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第8話 二人のヴァルゴ

なろう初投稿作品です。

昨日第7話で初めて評価をいただきました!滅茶苦茶嬉しいです!!

拙い文章ではありますが完結まで楽しく読んでいただけるよう鋭意努力いたしますので

よろしくお願い致します。

この名前も聞き覚えの無い小さな村の酒場で出会った

全身に分厚い鋼鉄製の鎧を身にまとった男は

バルゴ=シルヴァステインと名乗った。

なんでも、地方の領主の三男で一応は貴族の端くれらしい。


「そんな奴が何で冒険者を?」

「我がシルヴァステイン家は代々聖騎士の家系でね、

 兄二人は立派な聖戦士と成るべく育てられてた。

だが……俺は違ったんだ」

「どうして?」

「兄貴たちに比べて俺は身体が小さかったし、女の兄弟は居なかったからな。

 兄貴たちは聖騎士として活躍して格の高い他家へ婿に入らせる。

 俺は家に残って領地経営、父はそういうつもりで居たらしい。」

「なるほど、それに反発して家を出たってわけか。」


確かに他の全身鎧を着た聖戦士の冒険者は筋肉隆々の中年が多い中

彼は弓師や魔術師でもおかしくない様な細い体つきをしている。

だがそれを日常的に身に付けながらも重そうにしていない所を見ると

体格の不利を覆すべく努力しているであろう事がうかがえる。


「ああ、だが俺は聖騎士の道をあきらめたわけじゃない!

 冒険者として名を馳せていつか王国の方から『聖騎士になってくれ』

 って頼み込まれるぐらいになってやるさ!」

「ふーん、たいした自信だな。」

「ああ、口先だけで言ってるわけじゃないぞ!!

 嘘だと思うんなら表で試してみるか!?」


ガチャリ、と音を立てて彼が椅子から立ち上がる。

オレの方も面白そうだと思っていたので彼の提案に乗ってみた。

たまたま同じ村の酒場で居合わせた、同い年でバルゴとヴァルゴ(同じ名前)

しかもオレは攻撃に特化した剣を、奴は守りに特化した剣を使う。


昔何処だかの国に

「最強の盾と最強の鉾を合わせたらどちらが強いか?」

なんておとぎ話があったが、まさにそれと同じだ!

そう思えばこの提案がそそらないワケがない!!

ま、おとぎ話の結末は忘れたが。


そうして剣を交えて今が大体一時間が経過したところ。


もう目の前の男が口先だけでない事はとっくに証明されたのだが

だからと言って『どちらの剣が優れているか?』

って問いの答えはまだ出ていない。

それが出ていない以上は闘いを終わらすわけにはいかない。


オレもこう見えても師匠の下を離れて2年、一度も倒せてない敵は居ない。

相手が頑強な山賊の頭領であっても、熟練の冒険者が苦戦する魔物であってもだ。

その威信にかけて負けるわけにはいかない。


「今のは本当に危なかったな。反応するのがギリギリだった。」

「そうか、なら次は間違いなく当てる!!」


呼吸を整え、姿勢を低くして再度剣を構えなおす。

だがオレの意気込みを知ってか知らずか、

奴は剣と盾を構えた腕を下ろし、構えをあっさりと解いた。


「……何のつもりだ?」

「もうお前の力は存分に思い知ったよ。俺の負けで良い。

 ……もう目的は果たしたからな」


奴があっさりと負けを宣言すると、遠巻きに拍手が起こった。

気が付くと俺たちの戦いを見物していたと思われる村人や

居合わせた冒険者は結構な人数が居た。

皆静かに見守ってくれていたのだろう。

それとも戦いに集中しすぎてオレが気付いていないだけだったか。


「お前さん達、若いのになかなかやるなぁ!!

