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23 妥当。

 日向ぼっこから帰って来ると。


「妥当、らしい」

《そっかぁ》


「ただ、そこまで信用が無いのは悲しいけど、仕方が無いとも理解はしてくれた」

《まぁ外側に閂が有って、しかも東洋人を見慣れて無さそうな西洋人のイケメンにやけに親しげにされたら、そりゃ詐欺を疑っちゃうよねぇ》


「しかも未だに計略や策略の中と考えると」

《信用する利がね、薄い》


「ですが」

《蛇か狐か妖精と性行為》


「もういっそ、楽しむつもりで両性具有で挑もうかな、と」


《えっ、一気に全員と?》


「えっ?」


《あ、いや》

「確かにアリかも」


《いやいやいや》

「もうワケ分からない状態になれば、それこそ一瞬で終わるかも知れないし、再度提案してくるわ」


《ちょっ、凄い振り切れ方》

「後は野となれ山となれ」


 ネネちゃん、振り切れ方が異次元だよぉ。


《ちょっと待とう?焦って交渉して足元を見られても困るし、後々になって更に能力が必要になるかもだし、ね?》


「確かに」

《お料理しようお料理、もしかしてそれで懐柔出来るかもだし、殿下達への労いの為にもね?》


 折れてネネちゃん。


「ピラフで良いかな」

《うん、私も食べたい》


「付け合せ、何にしようか」

《あー、ワンプレートで考えてみると、明らかにタンパク質が足りないよね》


「スパニッシュオムレツ」

《あー、良いねぇ》


「スープ、トマト味かクリーム系か」

《サイドがスパニッシュオムレツだし、今回はクリーム系かなぁ》


「サーモンのクリームスープ」

《アレ美味しかったもんね》


「キノコピラフ、スパニッシュオムレツ、サーモンのクリームスープ」

《オムレツ担当するよ》


「うん」


 危なかった。

 ネネちゃん妹さん居るのに、末っ子っぽいな本当。




《ルーイさん》

《あぁ、ユノ、どうしたんだい》


《ネネちゃんが、両性具有か男で、いっぺんに相手をするかも》


《はぁ、そこまで僕らが嫌なのかネネは》

《と言うかもう、アレは半ば自棄だと思う、早く安心出来る場所を確保したいんだよ》


《それで得たとして、使い勝手が良いかどうかは》

《レオンハルトさんが妥当だって言ったらしい》


《ユノは能力について》

《ううん聞いて無い、弱点になりたくないし、妥当かどうかの相談には乗れないから》


《あぁ》

《一応は落ち着けて料理をして貰ってるけど、向こう次第で交渉材料にするかもだし、そもそも提案しちゃうかもだし。今回は提案しなくても、次の手札で出すかも》


《ユノは、どう思う》


《私達は基本的に善人だから、どうしても2号ちゃんに罪悪感は湧くんだよね、それに私に頼ってる状態も気にしてるかも知れない。それに、2人に答えを出すにしても、ちゃんと落ち着いて同じ立場で答えを出したいんだと思う》


《真面目で誠実だからこそ、か》

《凄い図太いワケじゃないけど、気にするべきじゃないのは分かってる、でも気にはなる。そう言う状態って、結構慣れないと大変だし、慣れてても負担は負担だから》


《少し離れるべきだろうか》

《もう無理だと思うよ、全く考えないでいられるワケじゃないからこそ、娼館に行ったんだし》


 ネネの心の中に、僕らが居る。

 小さな棘の様に、無視の出来ない存在になっている。


《僕は、どうすべきだと思う》


《安心させて上げて欲しいけど、難しいよね、どうせまだ見極めてる最中でしょ》

《あぁ、ごめんよユノ、あの魔獣達が接触して来た時点で見極めは終わっているんだ》


《へっ?》

《悪しき者に靡かない者が、君達に接触した、それが最後の答えなんだよ》


《嘘じゃないのは分かるんだけど、理屈が》

《後で説明するよ、大丈夫、ありがとうユノ》


 レオンハルトが立ち会っていた筈だけど、今回の件は伝える機会を完全に失っての事だろう。


 まぁ良い、ネネに刺さる棘を確認出来たのだから。

 寧ろ褒めておこう。


『ルーイ』

《あぁ、レオンハルト、少し頼めるかな》


『はい、なんなりと』


 念には念を、ね。




「成程」

《ごめんね、ネネ、魔獣達との接触は、ある意味で最終試練と同じだったんだ》


「いや、うん、かなり安心しました」

《そう、良かった》

《ならもう無茶はしないよね?》


「ぁあ、それはそれ、これはこれ」

《お母さん、そこ同じ問題じゃないの?》


「この会社に就職しても、途中で解雇されたら困る、結婚も同じ」

《あぁ、まぁ、そうだけど》

《コチラが不信感を煽ってしまったからね、信用を得られる様に地道に努力させて貰うよ、だからこそ無茶をしようとしているなら止めて欲しいな。魔獣達の性欲は人種とは違うそうだから、最初は様子見の為にも、程々にね》


