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26 旅立ちは既定路線。

 コレからネネは諸国を回る事になる、それまで結婚へ至る事は許されない。

 どんな権力を使おうとも、婚約は出来ても結婚には至れない。


《ネネ、抱かせて》

「何故」


《好きだから》


「で」

《離れる事になるから、忘れて欲しくなくて》


「あのですね、レオンハルト様は」

《君の為に手放す事も考えると言っただけだよ、君に同行する事になる事は決まっていたしね》


「どう足掻いても、国を出る事は既定路線ですか」

《囲い続ければココの腐敗を疑われるか、若しくは君達が相当に愚か者か有益なのかと疑われてしまう。そう思われたく無いから、仕方が無いんだ》


「なら、だからこそ、手放す場合も考えて」

《ネネは優しいね。確かに心配している通り、女体ではダメかも知れないし、ね?悪あがきしたいんだ、お願い》


「もしダメだったら」

《勿論婚約は破棄、素直に諦める、けど保護は続けるよ》


 ネネは外を殆ど知らない、ココへの警戒心は未だに存在している。

 完全に僕との繋がりを断つ事を願っているワケでは無い、あくまでも見極めの材料を探しているだけ、粗を探したい筈。


 深く知り探る為、ネネは飲む。


「分かりました、ですが避妊を」

《あの魔法印、女性化の印を女性に使えば避妊は可能だよ、けれど感度が下がるらしい》


「使用します」

《うん》


 ネネが言っていた淫紋、その単語で調べてみたけれど、最初の成り立ち以外は詳細が出て来た。

 元は避妊や性病防止を目的としていた、との大義名分が記載されていたし、実際にも中身にはそうした薬草が混ざっていた。


 受精を阻害し、気持ちを昂らせる成分。


 どうせ碌でも無い発想から生まれた産物だろうけれど、使い方はコチラ次第。

 だからこそ、開発者には感謝している。


 ネネと思いを遂げられるのだから。




「バカじゃないですか、こんなに痕を付けて」


《あんなに痛がってたんだし、やっぱりネネは実質処女だよね》

「話を逸らすな」


《逸らして無いよ、大して上書きせずに済むのが嬉しくて、つい付けてしまったって事だよ》


 ネネは本当に可愛いかった。

 たった1回で飽きるワケが無い、もし本当にネネの元恋人が来たなら。


 どう苦しめてやろう。


「だからって、全身くまなく」

《付き難い所が有るとついムキになって、痛くしてごめんね》


「2号と、ココまでしますか」


《あぁ、だから付けてくれなかったんだね、良いよ付けて》


「外傷に該当しますし、魔法で治せますか」

《ネネ以外とはしない》


 ネネは魔法を得たにも関わらず、今でも嘘を見抜ける魔道具を身に着け続けている。

 体は許されても、まだ心を開いてはくれない。


 けれど、迷ってはくれている。

 実際、嫌がる素振りは無かった、そして今でも悩んでいる。


「どうすれば、愛されていると分かるんでしょうか」


 ほら。


《魔道具が信じられない?》


「アナタ達は嘘が上手い。大切に思っている、と言っても、微妙に明言を避ければ」

《言って欲しかったんだね、ネネだけを愛してる》


「それは単に、性的に」

《性的にもネネだけを愛してる》


「そう愛していると思い込んでいるだけで」

《出来るなら他所見をして欲しくない、僕だけのネネが良い、でもネネにも選ぶ権利が有る》


「もう飽きたなら」

《飽きてない証明をするから、痕を付けて、お願い》


「付け方、良く分からないんですけど」


 可愛いネネ、可哀想なネネ。

 もし君の元恋人が来たなら、ユノの願い通り、死なない拷問に掛け続けてあげる。


 何でもしてあげたいし、何でもして欲しい。

 困った顔も何もかも、堪らなく可愛い。


《消さない、練習して良いよ、幾らでも》




 ずっと、体から始まる恋愛を否定していたのに。


「悔しぃ」


《ネネちゃん?》

「好きかも知れない、悔しい」


《ふふふ、やっと認める気になったんだ》

「そんなに好きそうに見えましたか」


