47 ピアノレッスン。
息抜きにって、城内をお散歩してて。
音楽室だって所にピアノが有って、私は弾けないからネネちゃんに何か弾いてってリクエストしたんだけど。
全然、上手いと思う。
って言うか。
《何か、聞いた事有るかも》
「ピア〇レッスン」
《あー、映画の、観た事無いけど》
「私も無い、父が好きで聞いてて、気に入って練習した」
《私もお母さんが一時期流しまくってた、楽譜読めるって凄いよねぇ、どの位練習した?》
「それなりに、如何に楽譜通りに弾くかだから楽だよ、クラシックは意外と個性だから」
《そっかー、あ、じゃあリクエストしたら難しい?》
「ものによる」
《テレビで流れてたヤツ》
「了解」
そう言ってネネちゃんは直ぐに弾き始めた。
凄い、楽譜が頭に入ってるのかな、それとも音かな。
《今のも、聞いた事有る》
「SP〇Cのメインテーマ」
《あぁ!》
「知っててくれて何よりです」
《アレ面白かったよねぇ、映画も見に行ったよ、お兄ちゃんと》
「特殊能力、欲しかった」
《有るじゃん、絶対音感》
「だけ、だとね。先ずは興味、それからリズム感、比べないか比べるなら負けん気が有るか。凄い人のを聞いて、あ、無理だってなった」
《いきなり上を聞かせたのが敗因?》
「どうだろ、この性格だから、何時は問題じゃ無かったと思う」
《嫌い?》
「いや、好きだよ、嫌な思い出が絡まなければ」
《あぁ、あ、劇中の音楽を残すのも良いんじゃない?》
「著作権、ココ、どうなってるんだろ」
《確かに》
《聞かせて貰ったわお姉様!!》
「あぁ、どうも」
《素晴らしかったですわお姉様!》
《ドア閉めてた筈だよね?》
《誰かが弾くと王の執務室に流れますの、ですから私急いで来ましたわ、やっぱりお姉様だったんですもの》
「あぁ」
《あ、そっか、見極め用に色んな仕掛けが有るのかも?》
「成程」
《お姉様、もう1度聞かせて下さいません?》
「あー、今のは伝統音楽でも何でも無い」
《それはあくまでも分類ですわ、素敵なモノは素敵、ですわよね?》
「まぁ、はい」
《それに、どうやら劇中音楽と言う事ですし、その劇の事も詳しくお願い出来ません?》
《勿論!超面白いんだから、ね?》
「ですね」
《あ、先ずは楽譜が先?》
《アンドレアルフス、楽譜とペンを出して》
娯楽がさして発達していない場所で、良かったのかも知れない。
素人でも、幾ばくか気分は良くなるのだから。
いや、コレも敢えてかも知れない。
何も出来る事が無いとなれば、無気力になってしまう、その逃げ道として敢えて制限しているのかもしれない。
「はい、出来ました」
《魅入っちゃった、凄いスラスラ書くんだもん》
《本当、凄いですわお姉様》
「習い事程度ですから、それよりエル様、何故この様に娯楽が少ないのでしょうか」
《そうですわね、折角ですから陛下にもお見せしてから、で宜しいかしら?》
「はい、宜しくお願い致します」
お姉様のご懸念通り、敢えて制限されている事は有りますわ。
けれど。
《そんな、来訪者様を持ち上げる為では》
『そう疑うのも無理は無いわ、最初が最初だもの』
《ごめんなさい、お姉様、しっかり処罰させますわ》
「あ、はい」
『今は音楽の事、他にも何か出るかしら?』
「いえ、原曲が出せるモノは限られます、私の習い事はピアノだけでしたから」
《でもアレンジとかは?》
「アレンジって難しいんですよ、元を壊さず崩さず、ジャズを学ぶ前に諦めた程度ですから」
《何か有った?それとも凄い人の存在?》
「ざっと言うと、アレンジした曲を家族が知り合いに聞かせて、忘れた頃に私がアレンジしたのに似たモノが世に出た」
《絶句、でも才能が》
「その人がアレンジした曲の方が素敵だった」
《ご家族は何か仰られてましたの?》
