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54 東洋編3。

 うん、罪悪感って凄い怖い。

 正しい事にも自信を持てなくなるし、本当に自己評価が下がっちゃう。


 でも、自己評価が過度に高いと、本当にバカっぽく見えるし。


「ごめん」

《良いの良いの、いつか私も同じ問題にぶち当たるかもだし。私の方こそ、何も言えなくてごめんね》


「寧ろ、私が、神経過敏」

《それは悪口、正しい評価じゃ絶対無い、無神経で鈍感バカの言う事は全て悪口です》


「そう自分が」

《無い無い、絶対無い、無神経な鈍感バカは直ぐに忘れるし他罰的だから絶対にならない。大丈夫、揚げ足取りばっかで、他人に追い詰められてからやっと出来事を自分に良い様に言う程度》


「ごめん」

《ネネちゃんの知らない所で起きた事、分からなくて当たり前なんだから。大丈夫、ネネちゃんの純粋さに漬け込まれただけ、周りも騙されてただけ》


「ソレ、むず痒い」

《優しくて偏見が少ない、の方が良い?》


「無理」

《へへへ、イジメちゃう男の子の気持ちが少し分かるなぁ》


「何でそうなりますかね」

《優しくて滅多に怒らないから》


「んん」

《えへへへ、でも大丈夫。龍人さんが言ってた通り、誇ったり自慢しなくて良いよ。コッチが勝手に思ってるだけで、ネネちゃんが何を言っても絶対に変えないだけだから》


「八方塞がり」

《だねぇ、よしよし》




 ユノちゃんは多分、お母さん適正値が最高位だと思う。


 なのに、自分は何でも無い。

 ちょっと純粋と思われる様な部分が有るだけの、愚鈍な女。


 どんなに褒められても、どんなに慰められても、大失敗をした事には変わらない。

 あの宇宙人に惚れて、受け入れてしまった大失敗は覆らない。


 なら、覆せる方法は有るのか。

 覆せないまでも、どうにか出来無いのか。


 一般的には、幸せになる事、若しくは幸せな結婚なのだろうけど。


 この愚かさを許容する様な人と一緒になりたくないとも思うし、同じレベルはもっと嫌だ。

 何故なら、子供が愚かになるかも知れないから。


 愚か者の連鎖なんて誰も幸せにならない。


 なら、自分より上なら良いのか。

 それも違う。


 上ならきっと、コチラを欺き浮気をし、酷く捨てるのも造作も無く行えるだろう。

 若しくは、愛していると言いながらも、死ぬまで適度に傷付け続けるかも知れない。


 人は、理解し難い。


 根底に、あの宇宙人が膿の様に居続けている事は分かってはいる。

 でもアレは稀有じゃない、そこそこ居る。


 そして例え宇宙人でなかったとしても、とんでもない性癖持ちかも知れない。

 単なる気まぐれかも知れないし、上手く何かを隠しているだけかも知れない。


 それでも信じろ、だなんて。

 自傷行為は趣味じゃない。


 そうだ、だから愚か者のままで良い。

 愚か者なんて愛されるべきでは無いのだから。


 何も出来無い愚者。

 仕方が無い。


 全ては心の平穏の為。

 このままで良いんだ。


『揺らいでいた筈なんだが、お前は頑固だな』


《えっ?》

「はい、頑固で愚か者です」

『良いだろう、案内してやる、愚か者の楽園をな』




 ぶっちゃけ、凄く不愉快だった。


 本当に何にも良い所が無さそうな人が、凄く偉そうに怒鳴ったりキレたり、それこそ殴ったり蹴ったり。

 妖怪さんの方は平謝り、でも周りは助けない。


 それは外での事だったり、家の中での出来事だったり。

