15 黒の強欲、バートリー・エリザベート13世。
魔法が有ると、お茶会の開催も直ぐに出来ちゃう。
だって移動に時間は掛からないし、それこそ準備も直ぐに出来ちゃう。
うん、魔法って本当便利。
『コチラがスズランの姫と』
《ミモザでーす、宜しくお願いしますね、エリザベート陛下》
『あら、ふふふ、宜しく。さ、どうぞ』
私はバカにされるの慣れてるし、平気だからコッチの役目を勝手に引き受ける事にした。
それに、お互い査定される立場なんだから、どうして私がこうするか位は分かって欲しいよね。
って言うか、本当にどっちか分からないなぁ。
生まれながらの特別って、どうなんだろ。
やっぱり大変なのかな。
うん、座った瞬間、聞いてみよ。
《ぶっちゃけ、大変ですか?》
『あぁ、ソチラでは大変なのかしら?』
《周りに居なかったので分からないですけど、向こうには魔法が無いので、確実に生き辛さは有るかとは思います》
「そうですね、公衆浴場での入浴は男女で分かれますが。戸籍と身体的特徴、どちらを優先させるべきか、議論中ですから」
『それは勿論、身体的特徴では無いの?』
「身体的特徴を変えるのは、とても難しく負担も有るので」
『あぁ』
《ココではどうなんですか?》
『相応の対価を支払えば可能よ、妊娠も可能』
《そうなると、お子は出来るんですか?》
『勿論、少し薬草を用いれば、だからこうして女性的で居られるの』
《となると男性的な方も居たワケですね》
『彼がそうよ』
エリザベート様の傍に居た側近的な人が。
《紆余曲折有りそうですが》
『そうなの』
「何か、陛下としては」
『エリザベートと呼んで?』
「エリザベート様」
『エリザベート』
「エリザベート」
『そう、何かしら?』
「足りないと感じてらっしゃる事は御座いますか」
『ふふふ、やっぱり教育よね』
「様々な来訪者が来ている筈ですが」
『それはそうなのだけれど、それはあくまでも人だけの世界、魔法すら無い世界の者。そうした事に無知な者に、法整備がマトモに出来るかしら』
「そうした愚か者ばかりでしたか」
『ふふふ、いえ、問題は時代が追い付かない事ね。常識を定着させるには相応の時間、そして世代交代が必要となる』
《あぁ、長寿種が居るんですもんね》
『そうして情報の更新が遅れてしまう』
「今まで生きていられたなら、変更する価値を見い出せない」
《変える必要無いじゃん、面倒だ》
『さっさと殺しちゃえば良いのだけれど、それはそれでココの良さなのだからと、止められているの』
価値観の違いエグい。
けど、こうでもしないと価値観や常識の更新って難しい、って事だよね。
「変化には適切な速度も重要ですからね」
『そうそう、ふふふ』
「もうご存知かとは思いますが、手当たり次第に民意を聞き入れ法整備を行い、果ては地獄の様な地域が存在する事になりました。ある種の行き詰まりへと到達し、破滅願望、又は終末論を望む様になった」
《あぁ、知ってるかも、女性受刑者が異常に多い治安の悪い場所?》
「ですね」
『それは、性差別からの事なのかしら』
「幾ばくかは。主な犯罪は違法薬物の売り手、虐待。それらに関しての法律が女性の場合重くされている、自由の国でありながらも、更生より収監。そうした法整備をするのは、殆どが男」
『あぁ、肌の色や血統も関係していそうね』
「はい」
《あぁ、雁字搦めになった糸を解くには手間も時間も掛かるし、その合間に酷い扱いを受ける者は減らないから》
「世界が壊れてしまえば良い」
《成程》
『アナタはそう考えなかったのね』
《それこそ自由ですから》
「不可触民、その言葉は確かに禁じられましたが、未だに存在しています。そう生まれてしまったら教育すら受けられず、国外に出るなど出来るワケも無い、見られる事すら禁じられた最下層。法整備は進みましたが、未だに存在しています、世襲制ですから」
《14億中、1憶だっけ》
「ですね、ウチで1憶と少しの人口です。14人に1人、女性は特に、必ずと言って良い程、酷い扱いを受けている」
《性的暴行を受けたのが悪い、ウチの子を誘惑したのが悪い、所謂名誉殺人が多いんだよね》
「男社会で不都合となれば、子とて容易く殺され、そして幼くして娶られ孕まされ続ける」
『単語だけを禁じても、実態は消えない筈よね?』
「はい」
『けれど私とて、たった1人の息子を悪しき者に誘惑されたら、殺すわ』
「何処までが横暴か、何処までが独裁か、要は母数です」