「怒って謝ってくれましたけど、そっちの方が良いので、何もしてない筈です。多分」
《多分?》
「別業界に転向してました、例の堕落の魔道具の、更に進化したモノです」
《あぁ、ソッチかぁ》
《ソッチ?》
「例の堕落の魔道具は、専門家があらゆるモノを映していたんですが、もう1つは素人でも映し出せるんです」
《うん、です。準備が簡単になって、その魔道具の専門家で無くとも出来る、って感じですね》
《そう、素敵だけれど、難しそうですわ》
『そうね、何事も制約が無ければ、法が機能していなければ無法地帯と化してしまうもの』
「仰る通り、中には大きな商家へ大打撃を与えた悪戯も映し出され、高額な弁済費用について裁判が行われた程ですから」
《あー、しかも何人も似た様な事をやってたんだよねぇ、未成年も大人も》
《制限無く凶器を持たせるだなんて》
『進化が歪なのだもの、仕方の無い事なのよ』
「はぁ、すみません、他にも有るんです。通りすがりに殴り付ける事が面白い、と勘違いする輩とか」
《場所によるんですよぉ、本当》
「まぁ、うん」
『けれど、専門家に盗用されるだなんて、とても凄い事だとは思わないのかしら』
「何の音楽の下地も無しに音楽は作れません、そうして結果的に似る事も有れば盗用の可能性も有る、アレンジに至っては著作権は作者のモノ。それに、稼ぐ為では無く自分が好きでした事、相談が有ればより良く仕上がったアレンジを諸手を挙げて喜んだでしょう」
《相談が有れば、ね》
「そこも職業病だと思います、もしかすれば向こうは善意だったかも知れない。直ぐに出されたワケでは無いので、ふと思い出し乗せただけ、かも知れない」
『けれど、もし探ってしまったら、悪意か善意かが分かってしまう』
「はい、良かれと思い、気軽に乗せただけ。そう思いたかったので、不問にとお願いしました」
『そう、良い子ね』
「好きなモノを穢されたくは無いので」
《ネネちゃんが思いたい方にする、うん、善意でした》
「うん、ありがとう」
《そのアレンジした曲、大丈夫?》
「勿論、楽譜も乗ってて覚えてるから」
《あー、確かに悪意無さそうだけど、収入になるからなぁ》
「まぁ、その分は損もしてる筈ですから」
《そっか》
『では、次に著作権について、かしらね』
「はい」
著作権は有った。
けれど転移転生者の曲は、全て別枠。
『来訪者様の為の基金として、別途、各国で破格の値段で徴収しているわ』
「来たるべきご本人の為にも」
『ええ、それこそユング氏やフロイト氏が来られたなら、それ相応の対応もさせて頂くつもりよ』
「結構、アレな方だった筈ですが」
《あー、どっちだったか、患者に手を出しまくってたんだっけ?》
「良くご存知で、裕福なユングの方、貧しいフロイトにそんな余裕は無かったので」
《あぁ、お店に教授が来ててね、色々と教えてくれたんだ》
「羨ましい、ウチは兄、何故イジメるのか分からなかったので」
《凄い理路整然と説明されそう》
「その通り。因みに、と彼らの私生活も教えて貰ってコレです」
《ちょっと早かったかなー?》
「いえ、下手に尊敬しないで済んだので助かりました」
『では、オットー・グロースについてはどうかしら』
《聞いた事無いですけど》
「ユングを変えた1人ですね、精神科医ですが薬物中毒から衰弱死か何かかと」
『彼の中身は、ゲヘナの者だったのよ』
《絶句》
『良かれと思い助言したそうなのだけれど、ね』
「あぁ、宗教に縛られ過ぎるな、と」
『そうなの』
「果ては一夫多妻制まで提唱したんですよ」
《振り切れ方ぁ》
「悪しき抑圧の、良い、見本」
『ふふふ、良かれと思い助力した、ただ向こうでは自身の記憶は曖昧だった。そうとしか聞かされていないの、ごめんなさいね』
《あー、じゃあ誰が、とか分かりますかね?》
『カイム準男爵よ』
「準男爵は、確か最下位では」