 性別は其々、関係性もバラバラ。


《何で助けないんですか?》

『今日と言うその日まで耐え、百鬼夜行を行うからだ』


《百鬼夜行って》

「まさか食べるんですか」

『因果応報、だろう。さ、ココが宴会場だ、この水晶で好きに覗くと良い』




 水晶に映し出したのは、道すがら仲が良さそうな夫婦、だった筈が。


 《ちっ、違うんだ》

 『私が問い詰めなかったら、永遠に白状なさらないつもり、だったのでしょう』


 《あ、さ、誘われて、仕方無しに》

 『あら、私を殺す、とでも脅されたのですか?』


 《そ、し、仕事を》

 『あまり嘘を言うなら、その分だけ、苦しんで貰う事になりますよ?』


 《違、違うんだ》


 『何が、違うんでしょうね』


 以降、男は何も言わず、呆れた妻は黒ずくめの男達を家の中へと招き入れた。

 そうして夫が外へと出されると、楽しそうに後頭部に有る口と共に、食事を初めた。


 「今回は失敗だったな」

 『ですね、自称愛されたい人間、でしたので期待していたんですけど』


 「まぁ、アレだけ阿呆じゃ、誰にも愛されないだろうな」

 『ですね、幾らでも調子に乗れる忘れん坊さんですし、不細工で臭かった』


 「ほれ見ろ、食い物だって多少は見かけが良い方が売れるんだ、ゲテモノはゲテモノ食いに任せておけば良いんだよ」


 『ですね、でも鮟鱇は美味しいんですし、偶にはと思ったんですよ』

「まぁ、確かにドリアンは美味かったが、アレは人だ」


 『ですね』


 一方、連れ出された夫の方を覗くと。


 《ち、違うんだ》

 「何が違うんだ、不道徳不義理、不誠実を行ったのは確かだろう」

 『逃げ出せば更に苦痛が待っているぞ』


 百鬼夜行の日に、外に居る。

 それだけで、既に逃げ出した先の更なる悲劇を予想出来るだろうに、と思っていたのに。


 男は逃げ出した。


 《俺は悪くない!傷付ける気も!悪意も無かったんだ!》


 そう必死に叫びながら、百鬼夜行が行進する街道へと、吸い込まれる様に向かい。


 《ぉお、来た来た》

 『反省の匂いがクソ程もしないクソが来たぞ』

 「あぁ、良い奥さんをココでも裏切ったクソの匂いが、ココまで来てるな」


 《ひっ》


 《あぁ、アホだアホだ、実にバカバカしい》

 『知っていたろう、ココは前とは違う、だがお前が望んだ通りの妻。だったろうに』

 「それすら裏切るんだ、何処でどう生きようともクソはクソ、バカは改心なんぞしない。コレで、俺の勝ち星がまた増えたな、三十二万と五百九十一点目だ」


 《負けた負けた、愉快な負けだ》

 『そろそろ飽きたろ、コレで試すのは三十二万と五百九十一回目なんだ』

 「まだまだ、次の物好きが居るんだ、さっさと次へ行けこのクズが」


 《ぁ、あ》


 そうして何をされたのか、男は喚き暴れたが。

 妖怪達はクスクスと眺めるばかり。


 そして黒ずくめの男達が現れたかと思うと、朧車に姿を変え、また何処かへと連れ去って行った。


《コレ》

「確かには加工はしていない、とも言えますが」

『余計なものを一時的に消してはいるが、あくまでも馴染ませる為だ、ゴミを有効活用する為の鞣し。全く消されていないのも居るが、来るか』


「はい」




 何か、もっと、逆に精神的にグロテスクだった。

 何もかもが一貫性の無い事を言って当たり散らしてた人が、逆襲されてた。


 魔道具の録画データを使って、1つ1つ、家族や友人の前で確認させられてて。

