表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/100

34 才女。

「長く寝過ぎると頭痛がするものですが」

《やっぱり違う世界だからかなぁ、うん、スッキリ爽快》


「ですね」


 そう言ったかと思うと、突然ネネちゃんが顔を押さえて。


《どしたの?今頭が痛くなった?》

「いえ、ただ、朦朧として行動すると、後々になって凄く恥ずかしい事になるなと思いまして」


《あー、レオンハルト様の部屋に行ったんだもんねぇ》

「と言うか、抱かれても良いから今直ぐに色々と教えろ、と迫りました」


《ネネちゃぁん》

「不安で、いたたまれず、つい」


《安売りはダメだよ?もっと高嶺の花になろ?》

「善処します」


《もー》

「マジで、安売りし過ぎたと思います、もうしません」


《うん、絶対に、ね?》

「はい、絶対に、だ」


 って言うかネネちゃん、何が、どれが不安だったんだろ。


《どれが不安だったの?》


「見落としてた事」


《それは》

「自分が無意識に無視してた事が、凄く怖かった。そうしない様に意識してたのに、気を付けてたのに意識から外れてて、凄く怖かった」


《うん、私も。他を経験してたのに、ごめんね》


「いえ、コレは謝り合うだけになりそうなので、終わった事にしましょう」

《うん、でも頂点に会いに言った事については、少しだけ言いたいな》


「無茶だとは思って無いので謝りませんよ」

《でも次は、もう少し他の人にも相談してね?》


「はい」


《よし、ゴハンにしよう》

「ですね」


 先ずは食べてから、ね。




《お兄様、レオンハルト様、おはようございます》

『おはようございます、エル様』

《おはようエル、さ、頂こうか》


《はい》


 我慢強い子で助かる、あの木製の建物について話したいだろうに。

 けれど朝食は朝食、しっかりと領分を弁えてくれる。


 本当に、全く、アレの何が良いのかまるで分からない。


《エル、少しだけ許可してあげるよ》

《アレはもう最高傑作ですわ、だからこそ、転用されては非常に困ります》


《だろうね》

《ですが、覆ってしまえば良いのです、見えなければどうと言う事は有りませんわ》


《けれど、鉄道に関わってしまう事になるよ》

《お兄様、そろそろ鉄道を開通させても宜しいと思うんですの、それこそ鉄道も娯楽として運用される事も有るんですもの》


《けれど機関部はどうするんだい》

《ふふふ、それこそ何某かの動力に頼る事こそ間違いですわ、誰かに走らせれば良いだけ》


《問題は、走ってくれるかどうか、だね》

《いいえ、それも問題有りませんわ、競技とすれば良いんですもの》


 有形無形問わず、競う事を好むモノは一定数存在している。

 しかも安心安全に競えるとなれば、その数は更に増えるだろう。


《なら、しっかり食べ終えてから、書簡を書き上げよう》

《はい》


 この案を更に洗練させれば、技術革新を抑えつつも娯楽が広まり、人も物も更に動く事になる。


 そしていずれエルは功績を手に最高位となり、ネネは自由を得る。

 功績の無いモノを自由にさせる程、この世界は優しくない。


 人種は時に餌なのだから。




「えっ、採用されそうって」

『勿論、技術革新を抑えて尚、利用出来る目処が立ったと言う事よ』

《おぉ、一夜にしてそこまで》


「具体案を聞けるんでしょうか」

『勿論よ、けれど、また熱が出ても困るわ。今日はその知らせだけ、迎え入れる環境整備について、ね?』


《ネネちゃん、我慢出来る?》


「もう、全然、無理」

『ふふふ、そう言うと思って既に招待して有るの、その危険性について考査して下さった方を。今日のお茶会に、出席して頂けるかしら?』


「是非、お願いします」


 もう、頭の中はその事ばかり。


 コレは現実逃避だとも思う、けれど建設的前向きな現実逃避。

 もしかして、初めて異世界に来た事に感謝したかも知れない。


 遊園地に関われるなんて、思ってもいなかった。


 でも、正直、嫌な面は見たくない。

 聖地で、聖域で、穢されて欲しくない場所。


 ケチが付く様なら、勇気有る撤退をする。


 遊園地が無くても死なないから、諦める。

 泣く泣く、致し方無く。




《私、エルと申します。お兄様がお世話になっているそうで、宜しくお願い致しますわね、お姉様》


