13 パーティー。
如何にもな会場、如何にもなドレスを纏った方々。
その中に真っ黒な瞳に真っ黒なストレートロングヘアーをたなびかせ、この国の王子の色とされる金色と薄紫色が添えられた白のドレスを着用し。
装飾品には、同じく金色の金具に彩られた薄紫の石と、クリアクリスタルを身に付けた2号ちゃんが注目を浴びている中。
皇帝こと朕にご挨拶し、会場の者に挨拶して周らされている。
更には敢えてカイル氏にエスコートを変更させたり、さも偶然を装い2号ちゃんを1人にしたり、敢えてルーイ氏に助けさせたり。
まさに舞台上で目まぐるしく巻き起こる騒動を、ユノちゃんと護衛と共に、覗き穴から観察していたけれど。
やはり治安が良く理路整然と統率されているせいか、特に問題は起きず。
いや、レオンハルト殿下が焦っていた場面は有る。
バートリー家の女性に腕を絡ませられ、コチラを見て本気で焦っていた。
けれどバートリー家もまた、7枚の手札の1つだ、と。
カイル氏がひっそりと教えて下さり、何か納得。
ただ、途中であまりにも2号ちゃんが嬉しそうで、ちょっと引いた。
レオンハルト様の婚約者なんですか、と、どストレートに聞かれ。
ちょっと驚いてから、直ぐ嬉しそうに、そうなれたらと思います。
とか。
「何か、殿下から出ちゃってるんですかね」
《あー、成程、魅惑のフェロモンがジャバジャバと》
「表現が体液」
《あ、ジャブジャブ?》
「んー」
《ドバドバ》
「こうなるとジャバ」
《ネネ、ユノ、準備は良い?》
《ばっちこい》
「ですな」
殿下の警護に付いていたルーイ氏が、殿下と2号が下がった直後、私達を両手にエスコートするワケですが。
一部の者以外、事情は伝わっていないそうで。
はい、どよめき。
《このまま正面まで歩くね》
「近い、調子に乗るなら破棄で」
《正々堂々の方がネネちゃんには効果的だよー》
「こらユノちゃん、クサヤ食べさせちゃうぞ」
《嫌いじゃないんだよねぇー》
この間、ずっと皇族スマイル風の穏やかな笑顔を張り付けている。
と言うか、今回だけ、こうする作戦となった。
しっかりと上位者と思わせたいなら、寧ろ上を見倣うべきでは、となった。
キョロキョロするのは不作法、だからこそ、成果を知れるのは後々。
確かに緊張する、皇帝オブ朕とか思わないとマジでやってられません。
《僕に合わせて》
《あいよー》
「おう」
そしてルーイに倣ってしゃがんで。
《陛下、来訪者様をご案内致しました》
『ご苦労であった、楽になさい』
で、ルーイ氏に手を差し伸べられた順で立ち上がり、手は右手を前に揃え。
あ、朕。
お髭の朕だわ、殿下と似てるか、分からない。
《コチラがスズランの姫、コチラがミモザの姫です》
あぁ、それで好きな花を聞いたのね、成程。
『名に相応しく清楚可憐と言えよう、どうか楽しんでくれ』
ユノちゃんと目を合わせ、同時にお辞儀し。
お返事。
「《はい》」
よし、今日の予定はほぼ終了。
『音楽を』
朕が手を挙げると同時に、音楽が再開された。
聞き慣れない音楽、若干のケルト調では有るけれども、耳触りは良い。
《はい、お手をどうぞ》
《まさに両手に花ですねぇ》
「さ、いざ食事へ」
ネネちゃん、本当に物怖じせすパクパク食べてる。
まぁ、私もなんだけどね。
近寄らせない、話し掛けさせないには食べるのが1番だって、ネネちゃんとルーイさんの言う通り。
近寄りたいのに近寄れず、めっちゃコッチをチラチラしてる人が多数。
《旨っ》
「確かにパイ旨いけど、どうよ、良さげな殿方おりますか」
《顔だけで全てが見抜けたらなぁ》
「本当、それ」
