21 聖獣。
黒蛇に案内された先に居たのは、九尾の狐。
何故、ココに東洋の妖怪的な存在が。
『どうして俺がココに居るのか、だろ』
「あぁ、はい」
『狐は何処にでも居るだろ、俺はココの九尾の狐』
「成程、確かに」
『そして場所によっては9の数字は縁起が良い、そう言う事』
「ありがとうございます」
『じゃあ、問答を始めるよ』
「はい、宜しくお願いします」
そして出されたのは、テセウスの船について。
『先ず1つ、何が問題だと思う』
「本質の問題だとは思いますが、色に置き換えてみましょう。赤色に白を混ぜる、それこそ水でも構いません。何処までが赤なのか、何処までで赤と認識出来るのか、果ては不可視光線が見えるモノにしてみればどうなるか」
『既に知り、既に理解しているんだな』
「理解とは、アナタの場合、どう言った状態を指すのでしょうか」
『そう問える事、次にいくよ』
「はい」
そしてトロッコ問題、カルネアデスの板について問われ。
『気に入った、俺の能力を教える』
そこでも、黒蛇同様欲しかった能力を有していた。
が、対価も似た様なモノで。
「考えさせて下さい」
『分かった』
森に入って直ぐ、先ずはネネちゃんの目の前に黒蛇が現れて、直ぐに視界が結界で防がれちゃったんだよね。
で私に接触して来た子も、害さないと約束してくれたから、見える範囲で別々に行動して。
で今、ネネちゃんと合流したんだけど。
後ろに居るのは最初の黒蛇さん、赤毛の九尾の狐さんに、可愛いピンク色の妖精さん。
《浮かない顔だね?》
「全員、お体をご所望なんです」
《おぅ》
「何故、人型になるのに性行為が必要ですか」
《物語的に面白いからじゃない?》
「物語」
《ココにも神様が居るなら、やっぱり面白い、とかを求めてるんじゃないかなと思って》
「他人の性行為を」
《アレじゃない?成人映像的な》
「あぁ」
《納得した》
「まぁ、何か殺すとか壊すよりは良いかな、と」
《確かに》
「あ、そっちは」
《大丈夫、殆どは向こうの話を聞かせてくれとか、一緒に居るだけで良いって》
「何故、いや、私が非処女だからか」
私の両肩を掴んだまま、項垂れちゃった。
《あー》
「いや、うん、確かに私には無い経験をしてるし。うん、比べるのは止めておこう」
《こう、他の候補は?》
「一旦、全員をどうするか決めてからじゃないと、会わさないって」
《あら》
「はぁ」
《猶予は?》
「敢えて聞いて無い」
《あぁ、取り敢えず、休憩しよ?》
「うん」
で、取り敢えずはと、道に戻り北欧の大使館へ。
入るには身分証が必要らしく、カイルさんが提示し、中へ。
そして中には様々な種類のエルフさんに、ドワーフさんらしき容貌の方や、アレは。
《あの小さめの方々って》
『あぁ、小人族の者だな』
《へー》
「さっき、ココの白雪姫を聞いた」
《おぉ、聞きたい》
「後でね」
もの凄く疲れた、遠慮が出来無い程。
応接室に通されるだけでなく、軽食を用意して貰ってしまった、しかも北欧料理。
《おぉ、美味しそう》
「すみません、ありがとうございます」
『いえ、対話だけでも魔力を消費するモノも居りますから、こうして休憩所としてお使い頂く場でも有るんです』
「あぁ、成程」
『では、ごゆっくり』
《ありがとうございますー、頂きまーす》
正直、食欲が無い。
仕事と割り切って性行為を行える程、頭の中が整理されていないし、妥当な対価なのか相談したとて。
いや、後で聞くしか無いか、ルーイ氏とラインハルト氏に。
「はぁ」
『ココまで嫌がられると思わなかったんだけど』
《おぉ、狐ってそんな風に鳴くんだ》
「えっ?」
