなさい、ありがとう』
ーーピンポーン
まさか、私達が霊能者を家に上げる時が来るなんて、思ってもいなかったわ。
けれど、必死だった。
《はい》
『どうも、本物の音一 音々さんから頼まれました、鳴神 東穂です』
私の目の前には、映画のスクリーン。
で、倒れてる私とネネちゃんの家が半分ずつ映ってて、隣にはニャルラさんがグッタリしてて。
便利。
コレ、どんな魔法なんだろう。
『あの、本物のネネに頼まれたって』
『最近、突然お子さんが別人に思えたのでは。その、本物のお子さんに頼まれたんです、体を奪われた、と』
《もう少し、踏み込んだ証明が貰えるなら、上げるが》
『ユノ・ナダギ、この名前を知らない、と言うか。若しくはどんな言い訳をするか、ですね。コチラはあくまでも本物の娘さんの代理、ですから』
《分かった、暫く待っていてくれないか》
『その合間に電話番号をお見せしますから、終わり次第、お電話下さい。お話は外でも構いませんので』
《分かった、君はコッチを頼むよ》
『はい』
ママ美人、パパダンディ。
うん、確かにこんな家族に囲まれたら、自信無くしちゃうの分かるかも。
《ネネ、少し良いかい》
娘は、辛い目に遭った。
だからこそ、変わってしまっても無理は無い、とは思う。
だが。
「何?」
今まで好まなかった化粧、髪型、服装。
話し方、食べ方。
そのどれもが、ネネとは思えない。
《ユノ・ナダギさんについて、何か知っているかい》
ネネとは違い、分かり易い。
この女は、知っている。
「何か電話来たけど、知らない。って言うか整形したいな、良いよねパパ」
電話が来た程度では無い程、何かを知っている。
この女は、娘では無い。
《そうか、幾らだい》
「取り敢えず目と鼻で、バランス見て次は口だから。んー、分かんない」
《先ずは見積もりを貰いなさい、大事な事だ、何ヶ所かお願いしてきなさい》
「うん、行ってくるからお小遣い欲しいな」
ネネは全て自分で管理していた。
この女は、誰だ。
《待ってなさい、持って来る》
「はーい」
悪霊だとして、何故、寧ろ娘のフリをしない。
そして一体、ユノ・ナダギとは、誰なんだ。
『はい、行ってらっしゃい』
不味い。
不味い不味い不味い。
何処から漏れた。
早い、早過ぎる。
いや、前も単に泳がされてただけ?
クソ。
逃げないと、逃げないと、今度こそ痛い目に。
痛い目に、誰に、遭わされる?
誰に?
つか、何で?
『凄い神経だなおい、散々酷い事をしといて、何で。かよ』
ぁあ、コイツだ。
コイツが私を酷い目に遭わせるヤツだ。
クソ、何で。
「何で、私ばっかり」
『キッモ、いやガワじゃなくて中身な、クソキッモ。流行りに乗るとか超絶キモいわクソ女』
「キャ」
『キャーこの人、痴漢でーすってか。古いわ手口が、もっと斬新な手口披露しろよ内面ブス』
「あ、アンタ」
『前と口調が違うってか、あぁ、でしょうよ別人だし。いや、別人も語弊が有るな、異人、異次元人的な?まぁ、別人は別人だな、俺は敢えて逃がすとか趣味じゃねぇし』
「敢えて」
『おう、クソ焦ったろ、違う俺はソレをクソ楽しんだんだと思うけど。まぁ、違う狙いも有ったかもな』
「はっ、何それ、意味分かんないんですけど」
『はいバカー、察せれないクソバカ確定ー。つかコレに蹂躙される世界とか、強度無さ過ぎじゃね?神とか居ないワケ?え、居ないとかクソ悲劇じゃん。あ、あぁ、そう言う事、成程ね』
「アンタ、何処の電波受信してんの」
『バカは煽るの好きだなぁ、相手を見てケンカ売れよ、ニャルラさんだぞ?』
「何、誰それ」
『それな!知名度!低い!素人だとか一般人の知名度低いんだわマジで、こんなんじゃ世界征服とか。いやいや、冗談だって、世界征服とかクソ面倒臭いしか無いわ』
「マジで、なんなのアンタ」
『あぁ、暗示ってか呪いか。物語で言う傀儡回し、いや狂言回しだっけか、うん、そうそう』
「だからアンタ、一体誰と」
『さ、誰でしょうか、2択だから簡単だよな』
「音一」
