12 ドМ。
《あー、分かるー、確かに殿下ドМかも》
「あぁ、分かっちゃいますか。私、そうした性癖とか無いんで超困るんですが」
《いや私も良く分からないなと思うけど、お客さんにそうしたお店に連れてって貰って、納得はしてるんだよね》
「あぁ、あの有名なSMバーとかですかね」
《そうそう、そう言う所、合致したら離れ難いんだってね》
「全然、惜しくないんですけど」
《だよねぇ、リスク多過ぎだしねぇ》
「上流ならまだしも、中流の娘が皇太子妃とか、マジで有り得ねぇですわよ」
《ネネちゃんで中流なら上流って何、って感じなんだけど》
「それこそ貴族っぽそうな、決まった交友関係にある程度は決められたレール、やんわりとした政略結婚」
《あー、別世界》
「ザ・格差社会、と言っても諸外国よりは遥かにマシなんですけどね」
《だよね、殆どは制限無しで学校通えるんだし》
「リアルカーストはエグ過ぎで、アレはアレで別世界ですからね」
《本当、アレを見て何が分かるって言うんだろ》
「ココまでクソヤバいカーストの無い国に生まれて、良かった?」
《あぁ、それだと安直過ぎて言うのが恥ずかしくて、言葉がナックルカーブした?》
「まさに消える魔球」
《ピッチャー、振りかぶって、投げましたー》
「時速100キロのボールが、消えた、そして異世界に」
《実況ヤバい、異世界見えちゃってる》
「片方の眼鏡が異世界に繋がってて、デュアルディスプレイ実況」
《ウチらに見えて無いー》
「今ならコチラ、お買い得な、そう言えば眼鏡を見ない」
《確かに、時代背景的に無いのかな?》
「モノクルなら有りそうな、いや、オペラグラスは有った」
《えっ、まさかコンタクト?》
「凄い超越したけど、有りそう」
《あー、でも、仕事でだけ眼鏡するとか》
「あぁ、妥当な案」
《視力悪い人が来たら大変そう》
「調子が良いと1.5は出る」
《分かる、出る出る》
「目指せサバンナで視力検査」
《目指せ2.5》
「透視出来そう」
《実は、胸のサイズを当てられる》
「アレ当てられないのは男だけでしょうよ」
《あの子はCだよね》
「でしょうね」
《いやん》
「貴様Dだな」
《ネネちゃんはまだ成長期だもんね?》
「そうなの、大器晩成型、はぁ」
《こう、魔法で》
「それは許されるんだろうか、ガラスの靴的に考えて」
《確かに、魔法が解けてBに》
「Aよりはマシ」
《AAとか居たけど人気な子だったよ?》
「バイっぽい人とか、ストライクゾーン広過ぎる人はちょっと、無理かな」
《あー、成程》
「いや、分からないけどね」
《いや、うん、ネネちゃんウチの店で働けば良かったのに》
「酒、激弱」
《おぅ、神は二物を与えず》
「イチモツ位は欲しかった」
《ふっ、ふふふ》
「出来れば、大きな」
《イチモツを》
こうして、ユノちゃんと他愛の無い会話をしている間に。
3人目の来訪者の粗が、次々に現れていたらしい。
《はぁ》
「ルーイ様、溜息だけならお帰り下さい」
《聞いてくれる?》
「傾聴だけなら」
《男が苦手らしいのに、ドキッとしたような反応をされたんだけど?》
「あぁ、無い無い、フラれたばかりの時は寧ろ憎しみすら湧いてました」
《だよね、なのにさ。流石にお世辞だろうと分かる事でも平気で受け入れるし、謙遜すらしないんだけど》
「素直な私、素直でしょ」
《それに、ネネは僕の婚約者だから良いけど》
「あ、そう言えばそうだった、破棄しときますか」
《えー》
「冗談です、それで」
《2人きりになろうとされちゃって》
「常識が違うとまでは頭が回らなかった、知らなかった。で通せそうだと思っているのでは」
《何か、本当、レオンハルトが可哀想》
「その分、手間と金を掛けられてるのでしょう。ある意味で親孝行と国へ貢献出来ている、と思うしかないのでは」
《ネネは避けてたよね、2人だけになるの》
「そりゃ、相手の為にも、自分の為にも。働いてたり、そう働いてる者が周りに居れば、当たり前だと思いますが」