 どうだい! 俺達のパーティーに入らないか?」


熟練冒険者という雰囲気の中年の男が奴に話しかける。

それを見て、奴は自分の実力を周りに誇示するためにオレを使ったのだと悟った。

防御的な役割が中心の聖戦士では魔術師が魔法を試し打ちするように

実力を周りに知らしめる術はない。まして奴は屈強とは言えない見た目もある。

だからこそ、こうして同じくらいの強さの者をつかまえて実戦を見せる事で

自分に実力がある事を喧伝したかったのだろう。

……が、しかし。


「すまないがもう先約があってパーティーには入れないんだ。

 ……俺はこの男と二人でパーティーを組むからな。」


奴はオレに事前に何の相談も決め事もしていないのに

熟練っぽい冒険者にオレの方を指差しながらそう答えた。


「……どういう事だ?」

「今説明したとおりだよ! 俺とお前、2人でパーティーを組むのさ。

 俺が敵の攻撃を全部引き付ける! お前がその隙をついて攻撃する!!

 俺の鉄壁の守りとお前のその疾風みたいな速さの剣が合わされば

 それこそどんな数の多い魔物だろうが野党団だろうが大型魔獣だろうが

 2人だけでも負ける気はしない!!」

「たいした自信だな。」

「これでも家を出てから2年間、色んな奴とパーティーを組んできた。

 熟練冒険者なのに大した実力もない奴とも組んだこともあるし

 今じゃ有名冒険者になったヤツもいる。その中でもお前は一番だ!

 お前みたいなのを探してたんだ!! 勝ち上がりたければ俺と組め!!」

「他のメンバーはどうする?」

「俺とお前だけで充分だ!余計なヤツは要らない!!

 たった二人でベテラン大所帯パーティーを超える活躍をしたって方が

 箔が付くし報酬の山分けだって増える。その方が良いだろ?」


会話を立ち聞きしていた冒険者はやれやれという顔をしながら立ち去る。

実力はある程度でもまだ年齢的に冒険者としての経験は足りなそうな若者が

たった二人だけで自分たち熟練冒険者に並ぼうと考える。

誰がどう聞いても自信過剰な若者の無謀な考え方だと思うのも無理もない。

オレも話の突拍子の無さに本気かどうか疑問に思っていたが

奴の話す表情は真剣そのものだった。


「さっき『金が必要だ』って酒場で話してただろう?

 お前は金が要る、俺は冒険者としての名声が要る。

 それならお互いを利用しあって必要なものだけを取りに行った方が

 手っ取り早い!! そうは思わないか?」


握手を求めながらこちらを見る顔は自信に満ち溢れている。

自分には間違いなく勝算がある、とでも言いたそうな顔だ。

その表情と意志の強そうな目に先程までの戦いで得た感触を合わせると

コイツの考えに乗るのも良い作戦なんじゃないか、という気がしてきた。


「……確かにそうだな。よろしく頼む。だが……」


握手を求めてきた手を握り返すとオレからは一つだけ、提案を加える。


「バルゴとヴァルゴじゃ紛らわしいだろ?

 今日から俺はシャドウと名乗らせてもらう。」


荷物に括り付けてある、師匠から譲り受けた漆黒の兜を指差して

オレはそう答えた。



____________________________


ドォォォォォォォォォォォン!!!という大きな音と

大地の揺れる感覚と共に俺は目を覚ました。

どうやら昔を思い出している間に少し寝てしまったらしい。

最近肺が痛んでよく眠れない日が続いていたのと

昨日は荷造りで一睡もせずにいたのが響いているのか。


今日はもう少しだけ眠るとするかと

飯と酒の会計を済ませ、寝室のある二階への階段を上がろうとしたが

その時飛び込んできた男の放った言葉は俺の眠気をすっかり奪ってしまった。


「マスター!!大変な事が起こってる!!

 東門に攻めてきた魔物のせいで蒼龍聖騎士団が壊滅したらしい!!

 魔物は何とか追い払われたらしいが城門もかなり崩壊してるし

 あっちはすげぇ大混乱だって話だ!!!」


反射的に俺は登りかけていた階段を駆け下り

宿屋の外へと走り出していた。

初投稿作品としての短編になります。

書き方など誤記がありましたら教えていただけると嬉しいです。

また応援や感想などいただけましたらとても励みになります。

どうぞよろしくお願い致します。

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