《葛藤してるって事は、少なくとも嫌では無いワケでしょ?ネネちゃんの場合は特に、好きにならない様にする理由が有るし、頑張って抵抗してるなって感じに見えた》


「そんな、分かり易い?」

《ううん、抱かれるってなって、好きなんだなって思った。ネネちゃん好きでもないと出来なさそうだし》


「べ、別に、コレは、このままだと、ツンデレの台詞になりそう」

《だねぇ》


「でも、魔獣とも」

《そこは好奇心6割じゃない?だって、悪くなかったって聞いたら私だってしてみたいと思ったし、でもそれはルーイさんが手伝ってくれたからこそかなって思うし》


「そこは本当、助かった」

《知識と経験は別物だもんねぇ》


「体から始まる恋愛を否定してたのに、実態は、する事で色々と分かった気がして悔しい」


《あー、また違いが有った?》

「キスマーク、前のには嫌がられた」


《あー》

「それと、好かれてるから好きになってるみたいで、軽い女に思われたくない」


《いやネネちゃん良い重量感だと思うよ?》


「向こうが本気なら、ね」

《よしよし、ココへ憎いヤツを呼べる邪法を編み出そう、昼ご飯を食べよう》


「悩んでるのに、良い匂い、悔しい」

《生きようとしてるんだよ、ちゃんと考える為には食べないと、ね?》


「悩んでるって言ってたクセに、良く食えるね」

《うん、ソイツも血祭りに上げよう、先ずは前祝い》


「うん、ありがとう」


 恋愛で悩みたくなかった、だからこそお見合いすら考えた。

 けど姉や兄はまだ大丈夫、焦るなって。


 焦りじゃなくて、悩みたくないからこそ、さっさと落ち着きたかった。

 あんなクソを好きになれたんだから、大概の人は好きになれる筈、だからある程度なら誰でも良いとすら思ってた。


 なのに、よりによって皇太子と側近。


《どう?》

「美味しい」


 鶏とお米の料理、海南チキンライス、知ってるのに思い付かなかった。

 こんなに自分はダメダメなのに、何でユノちゃんじゃなくて。


 まさか、この立場に、そんなに自尊心が満たせる程の価値が有るとでも。

 いや、歪んでいるからこそ、コレでも自尊心を満たすには十分なのかも知れない。


《ネネちゃん》

「あ、うん、食べる食べる」


 あぁ嫌だ。

 早く平穏が欲しい。




『すまないが暫く国を離れる事になった』

『ラインハルト様、どうしても行かなければなりませんか?』


『数日後には隣国に諸用で行かなければならないんだ、以降は皇太子妃教育が厳しくなるかも知れないが、どうか体に気を付けてくれ』


『いつ、お戻りになるかは』

『分からない、向こうの状況次第なんだ』


『私、待ってます、だから早く帰って来て下さいね』


 早くこの茶番を終わらせ、ネネに会いたい。

 先日の発言により、ネネが大いに誤解していると知り、早く弁解がしたかった。


 だが、コレと仕事が立て続けに舞い込み、ネネと会えぬまま数日が過ぎている。


 俺はもう、ネネに諦められているんじゃないだろうか。

 既にもう、興味を。


『なっ』

『あ、すみません、どうしてもお気持ちを伝えたくて』


『いや、すまないが今日はもうコレで、失礼する』

『はぃ』


 迂闊だった、考え事をすべきじゃなかった。


 洗い清めたい。

 触れられた場所も何もかも。


 けれど、早くネネに会いたい。




《どうされましたか、ユノ》


 全て見ていた、だからこそ、レオンハルトの為にフォローしないとね。

 けど、本当ならネネとの事だけを考えていたかった、本当に煩わしい。


『ルーイ様、あの、彼は。レオンハルト様は、あまり、表情には出さない方なんでしょうか』


《あぁ、そうですね、表に出さぬ様にと厳しく躾けられていますから》

『あぁ、そう、ですよね』


 まだ、納得してくれなさそうだ。


《それに、女性とのお付き合いには不慣れで、すみません》


『そう、なら、やり過ぎてしまったかも知れません』

《あぁ、どう返せば良いか分からなかったのでしょう。すみません、僕とは違って女性に不慣れな方ですから》


 腰に手を回しても、強引にハンドキスをしても、嫌がらない。

 下卑た女。


 ネネの感触だけを、少しでも残しておきたかったのに。


『あの、私』

《彼が帰って来るまで僕が居ます、どうか心配しないで》