《なのにごめんね、無駄に警戒させただけだった》
「殿下が婚約者を探さなかったのが悪い」
《あ、聞いたんだね》
「5年も何してたんですかね、あの人」
《半年は、本当に落ち込んでて》
「ダッサ」
《それから3年は辺境を回って、まぁ、そこで相手を見繕えば良かったんだろうけど》
「仕事に逃げ続けた」
《しがらみが凄いからね》
「で、しがらみの無い私に逃げた。上手くいかなくても異国の者だから仕方が無い、で済む」
《あぁ、まぁ、それは無いと言えば嘘になるだろうけど》
「なら殿下とくっ付けば良いですかね?」
あ、目をウルウルさせて。
何でよ、どうして心を開くのさ。
《それは》
「どうして私はアナタにまで懐かれてるんでしょうかね?全く理由が分からない」
《ネネは賢いし、これだけ跳ね除けるって事は、それだけ懐に入れたら大事にしてくれそうだし》
「似たのにユノが居るでしょう」
《ユノは、悪い言い方だけど、僕らじゃないと思うんだよね。自分から好きにならないと、どんなに口説いても無理な感じがする》
「で、私ならイケそうですか」
《まぁ、ユノよりはイケそうだけど、そこが理由じゃないよ》
「ほう」
《もう今は比べる事になるから嫌なん、コレもしかして、敢えて今まで聞かなかった?》
「かも知れませんね」
《そこ、そう言う所が本当に良い》
「そこらには居ない面白い女、ですか、不本意」
《いや、化けの皮を剝がせば、こうした子も居るとは思うよ。けれど効率とかも考えて、ネネは直ぐに本性を見せてくれたし、最低限人としての扱いはしてくれるじゃない?》
「良心は有りますから」
《何か、ユノ2号って、そうした所が欠けているし。ユノはユノで博愛主義って言うか、誰にでもあんな感じだし、そこが僕には魅力的には感じないんだよね》
「腹黒さ的に寧ろ2号と合いそうですが」
《それこそ僕にだって良心は有るよ。かと言って、2号は本当に良心が全く無い相手と添い遂げられそうも無いから、どうしても単なる馬鹿に見えちゃうんだよね》
「おいおい、凄い事を言いますね」
《ネネはそうした相手とも一緒に居られそうだよね、良い意味で》
「買い被りが凄い」
《何でそんなに自己評価が低いの?》
「殿下ならご存知かも知れませんね」
《婚約者は僕だよ?》
「仮初めのな」
《何で?》
「家族が凄いからです。自己評価が低い様に見えますが、ユノとしても正当だとの理解を得てます。君がダメなのは、非童貞だから」
《ネネだって非処女じゃん》
「だからこそ、比べられたくないワケですよ、乳も無いし」
《何も無くはないじゃない?》
「お前、何で知ってますかね」
《それはほら、ドレスの仕立ての下見、とか有るし》
「浮気を心配しなきゃならない相手はちょっと」
《浮気はさせたけど、した事は無いし》
「特定の相手が居ないなら浮気にはならないでしょうね」
《もうネネだけだよ?》
「そら仮にも婚約者ですからね、控えて当たり。まぁ、バレずに病気も貰わないならお好きにどうぞ」
《本当に良いの?》
「触るだけなら流石に移らないでしょうし」
《じゃあしてよ、婚約者なんだし》
「コレが、若さか」
《レオンハルトが潔癖過ぎ、って言うか、正しいとは思うけど。アレはアレで、稀だからね》
「おませさん」
《婚約者なのにハグしないとか有り得ない》
「そら仮初めですし、そうムキになるなら、抱かせるけど結婚しないが」
《けど、我慢しても結婚してくれるワケじゃなさそうだよね》
「君か殿下か、それこそカイル様しか居ないのに、そう選ばせないのが君の愛なんですか」
《それは、時と事情によるけど》
「君より良い男が居ないんですか」
《確かに、レオンハルトは童貞だけど》
「ふっ、そこ、良い男の基準に入れますか」
《だってネネが童貞が良いって言うから》
「確かに、成程、調教と言う体では確かに殿下とは相性が良いかも知れない」
《今までの、忘れる様にするから》