 ネネちゃん、固まってる。


《あの》

《あ、ミモザの姫、ご機嫌よう。大変有益な情報を頂きました事、感謝してもしきれませんわ、不自由の無い様に私からも伝えておきますわね》


 キラキラ金髪の巻き毛の、お人形みたいな子。

 明るくて、ハツラツとしてて、誰の妹さんなんだろ。


《ふふ、僕の妹だよ》

《あ、レオンハルト様は仏頂面で判別が付き難いですものね、失礼しましたわ》

「いえ、コチラこそ失礼致しました、宜しくお願い致します、エル様」

《宜しくお願い致します》

『さぁ、お掛けになって皆さん、コレは長くなりそうだもの』


《勿論ですわ陛下、コレはとても素晴らしく、とても素敵な事なのですから》


 ネネちゃんと同じか、それ以上に目をキラキラさせて、如何に技術革新をさせず鉄道を引くか。

 如何に遊園地のコースターが可能か、私でも分かる様に説明してくれて。


『どうやら本当に、可能そうね』

《はい、勿論ですわ》

「ありがとうございますエル様、遊園地を、どうか宜しくお願い致します」


《あら、何を仰いますの?共に作り上げましょうよ、お姉様》


「いえ、私には人種のみの案しか御座いませんので、大してお役には立てないかと。寧ろ、来訪者用の環境整備について進言させて頂きたいので、遊園地の案は随時書簡でお送りさせて頂きたく」


《分かったわ、ですけど何時でも私のお部屋にいらして頂戴ね?》

「はい、ありがとうございます」


 ネネちゃんの事を知ってるからこそ、何も言えなかった。

 多分、遊園地に関わる事を諦めたのは向こうでも何か、何か似た事が有ったんだと思う。


『今日はこの位に致しましょう、まだ熱が下がったばかりなのだから』

《お姉様、今日はありがとうございました》

「コチラこそ、ありがとうございました。では、失礼致します」


 誰も悪く無いんだろうけど、ルーイさん、知ってたならなんとか出来なかったのかな。


《ネネ》

「理由を説明しますが、お聞きになりますか」

《うん、お願い》




 とある遊園地で働こうとした時、私は間違えて採用されそうになりました。

 姉や妹の方と勘違いされ。


 ですが見た目も何もかもが平凡な私は、土壇場で採用を取り消されました。

 間違えた、と。


「既に姉も妹も名が売れていたので、仕方が無い、そう思おうとしてもダメで。妹の事も重なり、今回の件は裏方に回らせて頂きたく存じます」


《ルーイさん、予想出来無かった?》


「まさか、敢えて」

《ごめん》

《何でそんな》


「諦めれば結婚するとでも思いましたか」

《ごめん》


 暴力に訴え出る人の気持ちが、初めて分かったかも知れない。


 どうしようも無い事を、なんとか発散させたい、ただそれだけ。

 そこには人を傷付ける意図も、何かを壊すつもりも無い。


 ただただ、どうにか発散させたいだけ。


《落ち着け、コレが何故謝っているのか、いつものお前なら尋ねるだろうに》


 黒蛇さんの言う通り。

 ダメだ、確かにまだ本調子じゃない。


「何故、謝っていますか」


《ネネは、それでも乗ってくれると思ったんだ》

「か弱くてすみませんでしたね」


《そう思って無くても、結果的にそうなるよね、目測が悪くてごめん》


「とても大事な部分なんです、大好きで、だから良い思い出だけにしたい。あのまま関われば、きっと私は妹を重ね続け、重荷に感じる事になる」


《本当に、ネネちゃんを喜ばせたかっただけ?》


《ただネネの願いが叶う様に、ネネが喜ぶ様に支えるつもりだったんだけど、確かに道を遮る事も考えた。ごめん》


 やっぱり、間違いだったんだ。

 段階を踏まず、歪な関係を築いたせいで、不信感と依頼心がごちゃまぜになった。


 そして判断を誤りかけた、彼が謀ったかも知れないと、苛立ちをぶつけそうになった。


「けれど謀らなかった、大変失礼致しました、謹んでお詫び申し上げます」


《ネネ》

「間違いを正しましょう、どうか無かった事にして下さい、全て」


 すべき事は、来訪者の環境整備、その事の方が遥かに命に関わる。

 そして皇太子との婚約破棄も。


 コレで良い、コレが正しくて、分相応。


《ネネちゃん、もっと怒って良いんだよ?もっと責めても、まくし立てたって良いんだよ?だってさ、紛らわしい事を言ったんだし、そもそも目測を誤ったのはルーイさんだし、私だってムカついたし。だからね?怒ろう?》