『他にはただ鳴いてるだけに聞こえてる』
《私に至っては、聞き取れてすら居ないだろうな》
「僕のもね」
《そも聞き取れる様、魔力を引き出し調節した》
『そこに便乗した』
「うん、だから食べた方が良いよ?」
《ネネちゃん?》
「ぁあ、うん、ユノちゃんの子達は静かだね」
青い小鳥に、テントウ虫、それとミモザの花の妖精。
ミモザみたいなドレスを着た、女の子。
正直、ウチの妖精は男の子なのか女の子なのか分からない。
けれど今は、胸が平たい僕っ娘だと思って接している。
《いや話してるんだけど、やっぱり聞こえないんだ》
「うん」
『まぁ、鳴かなくても良いんだけど、一応ね』
「あぁ、ありがとうございます」
気付かせる為に、敢えて鳴いてくれたらしいけど。
その優しさで、性行為を回避させてはくれないだろうか。
《お前は、性行為を回避するとして、何を対価に差し出せる》
そこなんですよ。
蛇の扱いも知りませんし、どうせ斬新なアイデアもない。
だって、ココ、既にタオルや下着が有るんですよ。
紐パンだけどパンツ有るし、初期形っぽいブラも有るし、足踏みミシンだって有る。
既に先駆者達が居て、ただただ時代に合った状態を。
いや、果たして本当にそうなんだろうか。
魔道具と言う名の文明の利器に近い物も有るし、それこそ魔道具が多種多様に存在している。
本当に、ただ時代に合せるだけで、中世風を貫いているのだろうか。
《コレ、美味しいよ?》
「あぁ、うん」
聞きたい事が山程有る。
けど、上手く頭が。
《大丈夫?》
あぁ、食べないとな。
「旨っ」
《だよねぇ》
こうなるだろうと分かっていたから、嫌だったんだ。
《ネネ》
「ご懸念はコレでしたか」
《うん》
「この対価は当たり前なんでしょうか」
《能力次第では、うん》
「それと時代についてです、どうしてこの文明文化の状態なんでしょうか」
《発展する弊害の方が大きいから、だね》
「成程」
《あのー、念の為にお伺いしますけど、その弊害って?》
《ネネは何だと思う?》
「ゴールドラッシュによる環境汚染は勿論、化学製品の副産物による汚染、とか」
《あぁ、染色だって汚染は汚染だもんね》
《うん、そして簡単な所で言うと、ゴム製品だね。衣服が簡単に脱ぎ着出来る様になるし、避妊具にも使えるとは聞いてるし、高火力の焼却炉で燃やせば害はほぼ無いとも聞いてるけど》
《あ、高火力の焼却炉が問題?》
《その弊害は?》
《あー、下手をすれば強力な武器が作れちゃう?》
《そう、今ですら作ろうと思えば作れる、車輪なんかは鉄だからね》
「けれど更に大型で高火力ともなれば、精製が難しい物も加工出来てしまうかも知れない」
《うん、結果として全体的な技術の向上が起こってしまう。恐れるべきは広域拡散兵器、そして銃や化学兵器。勿論、既にある程度の対策は講じてはいるけれど、製造させないのが1番だから》
「加工技術が進めば、いずれそうなるかも知れない」
《そう、だから常に見極め続け、どうすべきか模索し続けている》
《成程、そりゃ穏便に平和に、としか言わないヤツを受け入れるのは難しいよね》
《延々、理想だけを語られてもね、分かってくれて助かるよ》
「つまり、単なる製品の知識だけでは、対価にはならない」
《そうだね》
「だとしても、罠過ぎる。コッチにしてみたらどうしても格下と言うか、まさかそこまで知ってて考えてるとは、良く観察すれば分かるか」
《まぁ、大使館が有って化学兵器を知らないってなると、少し歪な気がするもんね》
「はぁ、そうなると本当、専門家しかココには居られないじゃないですか」
《いや、そうでもないよ、民意は民意で十分に貴重な意見だからね》