力と魂籠ってる。
《ネネちゃんは?》
「来歴が、ゲームの様に、浮かんでいろよ」
《それ本当、それマジ本当、本当それ》
「でも自分のを見られるのは嫌」
《深淵を覗くと、深淵が見えるの》
「ふっ、深淵さんコッチ見ないのね」
《優しいから見てって言わないと見ないタイプ》
「若しくは恥ずかしがり屋さんか」
《それも有る……コレ旨っ》
「どれどれ」
この会話は日本語で敢えて喋ってる。
有るよね、他言語で話されてる時、絡み辛いヤツ。
本当、見事に誰も話し掛けられないの。
うん、コレも一種の自衛だよね、だってコレ強制参加なんだもん。
仲良くなるにしても、結局は皇族の許可ありきだし、コレはお披露目会だし。
《ネネ、おいで》
「イヤ」
初めてかも、子供っぽく頭をイヤイヤ振って拒否。
《はいはい、後で食べましょうね》
ルーイさんが呼んだ時って、会わせたい相手に会わせられるタイミングになった場合か、緊急事態のみなんだけど。
にしても貴族って、実際どうなんだろ。
『どうも、お見知りおきを』
金色の髪色で目は水色の、正にイケメン。
膝を折って最上位の礼をしてくれた、礼の種類からして文官かな。
さぁ、どう出るネネちゃん。
「お料理、食べましたか?」
『はい』
良い笑顔を引き出した、ナイスネネちゃん。
「ではオススメを教えて下さい」
『はい、喜んで』
文官貴族が腕を差し出すと、ネネちゃんは直ぐに手を添えた。
そして張り付けた笑顔のままのルーイさんの腕に、私も手を添えて歩くワケですが。
うん、接待術って、相手に好きな人が居ると却って悪感情しか引き出さないんだよね。
だから本当、全然効かないと言うか、寧ろ余計に好意を自覚させただけなんだけど。
確かに当て馬って必要なんだな、って思った。
本当の好意なのか、何処が好きなのかが具体的になる。
そして相対的に好きなのか、絶対的に好きなのか。
羨ましいと思う。
競合相手が居ても折れない程、好きになった事が無いし。
「あ、もしかしてパイですか?」
『はい、お口に合いましたか?』
「はい、お肉たっぷりなのに臭みが無くて、1日1回は食べたいですね」
『分かります』
穏やか、和やか。
ネネちゃんこなれてるから、ちょっと別世界の人間に見えるんだけど。
きっと、家族のお陰で少し慣れてるだけだ、とか言うんだろうなぁ。
「ミモザもパイ好きよね」
《はい、美味しく頂きました》
この年であだ名で呼び合うって、ちょっとこそばゆい。
「はぁ、うん、こんなんで中身が分かりますかよ」
《そうだそうだー》
ネネとユノは、2号とは違って過度に表情を出さなかった。
常に穏やかな笑顔で、慌てず急がず、本当に下手な貴族よりも上手に過ごした。
《ココからお茶会の招待状が届いて、返事を返して出席、今度はコチラから招く》
『その繰り返しだ』
「うん、ウチ中流」
《やっぱ上流は違うねぇ》
『ネネ、ご褒美をくれないか』
《あ、何それ》
「検討しますので内容をご提示下さい」
《後で精査しないとねぇ、それに先ずは彼女への評価、だよね》
『周囲としては飼い殺しか、あまりの幼さに帰還させるべきでは、となっている』
「無害幼い系は帰還、妥当かと」
《けれど、実年齢は僕より上だろうし、未だに本名を言わないし》
《でも干支とかは直ぐに言えてるんだよねぇ》
「それだけ慣れてるんでしょうね」
《嘘に、ね。警戒度はどうなんです?》
《このままの予定だね》
『ただ、このままいけば』
「便宜上、婚約者が出来ますね、殿下」
『要らないんだが』
「5年も駄々を捏ねるから」
『後悔しか無い』
「君等の査定結果は?」
《悪しき者の気配しか無いね》