 ネネちゃん、怒るの不慣れだと思ったんだけど。

 それも違ったら、コレ。


「分かってくれてると、思ったのに」

《ごめん、分かってるって自惚れてたかも知れないけど。どうしてこんな風に見誤ったのか、今でも分からないんだ》


《好きならちゃんと考えろー、熟考しろー》


『少し、良いだろうか』


「どうぞ」

『ルーイ、そろそろユノにも真実を話そう』

《へっ?》


『すまない、俺は悲嘆の王族、彼こそ皇族なんだ』


《えっ、あー、うん?》

「ごめんユノちゃん、ユノちゃんを守るつもりだったんだけど」

《僕が口止めしたんだ、ネネと親密になりたくて》

『俺は殿下の命に従った、皆もそうだ』


《えー、じゃあ私、未だに見極め中?》

『いや、だが』

「中間テスト、期末テスト、学期末テスト。それに卒業論文が有ると思ってる」

《単語の意味は良く分からないけど、ネネは僕のせいで、未だに見極め中だと思ってる》


《誤解は解いた方が良いよ?》

《そうだね、今回の件で身に沁みたよ》


《うん、ちゃんと話し合いな?》

《ごめん、ネネと仲良くなりたくて、ユノへの件は放置してた》

「見事に悪手と化しましたね」


《そうだね、ごめん。ユノもごめんね、君にとっては些末な事だろうと思ったから、放置した部分も有るんだ》

《そこの目測は合ってますけど、真っ直ぐな方が良いってお伝えしましたよね?信じられ無かったんですか?》


《いや、ネネを縛り付けたかったんだ、善意に乗じて懐に入り込みたかった》

「秘密の共有は親密さを深めるのに良く使われますしね」


《うん》

《それで、嘘が暴かれましたけど、それが一体》

『エル様こそ、次期最高位なんだ』


「へっ」

《あれ?皇太子とかって、王位継承権が》

《有るには有るよ》

『予備、いや俺の場合は予備の予備なんだ』


「でも、だからって」

《そう身内贔屓だったかも知れない、レオンハルトはそう言いたいらしい》

『だけでは無いです、アナタもアナタで自信は無いでしょう』

《つまり、ある意味でネネちゃんと同じ?》


《僕はそこまで自信を》

『では未だに自身を器用貧乏だとは思ってらっしゃらない、そう思って宜しいですか、殿下』


 レオンハルトさん、徹底的に言葉を使い分けてたんだ。

 凄いな。


《エルよりは》

「狡い、怒れないじゃないですか」

《確かに、狡いよ殿下、今まで弱味を見せなかったのに土壇場で教えるの》


「凄い狡いっ」


 あ、ネネちゃんからこうして抱き着かれるの、初めてかも。

 さっきは拳を振り上げてたけど、ネネちゃんにはこうして逃げたり発散して欲しいな、だって殴ったら怪我しちゃうかもだし。


《よしよし》

「ごめんねユノちゃん」


《ううん、私も同じ状況なら同じ様に黙ってたし、実際にどうでも良いのは事実だし》

「肝が据わってる」


《だって恋の当事者じゃないもん、だからぜーんぶ、好きだから仕方無いのかなって思っちゃう。騙されたーって怒るのも、そう思われて落ち込むのも、好きだからでしょ?》


「全然、好きじゃない」

《はいはい、ルーイさんはどう?好きでしょ?》


《凄く好き》

「嫌い」

《はいはい、で、頑張って冷静に分析したレオンハルト様偉い》

『いや、もっと早くに言うべきだった、すまない』


《謙虚、でも譲れない位に好き》

『あぁ』


《うん、迷うの分かる。しかも試されてるかも、とか、実際に前がそうだったからこそだと思う》

「うん、はい、そうです」


《落ち着いた?》

「いいえ、全く」


《まぁ、ココはね、ちょっと解散と言う事で》

「はい、解散、散れ散れバカ、どっか行ちゃえ」


《どうどう、さ、2人だけで話し合おう》

「うん、ごめん、ありがとう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