『ぶっぶー、バーカバーカ、だから刺されんだよバーカ』
「ユノ」
『はい正解。いや、マジでコレに蹂躙される世界とか本気で大丈夫か?征服してやろうか?いや、別に、軟弱さがクソイライラするだけで。だから別に、あぁ、確かに追い掛けんの面白そうだわ。分かった分かった、無事に確保な』
何で逃がしたか、今分かったわ。
何回追い詰めれば改心するか、だろ。
無いね、コイツに改心とか絶対無い。
無いけど。
まぁ、俺が俺の邪魔するとか無いし。
違う俺に恩を売るとか、超面白そうだしな。
「何で私ばっかり!!」
皆、どうせ裏でも似た様な事してる筈なのに。
どうして私ばっかり。
『無いわー、マジで無いわ。俺は知らないけど、その体の持ち主は、清廉潔白品行方正らしいし。ねぇよ、他人の本名風俗の源氏名にするとか、枕しまくって客に性病移すとか、それで不妊になって逆恨みとか、脅迫して刺されるとか一般人はねぇし、ヲタクに至ってはもっとねぇわ』
「でも、だって、居るじゃん。男に逆恨みされて刺されたとか」
『激レアだわ、つか、それお前だろ』
大画面に、前の私の顔と、名前が。
「違う」
『いやマジで、アレお前だって』
「違う!そんなに悪い事」
『してんだわ』
「違う、私、あんな顔じゃない」
『整形後はな』
「整形の何が悪いのよ!」
『いや一言も整形が悪いとか言ってねぇし、幸せになる手段は其々だろうがよ』
「なら、別に、私だって」
『凄いな、こんだけ言ってもマジで伝わらないとか、そら地獄の最下層にも行くわな』
「えっ」
『いやー、いつか行こうと思ってたんだけどさ、タルくて。うん、そこは助かったわ、良い切っ掛けだった』
「熱っ、何、何コレ」
『コレから全ての苦痛を味わうんだ、ま、頑張れ』
「私が悪かった!ごめんなさい!!ねぇ!聞いてるの!」
世の中には、大々的に表には出ない不思議な事が有る。
起きて直ぐに急いで帰国して、偽ユノの病院に行ったら、空だった。
そして偽ユノは、どう抜け出したのかネネちゃんの家の近くで倒れていて、ネネちゃんの服を着ていた。
そして、亡くなった。
そして本物のネネちゃんは、行方知れず。
『いや俺じゃねぇから』
《じゃあ、何で?》
『さぁ?』
『あ、あの』
《鳴神さん、ですか》
『あぁ、どうも、何とか無事に払えましたけど。娘さん、まだ旅に出てるみたいですね』
『ぁあ』
《ありがとうございます》
『で、今回の報酬はコイツで、異変を察したのはコイツ。ユノ・ナダギですから』
《あぁ、アナタが》
《あ、いや、私は何も》
『構いません、ありがとう、ユノさん』
何にも言えなかった。
知り合いの電話番号に掛けたつもりが、偶々、ネネちゃんの番号に繋がったって嘘を言った。
確かに不思議な事が多いけど、娘さんは異世界ですよ、なんて言える雰囲気じゃなかったし。
戻って来たネネちゃんは覚えて無いかも知れない、しかも、戻って来るかも分からない。
このまま行方知れずなら、多分、このままの方が良い。
『じゃ、お疲れー』
情緒がねぇ。
電源落としてはい終わり、とか。
《じゃの!》
『ひっ』
《ニャルラに、ひっ、とか言われるとか心外なんじゃが》
『何、誰、お前』
《ネネがどうなったか気にならんのかえ?》
『いや、先ず向こうがどうなるか、だろ。どうすんだよ、時間軸だの何だの、整合性取れんのか?』
《そんなもん、こうじゃよ》
『一時停止かよ、単純か』
《じゃの、シンプルイズベストじゃよね》
『いや、クソネタバレ食らったんだけど。コレ、ネネが戻るんだろ』
《さぁ、どうじゃろね》
『マジか、じゃあどうすんだよ』
《先ずは、こう》
画面、振りやがった。
『あぁ、お前もクトゥルフかよ』
《うむ、当ててみい》
『シバッカルだろ、けど災害起こすとか、お前本当にシバッカルか?』
《災害は既に確定しとる事じゃし》
『あぁ』
《くふふふ、まぁまぁ、先ずは続きを観てからじゃよ》
『あぁ、どうせ終わるまで動けないんだろ、観る観る、観ますよ』