『だが単に幼い嘘に固執しているだけの可能性も有る、即殺処分とまでは言えない』
《んー、となると口説くかハグか、どっちかだなぁ》
「ですね、しかも短時間」
《両方なら、ハグ3分、口説くの5分。ハグだけなら5分、口説くだけなら10分》
「8分で」
《では8分で》
『キスは』
「ねぇわ」
《僕も無いからダメ》
《正に取り合い奪い合い》
「“喜べねぇですわ”」
《“ですわぁ”》
『2人が、羨ましい』
《ね、知らない言語で話されると凄く悔しい》
「コッチの言葉に訳すの、ほぼ不可能」
《ぽくしても、何かちょっと、少し違くなるんだよねぇ》
「どうします、蓄えに回して更に時間延長させるか」
《今回で消費するか》
『上は望めないんだろうか』
「成果による」
《ネネちゃん、そこは無理しないで良いんだよ?》
「いや寧ろ、暴くのに私を使えないだろうか」
《ネネちゃん》
『いや、ネネに危害が及ぶ様な事はしたくない』
《うん》
「そこは紳士なのに」
《キスはなぁ、我々にはハードルが高いんですよ》
「うん、はい」
『暫く、保留で』
「あ、ルーイ、焦って成果を出そうとしたり濫りに2号と接触したら絶縁ね」
《流石ネネちゃん、うんうん。ネネちゃんが好きなら、ネネちゃんが1番喜ぶ状態で成果を挙げるべきだよね》
「うん、はい」
《分かった》
《じゃあ、解散で良いですかね?》
『あぁ』
《うん》
「はい、じゃあ解散」
この後、レオンハルトには詳しく聞かないとね。
《何?あの約束》
『愚痴をこぼしたら、提案されたんだ』
《だからってキスは無いでしょ?仮にも僕の婚約者だよ?それに君は》
『いずれ、廃嫡されるつもりだ』
《そんなの、ネネが絶対に嫌がるよ?》
『問題無く穏便になら、と』
《国や親への今までの恩はどうするの、それこそ手間暇かけられて、お金だって掛けられているのに》
『それも』
《だとしても、そこまでされたら逃げられない、ネネには重荷でしか無くなるじゃない》
『説得する』
《我儘?反抗期?それ本当にネネの為になる?》
「本当それな、君ら裏で揉めるの止めてくれないかな」
《案の定、だよねぇ》
『ネネ』
「親だけじゃなく周りの気持ちも加味して、良く考えて行動して下さい、万が一にも逆恨みされるのは迷惑です。それと重荷に関しては本当そう、重荷と言うか枷にすらなる様な事は本気で迷惑なので、止めろ」
《じゃ、お疲れ様でしたー》
《ほら、もう少し冷静になってよね》
『すまなかった』
離れれば離れる程、他の女と居れば居る程、ネネが良いとしか思えない。
例えユノに寄り添われても、ユノの偽者に媚びられても、どうしてもネネの事を考えてしまう。
手放したくない、離れたくない。
《絶妙に本気だよねぇ》
「もう、ココまで来ると問題さえ無ければ良いや、とか思ってしまう自分が居ます」
《それ優しいからだと思う、相手の辛さに共感して、流されそうになってるだけじゃない?》
「仰る通り」
《相手の辛さは相手のモノ、妥協しても相手の為にはならない》
「はぁ、ご尤も」
《でも分かるよ、この年で真面目に好意を受け取ると、難しい事を考えちゃうよね》
まさか、マイナスの意味でどちらも選べない、とか有るんだ実際。
そう思った1日でした。
どっちも良い、じゃなくて、どっちも微妙。
カイル氏は除外してるけど、他にもこうして大物に好意を示されたら。
多分、いや確実に逃げ出しますね、面倒だから逃げ出して無かった事にする。
事勿れ主義結構。
自分、大事に、1番が1番。
「こう、湯舟が無かったら、即座に逃げ出してたかも」
《確かに、入浴って強い》