 躊躇ったフリ、白々しい。


『でも』

《ずっと、アナタの事が気になっていたんです。皇太子妃教育、実は上手くいってらっしゃらないんですよね。でも大丈夫、僕が間に入りますから》


 ネネが魔獣達に問われた問題を、彼女にも出している。

 けれど、どうしようも無い答えが長考の末に返って来るだけ。


 食事での作法や多少の振る舞いは出来るが、言葉遣いや男に対する作法は未だに上達しない。

 いや敢えて不出来を装っている節は有る、なんせ本当に興味が無い男には、しっかりと作法を守っているのだから。


『すみません、暫く間に入って頂けると助かります』

《喜んで》


 こんな女が来なければ、もっとネネと居られた筈なのに。




『ネネ、誤解を解かせてくれないか』


 レオンハルト氏が、寝る前に部屋に来たかと思うと。


 誤解。

 ぁあ、アレか。


 にしても。


「何故、右頬が赤いんでしょうか」

『あぁ、コレは、少し強い消毒液を使ったんだ』


「病人にでも触れられましたか」


『不注意で、口付けをされてしまった』

「釣り餌なんですから、寧ろ良い油断だと思いますけど」


『すまない、この事では無いんだ』


 次の言葉が選べない程、消耗しているらしい。


「諦める事も検討する、その事についてでしょうか」

『ネネが嫌なら諦める、泣く泣く、致し方なくだ』


「そう好きな人が居るのに、どうでも良い女の前で油断して隙を見せた」

『すまない、注意力散漫だった』


 相当疲れているらしい。


「お疲れなら」

『いや、考え事をしてしまったんだ』


「ほう」


『君に、早く弁解したかった』

「隙が多い人は、ちょっと」


『すまない』

「冗談です、お疲れなら早く休んで下さい。以降は同行して頂くんですし、万全の体制でお願いします」


『好きだ』


 見慣れてしまったからか、可愛いと思える部分を知ってしまったからか。

 心が揺らぐ。


 大きく波打って、揺さぶられてしまう。

 コチラを試し、騙そうとしていた相手なのに、最初は良い印象が全く無かったのに。


「突き放しておいて」

『あぁ、すまない』


「最悪は共用になるんですよ、良く耐えられますね」

『少なくとも、こうしている時は俺だけのネネだと思っている』


「もっと最悪は、アナタだけが私の面倒を見る事になるんですよ」

『それは俺にとっては最悪では無いんだが』


「何が良いのか全く分かりません、男を見る目は無いし、発想力だって無い」

『ネネが何かを出来るから好きになったワケじゃない、ただ一緒に居たい、触れたいと思うのはネネだけなんだ』


「何も成さないかも知れません」

『俺達が活かせないだけかも知れない』


「両方選ぶかも知れない」

『ネネを守るには寧ろ不足かも知れない』


「増えるかも知れない」

『吟味はさせて貰う』


「こう、以降も、面倒な問答ばかりしてしまうかと」

『それだけしっかりしているからこその事、面倒だとは微塵も思わない、寧ろ安心すらしている。好いて良かったと思っている』


 彼は優しい、しかも誠実だ。

 真面目で、良い人だ。


「昔の恋人の悪影響が酷いんですが」

『出来るだけ不安にさせない様にする』


「でもキスされてしまったんですよね」

『すまない、既に飽きられているのでは無いのか、捨てられてしまわないか不安だったんだ』


 自分なら、自分もきっと、そう思い悩んでしまっただろう。

 分かる、彼はとても分かり易い。


 酷く真っ直ぐで、アレとは真反対。


「保留で、どうか休んで下さい」


『すまなかった、以降は君達を守る事に専念する』

「はい、宜しくお願い致します。では」


『あぁ、おやすみ、ネネ』


 した事を何か言われるのかと思っていた。

 期待していたワケでは無いけれど、もしかして知らないのだろうか。


 いや、知っていてアレなら凄い。

 迷う、余計に迷ってしまう。


《ネネちゃん》

「あ、すまない、寝ましょう寝ましょう」


《えへへ》

「起きたら言います」


《はいはい》

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