50 元老院。
「どうぞ」
今回、表立って発言をしていたお2人。
元老院は全員で7人。
どうせ、七賢者を真似て7人で構成しているんでしょうよ。
『統治者には、何が必要だと思うだろうか』
この声、何処か聞き覚えが有るんですよね。
誰だろう、誰だったか。
「賢さ、時に人の気持ちを慮り、時に重要だろう筈の者を掃除道具の様に扱う事ですかね」
言わなきゃやってられません。
『ふむ、だけ、だろうか』
「色々と有るでしょうけれど、まだ」
《いや、見極めは魔獣達を得た段階で、既に終えているのは本当なのだよ》
「で、次は何の試験ですかね」
『統治者には、寛容さも無ければいかん、そうは思わんかね』
「そうですね、寛大さに大変救われて、帝国の王の血縁者ですか」
『あぁ、この髭で良くお分かりになられた』
「はぁ」
聞き覚えが有るワケだ。
親子は声が似るのだから。
《全然、気付かなかった》
「声です、お披露目で聞いた声と似てます」
《あー、あ?》
「直ぐに分かる予定でしたか」
『いや、ソチラにしてみれば見慣れぬ外見、そう見抜かれる確率は低いだろうと見込んでいたんだが』
《絶対音感は、声も聞き分けますか》
「いえ、偶々かと、アナタが誰の血筋か」
《そうでしょう、なんせ血の繋がらぬ、強欲の系譜ですからな》
「そうですか、で」
『そう謀った事を憤ってはいても、いずれは許して下さるのでしょう、優しき来訪者様は』
毒気を抜かれた。
年寄りの下手技は強い。
「そうかも知れませんが、死んでも王族皇族に連なるのは嫌です」
『なら婚姻の際は、コレらは籍を外させましょう』
《その証書です、どうぞ》
「また、謀られた」
『なんの、婚姻含め、コレはあくまでも任意』
《今回、多大な功績を上げて頂いたのです、寧ろ下賜など当然の事。ですので、先ずはお受け取りを、ご成婚は任意ですから》
「コレは彼らの免罪符にしかならないんですが」
『賢き来訪者様には、確かに不足かも知れません』
《どうぞ、コレらは予備の予備として置いて頂いて構いません》
「なんせ、多大な功績を上げたから」
『遊園地、我々も是非にと』
《楽しみにしておりますよ》
何処から、いつから。
いや、最初からか。
「王子達は」
『まぁ、ココまで見抜けていたら、及第点』
《だが、ココまでとは、思っていなかっただろう》
『となれば、下賜に値しないかも知れんが』
《まぁ、盾位にはなるでしょう》
最初から、ココまでの事を想定していた。
だからこそルーイ氏でレオンハルト氏、そして予備にカイル氏。
「まだ、最低でも手札が4枚、残っていますよね」
《ウチのは、その黒蛇だ》
『人種が必ず人種に惚れるとは、限らんのだからね』
《あぁ、別に誘導はしておりませんよ》
『ただ幾ばくか情報を与え、選び易い様、道を整備しただけですがね』
完璧に、してやられた。
「全部、思惑通り」
『いやいや、コチラもまだまだ』
《猜疑心を高め過ぎてしまった事を、深く、お詫び申し上げます》
『どうか許してはくれないだろうか』
《どうか、コレからも、ご指導ご鞭撻頂けますと幸いです》
「要らんでしょうよ」
《いえいえ、滅相も無い》
『猜疑心を高め過ぎてしまった、侮ってしまう結果になった事は、非常に心苦しい限り』
誠意を見せろ。
そう詰め寄る者の気持ちが分かってしまった。
「はぁ」
《ネネちゃん、ギブ》
「ユノちゃん?」
《熱、出そう》
「あ」
『本当に、申し訳無い』
《どうかご静養を、では》
流石に慌ててた。
つまり、多少は善意は有る?