 自分なら嫌だけど、もしネネちゃんが、それこそ子供がされたらこうしちゃうかも知れないって思った。


 それ位に矛盾ばかりで、支離滅裂で、なのに自信満々に言ってて。


 尋問する方も凄い苦痛だろうなって思ってたのに、妖怪、サトリだから凄く楽しい筈だって言われて。


《もう、分かんないや》

「ココにはココの決まりが有る」

『あぁ、こう他人事なら理解が早いが』


「自分の事となると」

『愚か者なら愛されずとも仕方が無い、か』


 あ、怒った。

 って言うかそんな事を考えてたんだ、ネネちゃん。


「何で」

『死んだ者、縁が切れた筈の者に未だに引きずられているなら、断ち切ってやるのも優しさだろう。次だ、ココにすらもう居ない者の、最後の居場所に案内する』




 暴かれた。

 浅はかで愚かな考えを、暴露された。


 なのに。


《うん、凄く自分に厳しいんだなって分かったけど、私はあんまり嫌だな?》

「ごめん」


《あ、悪いとかじゃなくてね。ごめんね、良い事が言えなくて》

「違う、私が」

『着いたぞ、下ろしてやろうか』


「何で、嫌な事ばかり」

『お前が意固地だからだ、どうする、行くのか行かないのか』


「行きます」


 いつか、心の傷は癒える。


 そんなのは嘘だ。

 どう治療しても、放置しても傷は膿を出し続け、広がる。


 だから悪臭が漏れない様に、覆ってくれたガーゼの下がバレない様にする、それが優しい言葉を掛けてくれた人へのせめてものマナー。


 なのに。

 何故、どうして。


《ココ》

『あぁ、墓所だ』


 壁沿いには天井まで三角の水晶が均等に、ビッシリと並べられ。

 1つ1つの水晶の内部には、仏様が彫られており。


「何処かで見た様な」

『あぁ、とある寺院を模したらしい』


「あぁ」

『1つ、手に取り覗いてみると良い』


 言われた通り、手近な水晶を手に取ると。

 向こうでの映像、そして違う面から覗き込むと、コチラでの生活が映し出された。


 全て、本当に転移転生者のモノらしい。


「ココの方は」

『単なる墓に入る事になる、ココの事も、単なる寺院としか思っていない』

《コレ全部、そうなんですか?》


『あぁ、善き者を除いて、だ』

「死体蹴りでは」


『その死体に生前蹴られていた者の無念はどうなる、悪しき見本を永遠に葬り去って何になる。地獄を見たくなくば行いを正せ、死体を蹴られたく無くば清く生きれば良い。そう出来ぬ者が地獄に落ちる事を残酷だと言うのなら、勝手に供養なりすれば良い』


 良く似た異界の地獄。

 そこに落ちた者に同情する程の余裕は、無い。


「お線香だけにしておきます」

『優しいなお前は』


「ですから」

『墓石を冒涜する、死者を慮らず侮辱し、未だに死体を引きずり出し蔑む。そうして来た者達の末路だ、手を合わせ線香を供えてやるなど、弁えていなければ出来ぬ事だろう』


「単なる線引きです、彼ら彼女達とは違う、と」

『この先だ、くれてやれ』


「祖母から、食事だと伺いました。精々、奪い合えば良いと思ってます」

『あぁ、俺もだ』


「神霊、だからですか」

『いや、寧ろ善き者を虐げる、そうした者を疎んで当然だろう。ただ、害虫にすら塚を作り供養する、そこに文句は無い』


「本当に神様とは違うんですね」

『何処ぞの神とは、な。いつか全てを救う、などとはあまりにも放置が過ぎる、しかも不平等で不公平だ。俺は直ぐに、手近な者を掬い上げる方が良い、いつまでも傷を抱えさせる事を試練と呼ぶなんぞ気に食わん』