「それで腰の振り方がこなれてたら、無言でベッドを去りますが」
《記憶を消したら結婚してくれる?》
「執着の仕方が怖いわ」
《そう?消して問題無いし、消せるし》
「そっか、ココ異世界だったわ」
《消せば結婚してくれる?》
「結婚した場合の主な予定、スケジュールの提出をお願いします。あまり当たり前を省かず、殿下の場合のも出して下さい」
《比較用にね》
「はいはい、お好きにお考え下さい。ルーイ様お帰りでーす」
《ハグしてくれたら素直に帰る》
「洗面所に引き籠りますが」
《分かった、またね》
「はい、ではまた、ご機嫌よう」
うん、ネネちゃんモテモテ。
《ふふふ》
「何ですかね、その満足気な、ふふふは」
《いやー、本当、お酒が飲めてたら絶対にウチでトップ取れたね》
「それ、失礼を承知で聞きますけど、自慢になるんですかね」
《あー、まぁ、そこまで自慢出来る事でも無いけど。少なくともネネちゃんは魅力が有るって事》
「あぁ、最下位っぽいとか言われたら確かに嫌ですな、ユノちゃんはトップっぽい」
《でしょー、けど実際にね、コレが自慢になる場なんてそう無いし。資格いっぱい持ってた方が自慢になるし、そうしたキャバクラも有るし》
「あ、学歴キャバクラとかね。本当、発案者が凄過ぎる、そんな案が1つでも出る人間に生まれたかった」
《いや来訪者用に訓練するって結構な案だよ?》
「いや道理的には妥当かと、結局は対策案で。もっと、こう、画期的な何かが出せないものかと」
《向上心有るじゃーん》
「そりゃ、もう少し貢献した方が安定するかな、と」
《結婚しちゃえば良いじゃん》
「それなー、天涯孤独で孤立無援には後ろ盾が必須」
《さして法整備とか文明が無いなら、平気そうだけど》
「ガッツリ有るからねぇ」
明日は立食会なので、衣装の最終調整中。
廻りにも人がいるし、念の為に私達の会話は日本語。
英語だとネネちゃんは少し堅くなるんだけど、日本語だと頑張って砕けようとしてくれたり、普通に素っぽいのも出る。
やっぱり、言葉の壁って有るよね。
って言うか日本語の表現豊か過ぎ、一人称何個有るんだって言う。
《やっぱり、皇帝となると、朕なのかなぁ》
「ふひっ」
《朕としてはー、やっぱり平和が1番じゃん?》
「ふっ、何故ほんのりギャルが」
《わらわとギャル風の相性良くない?》
「わらわとしてはー、やっぱり平和が1番じゃろ?」
《あー、やっぱじゃろっちゃうよねー》
「語尾の豊富さよ、どう訳せば良いか分からんもの」
《アレ、カリフォルニア訛的なヤツ》
「語尾を伸ばすんだか、遅く言うんだか」
《そうそう、でもなぁ、語尾だからなぁ》
「逮捕されちゃうゾ☆」
《知ってるねぇネネちゃん》
「ユノちゃんも知ってるじゃない」
《コレはもう、お店でですよ、本を貸してくれる人も居たから》
「あぁ、楽しそう」
《楽しかったぁ、うん、本当に良いお見せだった。わらわとしてはネネちゃん居て欲しかったな》
「こんだけ豊富な一人称の訳し方、流石に分からないよ」
《皇帝のIは朕ね》
あ、ネネちゃん凄い顔した。
「絶対に笑っちゃいけない場で笑いそう」
《うん、緊張しないお呪い》
「効き過ぎて首が飛びそうなんですけど」
《赤の女王でもあるまいに?》
「アリスの世界も相当のぶっ飛び具合なのよねぇ」
《ココそんな感じだなーって感じ》
「あぁ、確かに、平気で記憶消す案出して来るもんね」
《愛だよね、愛》
「ムキになってるだけにしか思えませーん」
《それなー、もうちょっと大人になって欲しいよねぇ》
「はぁ、明日か」
《楽しもう、ダメなら逃げ出せば良いんだし》
「確かに」
問題の何割かって、逃げ出せるかどうか、逃げ出せても生きられるかどうかだと思う。
大概は逃げ出せるし、大概は逃げ出しても生きられるんだけど、そこしか知らないと死を選んじゃうんだよね。
だからこそ、見えてる筈の非常口を敢えて示すのって、大事だと思う。




