表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/100

20 出会い。

《どう?眠れた?》

「うん、爆睡した」


 どうにも、人の体温は眠くなってしまう。

 しかも寝酒をしたからもう、即寝落ち。


《ネネちゃん、豪胆》


「それに、開き直りました、飽きられ捨てられる前提で過ごそうと」

《振り切れ方が異次元な気がするけど、どうして?》


「抱かれてメロメロになった後、こんなものか、適当に扱おう。そう」

《僕が以前の婚約者があまりに愚かで冷めてしまった事を、気にしているみたいなんだ》

《おぉ、詳しく聞けますか?》


《平和に、穏やかに、出来るだけ争う事無く問題を解決すべきだと思うわ》


「で、だからどうしろと」

《そうなんだよネネ、幼かったとは思う、けれどあまりに綿菓子の様な》

《あ、ラインハルト様は寝れました?》

『あぁ、何とか』


 散々、押し問答した挙げ句、ラインハルト氏はソファーで寝た。

 そしてルーイ氏は、ちゃんと手は出さないでいてくれたが、寝ても覚めても股間を押し付けられまくった。


「はい、では、朝食会に伺わせて頂きましょう」

《おー》


 エリザベート様より感想を、と事前に招待を受けており出席する事に。


 全く、どんなモノなのか想像していなかったけれど。

 ザッと言うと、モーニングパジャマパーティーだった。


 勿論、男女別。


「何て素晴らしい会なんでしょうか」

『お気に召して頂けて、何よりだわ』

《このお衣装は既にご用意を?》


『来賓用に、ね』


 上下別のシルクのネグリジェと、綿のローブ。

 勿論、色は黒。


 庭で焚き火を囲みつつ、地べたに敷かれたカーペットで寛ぎながら朝食を頂く。

 優雅。


《あまり寒くないのは、やっぱり結界か何かのお陰ですかね?》

『火を扱うモノに、熱だけ逃さない様にして貰っているの』

「おぉ、そうした使い方も有るんですね、成程」


『まぁ、誰の能力かは、ね』


 本来、滅多に自分の扱える魔法や仲間を明かさない。

 それが人種ともなれば特に、弱いからこそ、様々な内情を明かす事は無いそうで。


 人種同士で能力を明かすのは、職場か家族か。


 情報への扱いは、寧ろ向こうよりも繊細。

 暴く事も、広める事も罪となる。


 そしてステータスオープンなんかさせてしまった日には、死刑も有り得るそうで。


「新参者には生き辛いですよね」

《ね、向こうで言われる様な魔法の世界と少し違うし、私が居た所とも違うし》


『あら、隠し玉が有ったのね』

《こうした対価の殆どは彼女へ、私には役目が有りますから》


『そう、どんな役目なのかしら』


《伝え繋げる、ですかね》


 ユノちゃんは、1度ならず2度までも、自分と同じ名前を持つ者を確認している。

 しかもそれはユノちゃんが後だったり、先だったり。


「でも、次も安全かどうか」

《そしたら逃げるもん、大丈夫、絶対にいつか帰るから無理はしない》


『アナタは、帰還を望む者なのね』

《いずれは、ですね》


 ユノちゃんは転移を繰り返す、けれどその間にも時間は過ぎる。

 仮に5年後に帰ったなら、どうなるのか。


 その疑問には、直ぐにユノちゃんが答えてくれた。

 もしかすれば、記憶と共に加齢も消えて無くなってしまうのでは無いか、と。


 記憶や経験が保持されないかも知れない。

 それでもユノちゃんは行ける所まで行く、納得出来るまで転移を繰り返す、中途半端は気持ち悪いからと。


 もう、その心意気が善人気質だと思った。

 実際には実行しなくとも、少なくとも元彼には絶対に出ないだろう発想だな、と。


『それでも、だからこそ』

《はい、得られればと思います》


『なら、先ずはウチの森ね。全てとは言わないけれど、かなりの種に会える筈よ』


 多様な気候と植生により、最も多様な種が集まっている。

 と、されているからだ、と。


「他にも有るんでしょうか」


『アナタ達の様な種の居る、東側の国、けれど帝国の影響の範囲外なのよ』

《あぁ、成程》


 どうやら、母国はコチラでもガラパゴス化しているらしい。


「コチラの森へ、行っても宜しいのでしょうか」

『勿論、けれど、少しお昼寝しましょう?』

《賛成ー》




 本当に軽くお昼寝をしてから、南西の森へ。


 西から順に、枯れ木だらけの死の森、魔獣の森に聖獣の森。

 で聖域。


『あの向こうに有るのが本拠地、アレは所謂大使館、帰りに移動魔法を使わせて貰うと良いわ』


 向こうって、要するに海の向こうに見える他国なんだけど。

 まだ、ちゃんとした地図を見せて貰えて無いんだよね。


「ありがとうございます」

『じゃあ、頑張って』

《はーい》


 護衛にはカイルさんと、何故かラインハルト殿下。

 大丈夫かな、皇太子様を危ない場所に連れて行って。


《あの、一緒に来ちゃって大丈夫ですか?》

『あぁ、問題無い』

「ですが、身を守る事を優先して下さいね、殿下」


『あぁ、分かった』


「では、宜しくお願いします」


 こう言ってるなら、もう、仕方無いよね。