「反対はしないんですね」

《そうした権利は身内にのみに有るんだよ、それに止めたくても能力の中身を知らない以上は、止める事が必ずしも正しいとは限らないからね》


「そうした、来訪者用の環境を整えないのは何故でしょうか」


《約180年、現れないモノに手間暇を掛ける事は、果たして如何なモノか》

「それは誰の意見ですかね」


《既に更迭されかけている大臣達や貴族だね》

「どうして更迭されかけているんでしょうか」


《君達の信頼を得られていないから、だよ》


「逃げ出したとなれば」

《僕もレオンハルトも廃嫡、大臣達は晒し者になるだろうね》


「廃嫡されずに済む方法は」

《それは無理だよ、僕らがココの責任者だからね》


「なのに抱いてでも試せと」

《もっと他にやり方が有るだろう、そう面と向かって公の場で君が言ってくれたなら、大臣達だけの処分に収まる可能性は高いけど》


「はぁ、クソ面倒」


《まぁまぁ、先ずはゴハンにしよう?》

「あぁ、うん」


《あのね、2人にも少しだけって作ったんだよね?》

「本来のお食事のお邪魔にならない程度に」

《ありがとうネネ》

『ありがとう』


 エリザベート様の所に行っても、結局は彼らも罰を受けてしまう。

 順当に考えるなら、懐柔に失敗したとなれば、間違い無く何かしらの処分が下される筈。


 しかも殿下は、寧ろ廃嫡を喜んで受け入れる筈、そして廃嫡されたとなれば結婚。

 まさか、流石に逃げ出した、と偽装する事は。


 いや、分からない、ユノちゃんに振り切れ方が異次元だと言われたけど。

 絶対、殿下の方が振り切れ方がオカシイだろ、最早ヤンデレ。


 ヤンデレか。


 ヤンデレ対策なんて知らない。

 どうすれば良い。


 どうすれば逃げ切れる。


《あぁ、美味しそうだね》


 食事をぶち撒けてやれば。

 いや、食べ物を粗末にしたくないし、そうした行動すら可愛い抗い方だと喜ぶかも知れない。


「お先にどうぞ」

《うん、頂くよ》


 それこそ毒でも仕込むか。

 大前提としては、死なない毒、他愛無いありがちな毒と言えば何だ。


 あ、アレか、媚薬か。


「どうぞ」

『ありがとうネネ』


 ただ問題を起こせば、レオンハルト氏も巻き込んでしまうし、それこそユノちゃんだって巻き込んでしまう。

 どうにか、穏便に諦めて貰うには。


「カイル様、つまらないモノですが』

《いえ、ありがとうございますネネ様、では別室で頂かせて頂きます》


「はい、ではまた後で」

《はい、では》


 と言うか、そもそも毒を盛っても、それこそ媚薬を盛っても喜んで言い訳に使って襲ってきそうだし。

 つか媚薬、どうやって手に入れるのか、と。


「はい、では頂きましょうか」

《だね、頂きまーす》


 毒は無理でもメシマズなら。

 いや今更メシマズを出しても、抗ってるな、と喜んで味の感想を率直に言ってきそうだし。


 やっぱり、男で抱くだ抱かれるだのか、実は凄い性癖持ってましたとか。


《美味しいよ、ありがとうネネ》

「そのオムレツはユノですよ」

《混ぜて焼いただけだけどねぇ》


 そうか、縛るか。

 いや、でも、縛り方とか知らないんですけど。


 いや、娼館で。

 いや寧ろ、呼んで貰うか、ココに。


 いや待てよ、エリザベート様の書庫の鍵が有るんだ、明朝にでもお伺いして報告も。

 そこだ、問題は魔獣達よ。


《ネネ、何を考えているのかな?》

「色々です、色々」


 全然考えて無かったけど、敢えて苦痛を与える趣味の持ち主だったら、男同士はマジでヤバいな。

 念の為に聞いておこう、それこそ切れ痔とか洒落にならないし。


 いや、魔法で治せるのかな。

 いや治せても痛いのは流石に、本当に無理。


 食べ終わったら。

 いや、洗い終わって、寝る少し前に。


 いや、そうなると契約は明朝になるのか?


『ネネ、どうした』

「今日、してしまうのかな、と」


《早く得たいなら、そうなるね》

「と言うか今日中にと言っていたので、洗い物を終えたら、1度尋ねに行こうかと」

『ネネ、立ち会わせて欲しい』


「あぁ、はい」

《その邪魔をするつもりは無いんだけど、君の為に甘い物を用意させたんだ、まだお腹に余裕は有る?》


「まぁ、ココで止めておけば、多分」

《ならソレを僕にくれない?》


「殿下、食べ掛けですが」

『あぁ、構わない』

《もー、なら僕も少し甘い物を食べさせて貰うね》


 ヤンデレに効きそうな手段を取ったのに、効かない、だと。


「ユノの分も有りますよね」

《勿論》

《何だろうなぁー、甘い物》


 ヤンデレ対策の話し合いをユノちゃんとしたいのに、居座り続ける気だな。

 何故だ、邪魔する気は無い、と。


 まさか、コチラへの配慮だとしつつも気を逸らす算段か。


 まぁ、確かに見極めは終わったらしいが、コレは謂わば入学テストに合格したに過ぎないのだろう。

 そして中間テストに期末テスト、進級テストを何度も繰り返してやっと、卒業。


 そうか、一気に飛び級、そのまま卒業で逃げ切れば。


 いや、それだと多分、大臣達の首が跳んでくれない可能性も出てくる。

 能力を見せると言う事は、信頼を示す事にもなるけど、出来るなら成果を出す事は暫く控えたい。


 と言うか、成果って、何。


《ネネ、そろそろデザートを頼んでくるけど良いかな》

「あ、はい」

《デザート、何かなぁ、何が良い?》


「蒸しパン」

《あー、良いねぇ、ふわふわ蒸しパン》


 そして本当に直ぐ持って来たのは、ふわふわ蒸しパン。


《ハチミツ入りの蒸しパンだよ、はい、どうぞ》

「どうも、頂きます」

《頂きまーす》


 甘くフワフワな蒸しパン、けど別に珍しいと言うワケでも。


 そしてココで、記憶は途切れた。

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