《あー、確かに。子が8人も居て全員が自分の思った通りの者と結婚しなかったら、殺す、それは流石に欲張りだと思う》
「問題は何を守る為なのか、諸外国との関係性は、そうした者を国外に出した際の問題はどうするのか」
《取り敢えずは情報封殺だよね、虐殺とか独裁国家って、そうして内外の情報を制御してるんだし》
『あぁ、有るのね、ソッチにも』
「コチラでの独裁国家とは、どの様なモノなんでしょうか」
『ふふふ、明るい時間のお茶会には、少し暗い話題だったわね。恋バナしましょう恋バナ、良い方は居た?』
切り替え上手いなぁ、ネネちゃん超困ってる。
「ココでの良い方、とは」
『ふふふ、先ずは見ていて飽きない顔、幾らでも見ていられる顔かどうか』
《ですよね、一生見続けるんだし》
『それから匂い、体臭が臭く感じられたらもう、無理ね』
《お父さんの枕の匂いがダメ派です》
「ですね」
『当たり前よ、血が近いんだもの、本能的に拒絶して当然よ』
《でも例外が有りますよね》
『それこそ、隔世遺伝じゃないかしら』
《あぁ、成程》
『それからやっと、性格、家柄。では、どうして家柄を気にするのか』
「教育水準、外交や交友関係、財産。下手をすれば家族総出で食い荒らされ、果ては没落」
『ココでは更に政治的策略も関わるけれど、本当、それなのよね』
「手腕さえ有れば、政治的な問題は片付けられる筈ですからね」
『それでも離れ離れになるって事は、まぁ、合わなかったって事よね』
陛下は本当、女性にしか見えない。
指先まで女性、でも結婚指輪が見当たらない。
「あの、ご結婚は」
『ふふふ、ナイショ』
これは迂闊だったかも知れない。
そうした内情すら明かさないのが常識なのかどうかを。
《正直、とてもお体に興味が有るんですが》
『あぁ、なら娼館にも少し居るわよ』
「病への対策は」
『あら、酷い情報統制を受けているのね?』
『いや』
「病を探知出来る者を潜伏させている、ですね」
『もう、ふふふ』
「すみません、必ず全てが同じかどうかを、知れては居りませんので」
『そうね、どう配置しどう運営しているか、ね』
《あのー、疑問なんですが、どうして帝国よりコチラの方がそうした事が盛んなのでしょう?》
『地理的要因よね、中央で広まれば容易く国が混乱するもの』
「言い寄られているだけで、良いと思う方は居ません」
『あらあら、ふふふ、なら娼館にご案内すべきかしらね?』
《見るだけとか可能ですか?》
『せめてお喋りはしてあげて?』
《あ、はい》
「でも、お高いのでは」
『あぁ、ウチは殆ど慈善事業なの。営利目的と言うより、治安維持と純然たる慈善活動』
《成程》
「一時的に男になれる方法は」
『まぁ意欲的。永続的であれば対価は大きいわ、そしてそうした変更は、連れ合いの意思次第』
確か、どんな夢魔でも性別を変えられるらしいけど。
「純粋な夢魔は稀有だそうですが」
『他にも居るわ、蛇の魔獣の中には連れ合いの性別を変えたり、時に害したモノの性別を変える事も有る』
魔獣辞典的なモノの半分も読めて無くて、調べが甘かった。
当たりを付けて調べるべきだったかも。
「すみません、調べが浅く」
『良いのよ、量が膨大だもの。それと海のモノも、対価は性行為が多いそうよ』
「魚、人魚?」
『そうね、それか、私からの加護か』
『それに魔道具も有るが』
《有るんだ、凄い》
『けれど、使える場所は限られてしまうわよ?』
「あぁ、変装にもなりますしね」
『私の加護以外は、全て解けてしまうわ』
《永続的にとなると、他にも方法が?》
『そうね、ヘルマプロディートスの泉に浸かれば、永続的に両性具有となれる』
「えっ」
『ふふ、残念だけれど、生粋の両性具有で無ければ当主にはなれないの。しかも泉の効果は成人を超えない限り、発揮される事は無い』
《あぁ、でもそうなると、戻りたがる方も居そう》
『どちらかの生殖器を切り取り捧げ、治療すれば選べるわ。けれど、もう片方の性に変える事も、両性具有になる事も叶わない』
「何故、皆が両性具有で産まれないのでしょう」
『まだ、時期では無いから、かしらね』
「成程」
《あぁ、選べるなりの悩みが有るからか》
「しかも悩みの種類が増える」
『ふふふ、そうね、それに選ぶのって本当に大変だもの』
「一生掛かりそうです」
『あら勿体無いわ、是非協力させて頂戴?』
《ですって》
『少し、話し合いをさせて下さい』
『勿論、大切な事だものね、ふふふ』
殿下、気持ちは分かりますけど、あからさまに落ち込まないで下さい。