「傷は、どうすれば、癒えるのでしょうか」


『あぁ、不平等、不公平。特別を嫌っての事か、気に入った、少し手を貸してやる』


 もし、気が合う神様が居たなら、少しだけお願いしようと思っていた。

 どうにかしたいけれど、どうにも出来無い事を、少しだけどうにかして欲しいと。




《ネネちゃん》


「ごめん、多分、急に」

《ううん、それより具合は?気持ち悪いとかは無い?》


「無い、けどふわふわする、夢を見てた」

《良い夢だった?》


「傷が無い、塞がってた、自分だった」


 私とも普通に過ごせて、それこそルーイさんを振って、レオンハルトさんと結婚して。

 普通に過ごして、普通に育てて、普通に老衰で亡くなった夢を見たって。


《幸せだった?》


「不自然だと思った、傷が無い様に振る舞って、実際にも傷が無い。でも、何か、違う気がした」

『だろうな、傷が塞がると言う事は、痛まなくなると言う事だ。その感覚だけを遮断し、どう道を選ぶか、お前の頭が選んだ事だ』


「頭が」


『未だにお前は勘を信じてはいないのだろう、勘は頭だけでは無い、お前の本質も関わる事になる』

「本質」


『何を良しとし、善いと思うか、何を悪とし嫌悪するか。混ざりの無い、お前の生来の感覚、感性の事だ』


「急に現代的な事を仰る」

『そう冷静になる所も良いが、良い悪いを嗅ぎ分ける勘を信じる、そうした事も考えておけ』


「勘と頭が違う時は」

『時と事情によるが、大半は勘が当たる、お前の失敗は勘を疎かにした事だ。何かしら気に食わないと感じただろう、ソレをお前は無視をした』


 思い当たる節が有ったみたいで、ネネちゃんが顔を押さえ込んだ。


「最初の印象で」

『他者を、他者の感性を否定する者を受け入れて、お前はどうなった』


「大失敗した」


 吐き出す様に話して、大きく息を吸い込んで、また吐き出して。


《あの、確かに勘も大事だとは思うんですけど。やっぱり、向こうで生きるには》

『本能を完全に捻じ伏せろ、ソレが本当に人の生き方だと思うのか』


 単にイメージで嫌って差別するな、は分るんだけど。

 嫌うな、嫌悪するなって、やっぱり押し付けだと思う。


 けど。


「いえ、他者を害さない、実害が明らかに無いなら無視すべきです」

『阿るな、無駄だ、愚か者には特にな』


 うん、言い方はアレだけど、だよね。


 でもネネちゃん優しいし、色々と知ってるからこそ、悩んじゃうんだと思うんだよね。

 嫌でも食べてみる、我慢してみるって努力したのに、大失敗だった。


 なら努力したくなくなるよね、勿論、受け入れるのも。


「顔でも、選びます」

《そこから?》


「顔で選ぶなんて下品な女だ勢、が周囲に多かったので」

《微妙に周りに恵まれて無いよねぇ》


「ですね」

《しかも顔面偏差値高い所に放り込まれたんだもんね、身を守るにも警戒すべきだったけど》

『ココで生きるなら慣れろ、所詮はガワ、されどガワ。人のガワは容易く変えられんが、俺達には造作も無い事、だが敢えて得ようとするモノも居る』


「個性と、血筋」

『そうしたモノを否定する事は、本当に正しいのか』


「いえ、大なり小なり重要視されるべきです、子供の為にも、国の為にも」

『致し方無く、お前は間違えるに至った、後はただ正すだけだ』


「でも、まだ塩梅に迷いが有ります」

『コレが居るだろう』

《お、頑張らないと》


「ごめんなさい、手間が掛かる子で」

《ううん、慎重なのは良い事だし、理由も分るから大丈夫。一緒に頑張ろう》


「ありがとう」




 不意に幸せが、心の支えが取り上げられる。

 ソレは時に事故だったり、事件だったり、災害だったり。


 けれど、コレは多分、運命だったのだと思う。


 ユノちゃんは、急に消えてしまった。

 前触れも無く、何の気配も無しに、不意に。


「そ、何で」

『お前は知らなかったか、役目を終えれば帰還、転移を果たす。それが来訪者だ』


「役目」


『お前が真に信頼し、頼る、その手助けも有ったのだろう』


「なら、私も」

『帰還を望む者は、だ』


「何処かに」

『悪魔達に書簡を送ってやるが、期待はするな、アレはもうこの世には居ない』


 心細さと同時に、ユノちゃんが大丈夫なのか心配になった。

 道具は、準備は。


 次も安全とは限らない。

 次こそ、あの偽ユノと。


「どうにか」

『悪魔と契約を結び、追い掛けるか、足手まといにはならないと誓えるか』


 いや、約束していた。

 自分はココで、ユノちゃんは次へ、どんなに不意の状況でも決して変えない約束。


 ダメだ、もう1人なんだから、もっとしっかりしないと。


「いえ」


『メシにする、何が食いたい』


「イクラ丼」

『食わせてやる、ココの日出る国も中々だと、分からせてやろう』

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