「そうですかね」
《専門家の理想や想定が、必ずしも庶民の利便性に通じるかどうかは別だ。幾ら法整備がなされ稼働しても、専門家には分からない不便さが民に発生したなら、完璧とは言えない。そう専門家だけに任せては、民草に余計な負担が掛ってしまう》
「私達は、素人有識者か」
《成程》
「それで、どうして魔獣達まで知恵を」
《勿論、愚か者を可愛がるモノも居るよ、それこそ一種のペットとしてね。そしてペットと性行為を行うモノも居るけれど、それこそ極一部、彼ら彼女達は既に僕らと同じ知識層の中で生きている》
《悪く言えば、結局は私達は赤ちゃん、かぁ》
《ただ、全てのモノが全てを知っているワケではない、魔法は知識と経験からも成り立っている。相応のモノが相応に知り力を持つ、愚か者が強大な力を持てば、果ては滅びだからね》
「それでも、愚かでは無い悪しき者が」
《それは無い、神々が認めなければ魔法を有し、行使する事は叶わない》
《じゃあ、悪しき行いをしたら、それかしようとしたら。魔法が使えなくなる?》
《そのどちらかで、使えなくなるとされているよ》
「必ず事前に止めないのは、悪しき見本の為?」
《その場合も有るだろうね、ご意思を聞く事は叶わないけれど、挙動を見る限りはそうだと思う》
《それ、何で聞けないし、姿が見えないんですかね?》
《居れば教えを請い続け、果ては考える事を止めてしまうだろう。それに、神の声を聞ける者が居るとなれば、そこに権力が集中し諍いが起こる。かも知れない、そう考えているよ》
《私が前に居た場所も、そうなんですよ、ただ来訪者だけが関われる。だから期待してたんですけど、ココは違うって意思表示でも有る、って事ですよね》
《その前の事を、もう少し良いかな》
《神託を請け負う巫女は居ました、でもやっぱり権力の偏りが起きて巫女が暴走して、少し諍いを起こしたんです。私利私欲の為に神託を伝えなかったり、来訪者の邪魔をしてたらしいんですけど、結局は神託を受ける能力を剥奪された》
「それ、神様は先を見通せないの?」
《ううん、両方の可能性が有ったからこそ、ギリギリまで見逃してたんだって》
「優しい」
《それもだけど、人が好きなんだよね、色んな意味で。観賞用で愛玩用で、生きる物語としても、なんだって》
「あぁ、それで」
《うん、それを嫌がるのって、何か違うじゃん?私達だって神様の物語を楽しんだりしてるワケだし、娯楽が少ないんだし》
「あぁ、娯楽、麻雀分かる?」
《あー、分かんないんだよねぇ》
「麻雀分かる?有る?」
《どんなモノかな?》
「カードか四角い駒に柄が入ってて、特定の絵柄を揃えると」
《あぁ、有るよ》
「ですよねぇ」
《難しいよねぇ、文明文化と知識が必ずしも横並びに揃ってるワケじゃないって》
「本当」
《それで、どうするのかなネネは》
「どう、しましょうね」
身を守る為には、能力を得て欲しい。
けれど、他のモノにネネが触れる事は。
《あ、アレは?性転換してヤるのは有りなのかな?》
「それだ、天才、交渉してみるわ」
ネネが躊躇っていてくれた事は嬉しかった、けれど、こう。
《良かったね、ちゃんと考えてくれてる証拠だよ》
《あぁ、ありがとうユノ》
《けど傷付けたら絶対に許さないからね》
ユノは笑顔では有るけれど、その笑顔には圧が有る。
彼女の力はより未知数、魔法が有る世界を経由した来訪者なのだから、転移以外にも使えるのかも知れない。
彼女を侮る事は、謀る事は流石に愚か過ぎる行為だろう。
彼女もまた、正直に対応した方が得となる存在の筈なのだから。
《あぁ、勿論》