『そうね、今は地方で教師をなさっているわ、直ぐに会える筈よ』
「では明日、ヒナ様に尋ねてみます」
『そうね』
《突っ込んじゃうけど、アドラーも知ってるよね?》
「黙秘で」
《知ってるじゃーん》
「知ってても実践は難しいんです」
《課題の分離、難しいもんねー?》
「良い教授に恵まれましたね」
《うん、共同の課題もセットだって聞いた》
『そうね、ふふふ』
《お姉様、やはり課題の分離は難しいんですの?》
「他者には出来るんですが、自分の事となると、はい」
『赤狐、アナタがしっかりしていないからよ』
『ごめんね』
『けれど、完全に分離は難しい、いえ寧ろ完全な分離は必要無い』
「共同体の意識が有ってこその、社会生活、ですけど」
《お姉様はアナタの事を自身の事の様に悲しんでいるの、その意味がお分かりになるわよね?》
『うん、ありがとう』
モフモフ。
モフモフは強い。
《よし、では休憩で》
『そうね、では、私達は先に音楽室へ移動しましょうか』
《ですわね、待ってますねお姉様》
「はい」
モフモフ。
《ネネちゃん、色々と大変だったね》
「まぁ、多少は」
《周りも似た様なのが居たって言うけど、それ本当だったのかな》
「まさか」
《あのね、残念なお知らせなんだけど、そうした揉め事が無い人も多いんだよぉ》
「またまた」
《殆どが自業自得だから一部を隠して言ったり、それを本当の事の様に言ったり、そう信じ込んでたり。見えて無い、気付かない人ってマジで居るんだぁ》
「そこは、確かに、恵まれてるかも」
《逆に多かったなぁ、店で》
「あぁ」
《門限は五月蠅く言うし、連絡を直ぐに返さないと面倒な彼で、もう別れたーい。って》
「だが、その実態は」
《浮気の前科が有ります、しかも距離がめっちゃ近い系》
「あぁ」
《コレが私だし、仕事だし、勘違いする方が悪くない?》
「おぅふ」
《まぁ、黙って飲みに行っただけ、って程度の浮気と言えばそうなんだけどね》
「された方にしてみれば」
《いつ、更にマジな浮気をされるか、心配になっちゃうんじゃない?って言ったんだけどね》
「言ったんだ」
《嫌なら別れるしか無いよね、って》
「分からない」
《まぁ、今までの彼氏が片手じゃ収まらないって子だし、次はもっと良いのが来ると思ってるんだろうね。って、教授が解説してくれたんだ》
「エグぅ」
《あ、教授はお見合い結婚で、そのままラブラブ世代だから》
「羨ましぃ、その時代に戻して欲しい」
《けど賭けになるよ?家族にまで猫被りする様なヤツだと、モラれちゃう》
「離婚します」
《だよねぇ、けど良いのから先に売れるワケでして》
「その子、自分の鮮度が日に日に落ちてるとは思わないのかしら」
《そうでも無さそうだったよ、最初自慢してた男より、明らかにスペック落ちしてるし。そこは現実的なんだなって思った》
「生きるバランス感覚は有る」
《けど直ぐに離婚して出産して、お帰りー、だよ》
「はぁ」
《でも全然、気にして無いの、そこは凄いなーって思った》
「見習いたいとはあんまり思えないけどね」
《そうそう、強さだけね。後は嫉妬されて困ってるー、だとか、喧嘩したーとか。どれもこれも水商売を辞めれば終わる事だったり、同じ水商売に惚れて困ってるだとかを、延々と愚痴ってるだけだから。比べるワケじゃないけど、ネネちゃんの苦労は十分に苦労だよ、それこそ相手は嘘を言ってたかも知れないんだから》
「まぁ、確かに、確かめた事も無いし」
《そうそう、何でも全部半々で聞いて、態度を見てから考える。どうだった?その友達、本当に苦労してそうだった?》
「いや、普通に親の紹介で結婚して、幸せそうだけど」
《どの子も?》
「まぁ、多少は働いてる子も居るけど、問題は聞かないけど」
《何も無いって恥ずかしいんだよ、凄い子居たんだ、同級生に》