『すまなかった』
《ごめん、後の事は追々で》
《へへ、ごめーん》
「ううん、寧ろ助かった、ありがとう」
《へへへ》
最初、わー、凄い策略まみれだったんだー。
とか思ってたんだけど、もう、すっかり頭が回らなくて。
「ごめん、少し先に」
《良いの良いの、私、良く知恵熱を出すお兄ちゃんを甘く見てたんだ。そのバチが当たったんだと思う》
「それは、知恵熱出すって珍しいし」
《何かね、やっと分かったんだよね、実感した》
知識が大量に入って来るだけじゃなくて、感情も昂ったりこんがらがると、出るんだなって。
それだけ感受性が豊かで、その分だけ大変だったんだろなって。
やっと分かった。
「そんな、辞世の句を残す前みたいに」
《ふふふ、お祖父ちゃんが看病してくれた時、それ良く聞いたなぁ》
で、縁起でも無いって怒られてた。
「面白いお祖父ちゃん」
《うん》
良くお兄ちゃんの看病してて、私はこの通り健康体で。
可哀想だな、大変そうだなとは思ってたけど、それだけ。
こうやって、申し訳無いなとか、情けないなとか思ってたかもなんて。
全然、考えてもいなかったから。
「健康体なりの悩み」
《ね、悩みは有るだろうなとは思ってたけど、全然具体的に考えて無かった》
お兄ちゃんだって子供だったのに。
浅い考えのまんま大人になっちゃって。
家族の事は棚上げして、世界を見て回るだー、なんて。
そりゃ嫌味を言われるワケだよね。
身近な事に気が付けないなら、何処に行っても一緒じゃないのかって。
「普通に、健康体への嫌味も含むのでは」
《でもさ、こうなると凄く、違って見える》
同級生に体の弱い子が居てね。
その子が入院したから、皆で色紙を書こうってなって。
そこに来れなかった日の出来事とか、写真も付けようってなったんだけど。
お兄ちゃん、キレながら大反対したんだよね。
羨ましがらせて何が楽しいって。
で、家族会議して、やっと私も何がマズいか分かったんだけど。
そこ止まり。
クラス会で、やっぱり止めた方が良いかもって言ったんだけど、続行。
それも怒られた。
止められなかったなら、せめてちゃんとフォローしろって。
で、退院して来て、嫌だったらごめんねって個別に謝ったんだ。
そしたらやっぱり、羨ましかったって泣かれて、もう少しちゃんと止めれば良かったって後悔した。
「いや、それこそ同調圧力が」
《そうやってお前は友達が悪い事をしようとしても、全力で止めないのか、止める気が無いのかって》
違うって言って、また家族会議。
馬鹿は大嫌いだって、一時期は無視されまくって、けどへっちゃらで。
まぁ家族だから、そのウチなぁなぁになったんだけど。
そんな喧嘩ばっかで。
お兄ちゃんの事、ちょっと合わない人だなって思ってたんだけど。
私が、無神経過ぎたんだよね。
「子供だから」
《でも、思い遣りは大切だよ、慮れないのはダメだよ》
お兄ちゃんに、謝りたい。
『うん、早く元気になろう、だから眠ろうね?』
《うん》
ユノちゃんに、もっと何か。
《コレが突発的である事は、既に身に染みているだろう》
「黒蛇さん」
《ユノがお前を頼って言ったのだ、十分だろう》
「何をしてあげれば」
《元は元老院の策略が原因だ、お前が過剰に背負う必要は無い、いつも通りにしてやれば良い》
経験者が居るのは、本当に助かる。
「助かります、師匠」
《師匠は、幾ばくかむず痒さが湧くんだが》
「シニアは老人も指しますし、もっと身近で、人生の“先輩”ココには無い単語かと」
《あぁ、確かにな》
「じゃあ師匠」
《もう少し考えてみないか》
「お祖父ちゃん」
しまった、ムキになられた。
《この外見でもか》
「いえ滅相も無い」
《お前が落ち込む必要は無い、課題の分離だ。箱にしまい、出来る事を考えろ》
「快気祝い」
《あぁ、そうだな、豪勢に祝い。以後、もう少し前に止めに入らせれば良い》
「それ、本当に狡い手なんですが」
《ネネは正直者だからな》
「そして馬鹿を見た」
《確かに、幾ばくかの侮りが有ったのだろう》
「若い娘だから」
《お前は自身の種族の見た目の若さを、幾ばくか甘く見ているだろう》
「あぁ、まぁ」
《しかも孫や曾孫が惚れた娘、侮ったとて仕方あるまいよ》
「まぁ、元皇帝が頭を下げる程ですし」
《そう言う事だ》
「凄い、元皇帝に頭を下げさせるとか凄い」
《お前まで熱を出すな》
「あ、はい、事実を一旦は無視しておきます」
《そうだな、先ずは豪勢な快気祝いだ》
「ありがとうございます」
《なら、偶には》
『ネネ、邪魔してあげようか』
「是非お願いします」
危ない。
人型になると必ず口説こうとするんだ、この蛇さん。