《よし、行こーう》




 昔々、雪の様に肌が白い娘が産まれました。

 金色の髪に黒い瞳を持つ、大変美しい娘で、父親は大変可愛がりました。


 ですが、父親の再婚相手に妬まれ、15才の若さで王宮へと送られる事に。

 そして美しい娘は直ぐに王に気に入られましたが、相手は父親とほぼ同じ年の男、可哀想に思った王妃が王宮から逃がした。


 ですが父親の再婚相手に雇われた者が、娘を追い掛け。

 廃坑へと逃げ込むと、7人の小人族が現れ、共に暮らす事に。


 何も知らずに育った娘に、小人達は様々な事を教え。

 娘は家事を、小人達は廃坑で採掘を。


 そんなある日の事、落盤事故により廃坑になっていた場所へ王子様が現れ、美しい娘を見て直ぐに求婚しました。


 ですが7人の小人達は、直ぐに娘を譲るワケにはいかない、先ずは婚礼の準備がどれだけなされるのか確認してからだと。

 そう王子に伝え、追い返しました。


 そして娘に再び様々な事を教え込んでいると、生きていると知った後妻が老婆に変装し、娘へ毒リンゴを届けました。

 無知な娘はリンゴを齧り、仮死状態へ。


 そして小人達は、ガラスの棺に娘を入れ、王子を待ちました。


 そんな中、次に来た王子は棺の中の娘に驚きましたが。

 最後にと、口付けを。


 王子には妖精の加護が有り、その口付けが毒を解くと。

 娘は目覚めました。


 そこで再び王宮に戻った娘は、行方不明になっていた王の側室だと直ぐに判明し、王子の妻として迎え入れるべきかの議論になりましたが。

 幸いにも、王のお手付きが無かった為、その事は問題にはなりませんでしたが。


 7人の男と一緒に暮らしていた娘を、王子が妻にすべきか、と。


 そこで王子は言いました、小人族の7人の男だった為、彼女の身は清い筈だと。

 次に娘が言いました、何者かに追い掛けられ、はしたなくも走ってしまった。


 もしかすれば、純血の証を残せないかも知れない、と。


 それでも王子は食い下がり、何とか側室になる事が認められ。

 王族は滅びました。


《ではココで問題だ、何故、王族は滅びた》




 今、こうした問いを出したのは、目の前の真っ黒な大蛇。

 目も鱗も黒曜石の様に艶やかな、この身を簡単に飲み込めるだろう大きさの蛇。


「性病を持っていたのでは」

《ほう、どうしてそう思う》


「小人族は性行為が出来無いんですか?」

《いや》


「なら、性的な事も含め、色々と教えたのでしょう」

《だが仮に、病を持っていたとしよう、どうして移ったのだ》


「帰りの馬車で小人達に教えられた通り、ありとあらゆる手練手管を遣って、骨抜きにしたのでしょう。私が卑しい小人族なら、そうした慰み者にしていたでしょうし、そう面白がって手放すでしょうね」


《だとして、どうして王族が滅ぶ》

「王も手を出したのでしょう、そして他の男も、娘は無知で小人達の言う通りにした。誘われたなら歓迎し、丁重におもてなしをしろ、と。そうして病は広がり、分かった頃にはもう、手の施しようが無かったか。病により気が可笑しくなり、誰かが殺して回ったか、嫉妬か」


《では何故、小人達はそう画策した》

「自分達を苦労させる国の王子が来たのです、復讐して当然かと」


《ふふふ、あぁ、正解だ》

「あ、有るんですね、正解」


《勿論だ、来訪者が広めた問答だからな》


「中々、キレの有る問答を出す方ですね」

《あぁ、私は会った事は無いが、面白い男だったそうだ》


「成程」

《お前を気に入った、私の能力を教えてやろう》


「あ、待って下さい、何故ですか。私には素養があまり」

《器、容量が少なければ、行使出来る事も範囲も何もかもが減ってしまう。半端に行う事は、最早不快でしか無い》


「成程」

《では、教えるとしよう》


 そして教えて頂けた能力は、どれも欲しかったモノばかり。


 あまりにも都合が良過ぎる。

 森に入って秒で出会い、即座に問答へと入ったのだから。


「私が来る事を、既に知ってらっしゃいましたか」

《あぁ、風の精霊や妖精が噂をしていた。強いモノがココへ来るだろう、と》


「あぁ」

《そして死闘の末に、最初にお前に会う事が叶った》


「えっ、怪我とか」

《それに知恵比べもしての事、心配無い》


「あぁ、ありがとうございます」

《いや、問題は対価だろう》


「はい、ですね」

《私を傍らに置き、お前を知る権利を与え、魔力を供給する事》


「魔法の永続的な」

《お前の味を知る事だ》


「味、血ですか?」

《それと体液だな》


「体液」

《若しくは》


「若しくは」


《人型への進化を手伝う事、だな》


「抱かれろ、と」

《1度で構わない、どうせお前を取り合っている者達が居るのだろう、面倒は御免だ》


「あの、体液だけの場合は」

《様々な種類を吟味し、定期的に摂取させて貰う事になるだろうな》


「そう抱かれる程の」

《護衛として必要では無いのなら、それでも構わないが、考える時間はやろう。次のモノへ案内してやる》


「あぁ、お願いします」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